【第87.5話】王燐とゴクテン
こんにちは、ノウミです。
たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。
これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。
皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、
一層精進してまいります。
どうぞ、これからもご期待ください。
何故だ、何故こんな事にならないといけない。順調に進んでいたはずだ、光の力も扱えるようになり、これからだったはずだ。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。ラザールが出現させていた赤黒い腕が俺の胸を貫いている。俺を殺すために、俺だけを共にここまで攻めてきたのか。
あいつが地面に潜って逃げやがった、俺だけをこの場に置いて、心臓を抜き去ってどこかへ逃げた。
こんな所で、終わりなのかよ。
気がつけば炎に包まれていた、熱さは感じない、体が燃えている気配もない。このまま燃やし尽くされて俺は死んでいくのだろうか。これからだったのに……。
次に意識が戻った時には、目の前にあの三人が苦しそうにしゃがみ込んでいた。俺は何が起こったのか理解ができなかった、分かるのは体の内側から燃えるような痛みと熱を感じている事だけだった。
「ぐぁあっあああっ、ぐっぐっぐぁっ」
口から白い炎が吹き出しているのがわかった、俺の体に一体何が起こった、視界も光が強いのか白くぼやけているようでハッキリと見えなくなる。
(おいおい、俺から主導権を奪うつもりか?)
「おゆねちろえしまのねつりぬめねちふ!」
(約束と違うじゃねぇかよ、せっかく俺もこっちにきて暴れれるかと思ったのによ、それに光の力だっけ?よく馴染んで使いやすいから楽しみにしてたのによ…さっさと明け渡せよ、この体をよ)
「だぁぁっ!!!ふざけんなぁぁぁぁあっ!」
先ほどから聞きなれない声が俺の中から話しかけてくる、一体誰なんだ。俺の体を奪って何かしようとしているのは分かるが、そんな勝手はさせねぇぞ。
(ちっ、心臓抜き取られてやがるのにここまで意識が残っているとは、予想外だなこりゃ。)
「なやたればのつ うるせぇっ! なまるに」
気を抜けば一気に意識が刈り取られそうになる、体の中が熱いとの激しい痛みが治ることはない。これのせいで意識を保つのもやっとのところだ、まだ死んでないのであればラザールに復讐できるかもしれない、こんな訳のわからない奴に奪われてたまるか。
(おいおいおい、まじかよこいつ)
「くそがぁぁっ!!!あぁぁぁっああっ!!」
俺は口から噴き出ていた白い炎を地面に向かって一気に吐き出す、それにより跳ね返った炎と粉塵によって身をくらまし、取り敢えずはこの場から逃げる為に。
吐き出した炎の勢いと、地面を強く蹴り上げて全速力でその場から逃げ出す。
「ぐぞぉ゛っ、ぐぞぉ゛っ、ぐぞぉ゛っ」
(おいおいどこ行くんだよ、敵はあっちだろ)
「う゛る゛ぜぇ゛、だま゛っでろ゛」
(ちっ、完全に主導権奪い返されたな…つまんねぇ)
「ばぁ゛…ばぁ゛…ばぁ゛………」
森の中を、方向も行く先も分からずにひた走っていく。ただ落ち着ける場所を探してあの場にいては、この中の奴に意識を奪われないように堪えながら、全員と戦うことは出来ない。
しばらく走っていると、大きな湖のそばで意識が途切れたのか、その場で倒れ込んでしまった。
焦って意識が戻った時には、体はまだ奪われていなかった周囲を確認すると、意識が落ちる前に見た湖が目の前に広がっていた。体を確認するが、白い炎は出ていなかった。
「俺は…生きてる?」
(俺のおかげでな、やっと起きやがったな)
「お前っ、何者だ!?」
(あぁ?聞いてねぇのかよ…俺は【ゴクテン】、地獄から喚び起されてお前の体で暴れ回る予定だった者だよ)
「何を言って……」
