【第75話】コハクとサクラ
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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工房の後片付けを終えて、私たちは四種類の鱗と爪を取り囲むように周りに集まっていた。
「さて、ナディや…どう振り分けるのじゃ?」
「まず土はジャスティスがと決まっております」
「そうじゃの、お互いに合意した上じゃしの」
「はい。後は火、電、水の鱗と爪をどう振り分けするかですね」
「電はお主で良いじゃろう?」
「いえ、ここにはファーネもいますし」
「いい!いい!いい!、僕はいいよ辞めておく」
本気で嫌がっているような様子だ。まぁ、ファーネには戦闘というよりもグロガルと一緒に、後方支援に徹してほしい所ではあったのでこれで良いだろう。
「分かりました、僭越ながら私が務めます」
「すると火は妾が……」
「マスター・ナディ、進言します。私にもチャンスをください」
「サクラ、本気ですか?」
「はい」
まさかここで口を挟んでくるとは、サクラも火の原素であると同時に、コハクの弟子でもある。何か思うところでもあるのだろうか?
「ふはははっ、いいのサクラ!妾と向かい合うか!」
「はい、私にも権利はあるかと思います」
「では早速鱗と爪を抱き……「待たんかナディ」
「どうしました?」
神妙な面持ちで私の話を遮った。
「サクラ,刀は持っておるな?」
「はい、勿論です」
すると、コハクは刀を抜きサクラに襲いかかる。
負けじと手に握っていた刀でそれを防ぐも、腕を掴まれて工房の外へと投げ飛ばした。
「コ、コハク!?」
突然の事に、その場に残されてしまった。慌てて追いかけようとするがタルトーは笑ってそれを見ているだけだった、グロガルに関しても同じだ。
もしかして試しているだけなのか?
外に出ると二人は刀を打ち合っていた、気づけば辺りに現物人も集まってきていて、二人を取り囲むように円になっていた。
私はその人混みをかき分けて何とか前に出る。
「はははっ!前とは動きが違うの!!」
「当たり前です!」
二人は楽しそうに刀を交わしている、工房で笑い合っていた意味がわかった、強者が力を得るそれこそか当たり前の事なのかもしれない。
これに勝った者が、龍の力を受け取れると。
終わりの時は直ぐ側まで近づいていた、コハクがバランスを崩されてその隙をサクラが狙う。
しかしそれは、誘われたに過ぎなかった。向かってきた刀を逸らし逆にバランスを崩させて首元に刀を添えるように置き今回の勝敗を決める。
「参り……ました…」
「はははっ、サクラも見事なものじゃったの」
辺りは歓声に包まれていた、二人の健闘に誰もが歓喜湧き上がっていたのだ。サクラは平然としていたが、コハクは皆の感性に応えるように手を上げて振ってた。
「サクラ、成長しましたね」
「いえ、マスター・ナディ。負けてしまいました。」
「大丈夫です、あなたはもっと強くなれますよ」
「そうじゃぞサクラよ!妾も間一髪のところじゃったからの」
「いえ、師匠にはまだまだ遠いです」
「妾もそう簡単に負けたりせんわ、これからも鍛えてやるでな」
「はいこれからもよろしくお願いします」
そうしてコハクが龍の力を受け取る形となった。
誰も異論はなかった、残すのは水のみとなるが、タルトーはその力を拒否した。上手く扱える自信がないのと、繊細なコントロールなど儂には無理じゃとの事だった。
私の知る限りでも水の原素を持つものは、他に知らない。
そう思い悩んでいると、コハクから海族の王に聞いてみてはどうかと言われた。
海族の王は現在、戦力を整えるために一旦自国に戻っているらしく、近況の情報共有も兼ねて会いにいってみてはどうかとの事だった。
「なるほど、海族ですか……一度会いに行ってみましょうか」
「妾も同行するでな」
「私もお供します、マスター・ナディ」
ジャスティスも一緒に行きたかったらしいが、力のコントロールがまだまだ出来ていないので、ここに残ってセイの元で鍛えてもらうとのことだった。
出立の前に、火の龍の鱗と爪を錬金術によって一つのインゴットへと形変えておく。
勿論、前回同様コハクに火の原素を注いで貰いながら精製した。
今までで最高傑作の一振りを作り上げたいとのことだったので、海族の元から帰ってきた時には完成した刀を渡すと告げられていた。
私の方も同じ要領で精製していく。
自身の電を注ぎなので、作業としては簡単だった。
ただし、私はこのままで一旦置いといてもらう。
このインゴットを使った武器のイメージが出来上がっていないからだ。
中途半端なものは作れない、私たちの切り札の一つになるのだから。
私も海族の元から戻ってくるまでの間に、ある程度の設計図を考えておく。
私の専用武器、それを一体どのような物で形作っていくのか。
そうして、竜族の里を後にし海族の住む場所へと出発する。
竜族の里を背に進んでいく、右の方角を向けば人族の里に左の方角を向けば海族の住んでいる村にたどり着くらしい、先日強大な炎柱の上った方角で、その場所の更に奥にあるらしい。
悠長に森の中を歩いていく余裕もないので、一気に木々の間を駆け抜けていく。
私とサクラは体力というものが存在しないので、コハクの体力の許す限り進んでいく。
しばらく続くはただの森、道を見失いそうになるがコハクが進行方向の指示を出す。
私とサクラには場所が分かっていないので、言われた方向に向かって進んでいく。
走り続けていた途中で、周囲の確認もしやすそうな空いた空間が見えた。
コハクの休憩がてらその場に座り込むんだ、サクラは周囲の警戒も含めて辺りの偵察を買って出た。
そのまま森の中へと入っていき、サクラの姿は消える。
コハクの側に私も座り込む、久々に二人になったので聞きたい事があったのだ。
「そういえば、一度聞きたいことがあったのですが」
「なんじゃ?」
「獣族の皆さんはどちらに?」
何か聞いてはいけないことだったのか、コハクの表情が一瞬強張る。
何かを思い詰めたような、悲しげな表情を浮かべながら空を見上げる。
「すみません、変なこと聞きましたね」
「いや、よい。構わぬよ」
その声は少しだけ震えていた。
私が知っている獣族は、今やコハクとタルトー、クベアの三人だけだ。
その他の種族は住む場所を形成して暮らしていたが、獣族は知らない。
それどころか、会ったことや話を聞いたこともなかった。
「もうおらぬよ、妾は名ばかりの王じゃ」
「おらぬとは、まさか……」
「そうじゃ、今や残っているのは妾の知る限り三人のみじゃ」
やはり私の知っている三人のみだけだった。
人族に滅ぼされかけてしまったのだろうか、これ以上は何も聞けなかった。
そこからはお互いに話さなくなり、沈黙した空気が漂う。
その空気を破ったのはサクラの声、辺りの偵察から戻ってきたようだ。
戻ってきて早々に、急ぎながらこちらに詰め寄ってきた。
「人族が押し寄せています」
「なんじゃと!?」
「状況の説明を」
「はい」
森の偵察をしていた際に、大人数の足音が聞こえてきたので気になってその音の鳴る方へと進んでいくと、大量の人族の兵士が進軍している様子を確認。すぐにその場を離れて、私たちへ報告にしに戻って来たとの事だった。
「コハク、この先に海族が暮らしているんですよね?」
「あぁ、そうして人族がこのあたりで向かっていると」
私は地面にこの周辺の地図を描き、状況の確認をしていく。
間違いないのが、確信があって進行していた場合この先に待つは海族の住処。そのまま人族の軍勢がすすんで行くのだろう。その理由としては、海族の殲滅。
天族のときみたく、周りから囲うように攻め込んでいくのだろう。
実際、私たちが海族に行くことがなければこの軍勢にも気づかなっかだろうし、そうなれば知らぬ間に海族は滅ぼされていた可能性だってある、勿論反撃して退ける可能性もあるが、向こうの戦力が不明な状況、さらに奇襲を仕掛けられたのでは勝ち目が低くなるだろう。
「コハク、急ぎましょう」
「うむ、勿論じゃ」
私たちは立ち上がり、人族に見つからないように近づいていく、このまま海族の元まで走って行き知らせることも出来るが、可能な限り敵の戦力は確認しておきたい。
サクラに言われた方へと向かっていくと、たしかに大量の足音が聞こえ始めていた。
「あそこです」
指差す方向には確かに人族の軍勢が進軍していた。目視できる限りでは百人以上は動員されている。
「中々の戦力ですね」
「うむ、これは多いの。それに全員が今までの兵士と違った雰囲気を感じるの」
「私も同意見です」
兵士の一人ひとりが、ただならなぬ雰囲気を漂わせていた。まるで歴戦を潜り抜けたような、屈強な兵士に見える。ここまで揃えたという事は、間違いなく海族への侵攻を開始したのだろうから。
「急ぎましょう」
「うむ、そうじゃの」
そうしてその場を後にし、見つからないように大回りをしながら海族の住処へと向かって駆け抜けていく。
コハクの息が荒くなってきていたが、コハクは止まる事を許さなかった、それよりも少しでも早く知らせに行きたいと、そう願っていたから。
75話ご完読ありがとうございます!!
中々設定や、キャラクター、技などが大きくなってきて、整理するのも一苦労な状態です。
皆座のお力添えでここまで頑張れています、またXなどでも拡散してください(^^)
また次話でお会いしましょう(^^)




