表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンドロイド魔王による異世界での理想郷  作者: ノウミ
三章 〜龍の力と魔王心〜
95/111

【第87話】魔王の誕生

こんにちは、ノウミです。


たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。

これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。


皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、

一層精進してまいります。


どうぞ、これからもご期待ください。

死傷者の確認と救助が迅速に行われていた。状況は決して無事と言えるものではなかった、家屋は半分以上が倒壊、全焼。さらに、竜族の民も半数以上がもう戦えるような状態ではなかった。


周囲は悲しみの声が絶え間なく広がる。


その場にいたコハクやセイたちは、唇を噛み潰しながら、奔走していた。力を持っているのにも関わらず、満足に振るうことも出来ずに、この状況にしてしまったことを悔いているのだろう。


「なにが、龍の力じゃ……これでは前より弱くなっておるではないか」


状況が落ち着いて、動ける者たちは里の中心に集められ、円陣を形作るように立ち並んでいた。最初に口を開いたのはセイ、話す言葉は皆に対しての謝罪。


「みなの者、不甲斐ない王で申し訳ない」


「妾たちがついていながらも、申し訳ない」


すると皆の言葉は、責めるのではなく自分たちにも非があったと。全員が、何も出来なかった無力さや悔しさを口に出していた。


誰も咎める事はしなかった、元の世界で似たようなことがあれば、真っ先に私が責められて壊されていただろう、この光景が不謹慎ながらも羨ましく思える。


そこからはこの里の立て直しについて話が上がる、もう少しで海族も合流する中で、どうしていくのかと。


「どこかに逃げ隠れする事は出来ないんですか?」


竜族の青年の一人が、恐る恐る手を挙げて伝えた。今回の状況を見て人族への叛逆は無理ではないかと、このまま攻め込んでも被害は増大する一方じゃないかと。その中で同じような思いを消えてる人は何人もいたようだ、今回の襲撃で完全に心を挫かれてしまったのだろう。


誰もその言葉に反論できなかった、セイですら、龍の力を授かった者たちですら今回の一件が重りとなり、何も言えないでいる。


静まり返った空気の中、私は円陣の中心に向かって歩いていく。その中心で腕を空に向かって上げる。


全員の視線が集まる中、空に向かって特大の電流を放った。それは龍の咆哮が如く、天に向かって伸びた。


「私は、異世界からこの地に飛ばされてきました。元の世界でも人間…人族からの迫害を受けていました」


スタンドレスで皆から託された、皆は街で今も待ってくれている。こんな気持ちや空気を持ち帰るわけにはいかない、任され託された以上、私には皆を勝利と平和に導かなければならない。


「その時、この力は無かったです。この力があれば一方的にやられる状況にはさせなかったでしょう」


その場にいた全員が話を聞いてくれている。まるで演説のようになってきたが、伝えなければならない事がある。


「私はこの力と、元の世界の知識を使ってこの地で人族の一方的な侵略を阻止したいと考えています、その為には一人では成し得ません。皆の協力が必要不可欠です!」


「いきなり来たお前に何が…」


「いきなり来た私です、余所者です。ですが、救われた恩を蔑ろにする私ではありません、皆を勝利に導くと約束します!」


「そんな事言って、また負けるんだ」


「負けさせません、今回は奇襲を受けましたが。次はこちらが奇襲をかけます!」


「そんな簡単に行くわけ…っ!」


「言ったはずです、私が勝利に導くと」


「ならどうするつもりだ!」


「戦えない者はすぐに、私の街スタンドレスで匿います。あそこなら強固な守りを築いています、戦える者はこのまま準備を整え次第一気に攻め込みます、そもそも私が来たのも攻め込む準備ができたと伝えるためですから」


するとセイが歩いてきて、肩を叩く。


「強固な守りも、攻め込む準備も信じていいんだよな?」


「勿論です、彼の地には龍の守りを張っています」


「攻めるにも龍の力か…」


俯きつつあった全員の顔が次第に上がり始めていた。

あと一押し。


「私は異世界から渡ってきて、この世界でナディという名を頂きました!私の言葉が、力が皆の()()()()()()()()()()()()()()()なるように、皆を導く事を約束します」


今は亡きラクーン、彼から頂いたその名の通り“始まりの希望”としてここに立つ事が出来たのは、彼の思いを繋いだ証拠でもある、絶対に無駄にはさせない。


するとコハクとタルトー、クベアがこちらに向かって歩いてきて膝をつき胸に手を当てて答える。


「妾は誓います、この身朽ちるその時まで()の剣となりて戦い抜く事を」


「鷲も同じく」


「僕も誓います」


聞き間違いだろうか、私の事を王と言ったような。


「俺も天族の一人、そして龍の力を授かりし者として、()の為この身を賭して戦います」


ジャスティスよ、天族は私を王として据えると決まったところなので分かっていた。だが、そのおかげで流れができてしまった。


それに続くようにセイが王の座を降りて、新たなる王として私について行くと宣誓し、それに合わせるかのようにその場にいた龍族の民も膝をつきながら頭を下げていた。


ただ、最後にアレクだけが意を唱えた。


「龍の力に選んでくれたのは感謝してる、だがな俺より弱いやつについて行くつもりはない、この力をもらった後だがよ、俺と戦えや」


「こら、お主この状況で…」


私はコハクの言葉を止める、ここで私の力を見せておくのも好都合だと思ったからだ。アレク含めて、この場にいる殆どの人には私の戦闘力を見せていない。

口だけの王だと思っている者も少なからずいているだろう、その者たちに示すには丁度いい。


「ではここでやり合いましょうか、条件は?」


「どちらかが負けを認めるまで」


「武器は?」


「勿論あり!」


そうして私たちの戦闘は皆が見てる前で繰り広げられ、決着がつくまで盛り上がりを見せていた。お互いに一進一退の攻防で長引くかと思われたが、私の新兵器のお披露目により決着は早くについた。


「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ…参った、負けだ」


「ありがとうございました、お陰で新兵器の稼働実験が出来ましたよ」


「ちっ、余裕あんじゃねぇか」


「いえいえ、ギリギリでしたよ」


私は、倒れ込んだアレクの手を取り引き上げる。腕を上げると辺りから歓声が沸き起こる、全員が“新王ナディ”と何度も連呼していた。


「やはり、私が王になるのですね」


「なんじゃ、怖気付いておるのか?」


「いえ、重いな…と思いまして」


「はははっ、妾たちの同じような感情もあるんじゃの、心が無いともう言えんわの」


「心が…ですか?」


「先の話も、心がこもっておったから皆が動いたのじゃよ」


「そう…でしたか、よく分かりませんが」


そう言われても自分自身で何かを感じることは無かった、あの時はただ思いつく限りの言葉を並べて、伝わりやすいように言い換えただけだった。


それに心がこもっていたとは、理解し難い。

理解できて納得できたら、その時は人の心を理解したということになるのだろうか。


今はまだ、何も分からない。


「あれじゃの、妾たちの王になるのじゃな…」


「ええ、僭越ながら努めさせていただきます」


「知っておるか?、はるか昔…種族の垣根がなかった時は総称して【魔族】と呼ばれていたと」


「いえ、初耳です」


「魔心はその魔族からきておるのじゃよ」


「でしたら、再び一つになった魔族の王で“魔王”と呼ばれるようになるんですかね」


「おぉ、そりゃいいの!」


全員が私たちの話を聞いていたのか、同調するような言葉がそこらじゅうから上がっていた。


いつしか、新王と呼ばれるのではなく魔王と。


「えぇっ、わかりました。私は魔王ナディです!」


ここに魔王が誕生した瞬間だった。元の世界の物語で言えば悪役になるのだろう、それがこの世界ではどうなるのか。


戦争が起きるのはお互いの意見や主張が対立しあっているからこそ、そして敗者は悪役になる。


名前の通りに魔王となるのか、正義の魔王となるか。


私のこれからに全てかかっている。

皆を勝利と導くために、このニ文字を背負う。

ご完読、誠にありがとうございます。


今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。


これからも応援よろしくお願いいたします。

また次話でお会いしましょう(*´∇`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