(俺より先に八極衆の奴らが来てただろ?、あれらと似たようなもんだよ)
その為に俺は殺されたのか、光の力が必要だったのではないのか。その為にこの世界に喚ばれて、この光の力を扱うように言われて、今日の日まで。
「初めっから、このつもりで?光の力は必要なかったのか?」
(あぁ、光の力と俺の炎は相性がいいらしくてな、白い炎が出てたろ?あれは綺麗に混じった証拠だ)
なら本当に生贄ではないか、最初からこの事を全て計画に入れて動いていたのだろう。あの日机の上に並べてあった書類にはこの事も書いてあったのだろう。
全部確認できていれば。
「お前はどうするつもりだ?」
(あぁ?そんなん決まってるだろ、お前の体を奪い取って暴れ回ってやんだよ)
つまりは、俺はそれに争い続ければ意識を保ったまま生き続ける事が出来るということか。
(まぁ、それは出来なさそうだけどな)
「させねぇよ」
(油断すんなよ?俺は何時何時だって、お前の体を奪う事を狙い続ける。覚えておけ)
それだけを告げるとゴクテンとやらの反応が消え、喋りかけても反応は無くなっていた。これは好都合、今の隙に国に戻ってラザールを殺してやる。
ただ、このまま戻ったところで俺の意識が残っていることが気づかれれば、また何かしらの手段を用いて俺の意識を無くそうとしてくるだろう。
希望としては一対一に持ち込む事。
それまでは、ゴクテンを演じなければならない。
俺は早速行動に移すために立ちあがろうとする。
すると、脱力したような感覚に襲われてそのまま倒れ込むように、湖の中へと落ちてしまった。体に力が入らない、泳ごうにも動かせる気力がない。そのまま流れるように湖の底の方へと落ちていく。
(何やってんだお前)
うるさい、水の中で喋る事も出来ないんだよ。
(はぁーっ)
すると、全身の周りから気泡のようなものが溢れ出してきた。気がつけば身体中に熱を帯びているのを感じる、ゴクエンが何かをしようとしているのか。
(このまま死なれても困る、情けねぇ)
瞬間的に全身から溢れ出たあの白い炎が、湖の水を全て蒸発させたのだ。気がつけば湖の底で空を見上げなら寝そべっていた。
「何が起こったんだ」
(あぁ?言ったろ、光の力と俺の炎は相性がいいと、混ぜあったこの白い炎は絶大)
「なぁ、相談がある」
(なんだ?)
「俺は、ラザールとあのグズ人形をぶち殺したい、それさえ出来れば後はこの体を好きにしてもいい。だから、この白い炎を俺にくれ」
(取引か?)
これしかない、あいつらに確実に勝つ為にはこの白い炎があれば確実に殺れる。その為ならもう手段は構わない、どうせ一度は殺されたこの体、やる事をやって終わるのもまた一つだろう。
(いいだろう、その話乗ってやる。面白そうだしな)
暫くは体を動かせる気配がない、それにあいつらが戦争を始めるまで時間もないだろう。たった一日、この体が動かせるようになるまでこの蒸発した湖の底で、白い炎の感覚と使い方を覚えるしかない。
俺は、動けないままで力の扱いを掴んでいく。
復讐心に身を焦がしながら、この白い炎であいつらを燃やし尽くせるように。
そうして体を動かせるようになった俺は、底から這い上がって行く。
(とりあえずどこ行くんだ?)
「まずはラザールから王座を奪ってやる、それからクズ人形に戦争を仕掛ける」
(向かう方向は分かるのか?)
「あぁ、地獄の力が馴染んだからなのか、ラザールのいる気配を薄らと感じる。その方向に向かって走っていく」
(あいよ、お好きにどーぞ)
そうして俺は、ゴクテンに言った通りにラザールの気配を感じる方角に向かって走っていく。
前より体が軽くなった感じがする、新たな力が完全に馴染んだからだろう。
この力をもって現れてやる。
待ってやがれ。
ご完読、誠にありがとうございます。
今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。
これからも応援よろしくお願いいたします。
また次話でお会いしましょう(*´∇`*)




