【第65話】再び竜族の里へ
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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私は、コハクとㇰベア、ファーネと共に大峰魔山を登っていた。かつて、この山を超えて戎族の遺産を探しに来たときと同じメンバーだ。今回の情報を、竜族の村へと伝えるために向かっている。
来たときとは違って、私の体も壊れていたりしないので順調に進んでいた。
「いやーこのメンバーも久々やな」
「そうですね、特にファーネは籠もりっきりでしたからね」
「僕もほとんど訓練だったからな……」
「おや、何か不満がありげじゃの?」
「いやいや!いつも、ありがとうございます!!」
皆の雰囲気は悪くなさそうだ、今から向かっている目的としては、人族の動向と戦力について伝えていくのだから。それに、裏切り者の可能性についても伝えないといけない。
あの話の信憑性については考えたくもないだろう。
宿敵である人族に味方している者の存在、そして私達皆を裏切ったという事実。
誰もその事については触れないようにしていた、触れたくなかったのだろう。
そんな表面上だけ取り繕い、大峰魔山を登っては降りていく。
山を抜けると、懐かしい竜族の里が見えてくる。
里の中に入っていくと、皆が歓迎してくれていた。
こちらの状況は全て伝わっていたらしく、龍族に認められた存在として周知されているらしい。
私たちが来たことが皆に伝わっていったのか、続々と人が集まってきていた。
「おぉ!ファーネようやく戻ってきたか!」
「ごめん、遅くなった」
「戎族の遺産、見てきたんだろ?」
「うん、全部ね」
「そうか、そうか……」
「公開はしてないよ、遺してくれてありがとう」
「ファーネ、クロガル。積もる話もあるでしょうがまずは…」
「ん、どうしたのじゃ?」
私たちは今回の来訪の目的を伝える、竜族の王に伝えないといけないことがあると。
「今なら、いつもの場所におるじゃろう」
「ありがとうございます」
そう話すと、私たちと一緒に王のいる建物へと向かう。
「そういえば、風と土の龍の鱗や爪は役に立っていますか?」
「勿論よ!まだ完成とは言い難いがな」
「苦戦しているみたいですね」
「そこはお前、職人冥利に尽きるってもんよ!!」
そんな事を話しながら、建物に到着し中に入っていく。
中に入ると、竜族の王が誰かと話しているのが聞こえた。
来客でもあったのだろうか。
クロガルが中を確認してくると行って部屋の中を覗く、どうやら問題ないようなのでそのまま入る。
中には竜族の王セイと妖族の王クロハ、そしてタルトーに見たことのない人物が座っていた。
その者は半魚人のような見た目をしている、顔はサメ?のようで、人間と同じく手足もある。
もしかしたら、彼が海族の王なのだろうか。
四人は机を囲み、楽しそうに談笑していた。
「あれ?コハクじゃねぇか戻った……おや、勢揃いだな?どうした」
「談笑中のところ申し訳ないな、よいか?」
「構わんよ、その顔を見るにあまりいい話じゃなさそうだがな、座れよ」
そうして私たちも机を囲うように座り、今日来た経緯について離していく。
人族の状況や、戦力。今まで私が建築してきた街や、戦闘の数々を全て。
そして、先王の行方についても全て隠すことなく。
その場にいた三王とタルトーは神妙な面持ちになる。どうやら、会話の中で聞いたことだが、初めて見た彼は海族の王で間違いなかった、名は【ガリドン】というらしい。
「中々難儀するな」
「私もそんな事になっているなんて、知りもしませんでしたよ」
「あぁ、にわかには信じがたいが……」
「全て人族の城から奪ったした情報じゃ、間違いはないと踏んでおる」
「はい、私が偵察に赴き、この手で入手してきました」
タルトーもグロガルも、思いもよらなかった話の数々に大人しくなっている。
この場にいる誰もが頭を抱えて逃げ出したい、情報だろう。
「にしても、人族の動きが正確すぎるな」
「うむ、それについてじゃが…」
「何かあんのか?」
コハクは顔を妖族の王の方へと向け問いかける。
「クロハや、先程から黙っておるがどう思われる?」
「何も…やることをやるだけだ、ここまで状況は動いている…今更後戻りはできん」
「確かにの……後戻りはできん。やるしかない…か」
「あぁ、今度こそ逃げ帰るような事はしない……」
「がははははははっその通りじゃよく言うた!!」
「そうだな、ここまで来たからには全滅か、打倒か」
皆の雰囲気が少しだけ良くなっていた。
クロハの言葉に、今一度全員が成すべき事を再確認できたようだ。
この言葉の通りやらねばならない、でなければ待つのは破滅の道のみ。
全員が一致団結すれば、勝てない戦争ではないと。そう思えてくる。
一致団結すれば…だが。
「ところでクロハや、お主に問う事がある」
「何だコハク…改まって……」
「お主…妾たちに隠し事などはしておらんか?」
ついに、コハクが火蓋を切った。
昨日にカリナから仕入れていた情報、裏切り者について。
「何だ急に…あ、どこで聞いた?」
やはりあの情報に間違いは無かったのか。
「いや、のぉ…?」
「たく、隠し事は出来ないか……そうだよ先日人族に攻め込まれて妖族はほとんど残っていない」
「なっ!?なぜ言わなかった!!」
「セイ、すまねぇな……水差すような事はしたくなかったんだ…今がいい時だろう?この想いは俺だけが背負えばいいと」
「そうか、気づいてやれなくてすまねぇな」
「クロハの馬鹿野郎が……儂にぐらい言わんか!」
「すまねえな…お前だから言えねぇんだよ…」
思っていた内容と違う。もしかして、カリナの情報が間違っていたと言うのか、それならそれで結果としては良いが、戻ったら戻ったでコハクが斬りかからないようにしないといけないな。
「待たんか」
コハクが割って入る、まだ何かあるのか?
「クロハ…お主、妖族はほとんど残っておらんのか?」
「あぁ…力及ばずだよ…、戦力を減らしてすまない」
「仕方ねぇよ、その分亡くなった奴らに報いる為にやってやろうぜ」
「もう一度問う、人族にやられたのじゃな?
「あぁ、人族にやられたよ」
「そうか……」
静まり返る部屋の中で、コハクだけが動く。
鞘から刀を抜きクロハの元へと詰め寄る。
「お主、攻めてきた人族はどんな奴らじゃ?」
「兵士が数十人と、八獄衆と名乗っている奴が一人いたな」
「そやつの特徴は?」
「すまねぇな、俺が駆けつけた時にはもういなくなっていた」
「そうか…やはりか」
「ちょ、コハクいきなりどう……」
コハクは、手に握った刀を勢いよく振り下ろす。
その刀は空を斬り、クロハは後方へと逃げていた。
「コ、コハク!?」
「おい、コハク何しておる!」
「おい…これは一体どういう事だ…」
私にもこの状況は理解できない。クロハが嘘を言ったような感じはしなかった、もしかして本当に裏切り者だったのか。だが、その証拠が無いように思えるが。
「お主、自分の民を売ったな?」
「はぁ?…一体何の事だ……」
「おい!コハク!何が起こってんだよ!」
「そうじゃ!いきなり斬りかかるとは!」
場は騒然としていた。事情を知るのはコハクのみ。
私もクロハが裏切り者だとしか聞いていなかった。
コハクの中で、何か確信めいたものでもあったのだろうか。
「最近人族の軍勢が増加したらしい、その際に多数の命が生贄となったと」
「なんだ?それが俺のせいだと……そう言いたいのか?」
「おいおい、コハクそりぁ言い過ぎだぜ」
「言ったろ?売ったなと」
「笑えない冗談だぞ…そいつは」
部屋の中の空気が凍りつき緊張が走りる、全員がすぐにでも飛び出せるように構えをとり、コハクの動きと言葉に集中する。
「この封筒じゃ、見ろ」
全員が取り囲む机の上に、懐から取り出した一通の封筒が置かれる。これは、昨日カリナが全員の前に出していたものと同じだった。そういえば、中身は確認せずに昨日の話し合いは終わってしまっていた。
セイがその封筒を手に取り中身を取り出した、その他の全員もセイの後ろに周り、同じく中身を確認をする。
その封筒を見た者は、震えて声を失っていた。
「クロハ、どういう事だこれは」
「おい、クロハよ!ここに書かれてる事は嘘じゃろ!?お前がそんな…そんな……」
「一体何が…「動くな!!妾から説明してやる」
コハクの言葉から告げられたのは、人族に対する一通の密書であった。中に書かれていたのは、人族との取引の内容。
他種族の情報と民の命を差し出す代わりに、自身の命を保証する事、魔王心を継承させる事などが記されていたと。
他の何者かの手によって作られた偽造書類の可能性もあったが、苦しい顔をしながらタルトーがそれを握りつぶす。
「これは紛れもなくお前の字じゃな…どういう事だ」
「俺じゃねぇよ…誰かに嵌められたんだよ」
タルトーが勢いよく机を殴りつける。
大きな音を立てて、机は二つに割れ裂ける。
「ふざけんのも大概にさらせ、お前以外に妖族の民を詳細に書き連ねる者はおらんだろ」
そう言いながら見せられた書類には、生贄に差し出すリストと、それぞれの特徴や強さなどが書かれていた。カリナが話していた強い者ほど、地獄から喚び出す戦力が変わると、それが関係しているのだろう。
「白状せい、裏切り者」
流れが変わった、もう言い逃れはできない。
今度は、クロハを逃すまいと取り囲むように、全員が構えをとり始める。
「くっくくくくっ」
第65話ご完読ありがとうございました!
まさかの裏切り者の出現に、この後どうなるのか!?
乞うご期待!!
また次話でお会いしましょう(^^)




