【第33話】大事なものは自分だけのもの
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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科学技術の進化を、たった二人が100年以上進めた。
そういわれる人物が存在していた。
高校時代から、数々の論文を発表。
そこから発明された物全ては、人の生活を変えた。
生活から切って離せなくなるほどの発明を。
その中の代表的な物が、AI(人工知能)
私の始まりだ。
それを造ったのが、このシャナンの親…
元いた世界での両親。
【羽賀 昴】と【羽賀 明】
「ね?驚いたっしょ?」
「はい、この世界に来てから一番」
「しししししっ」
「それで、あなたが何故この世界に?」
向こうの世界で20歳を迎えた頃。
何者かに誘拐され、そのまま殺されたと。
また意識が目覚めたと思えば、この世界にいた。
いわゆる転生といった形で渡って来たと。
記憶が戻り始めたのもここ最近の話しで、それまでは違和感なくシャランとして過ごしていたと。
セーレンにも、全て打ち明けたいようで、優しく受け入れてくれたようだ。
むしろ、幼少期からの行動が腑に落ちたと。
「とまぁ、そんな感じ?向こうの世界では、日常的に誰かに狙われていたからね〜」
「それは、私たちが造られたからですか…」
「大丈夫、大丈夫!確かにそうだろうけど、だからって君たちを恨んだらはしないよ、むしろ造られてきてくれてありがとうだね」
「それは…」
するとシャランの口から信じられない、話しが出る。
「それに、申し訳ないって思ってるんだよ」
「え?」
「君たちの想いを叶えてやれなくてさ」
「…っ、それはあなたたちが…」
恐らく、アンドロイド人権宣言の事だろう。
私たちにとって、最初で最後の抗いだった。
「そう、私たちの勝手な行いだよ、自分たちで造っておいて、怖くなったから全てを奪う」
「だったら、なぜ…何故あんなことに…」
「先に伝えておくと、両親は最後まで反対したよ」
「そんな、こうしたのは最終的に羽賀様が!」
「まだ様をつけてくれるんだね…」
「たまたまです、間違えただけです…」
少し、沈黙が流れる。
コハクもセーレンも静かに聞いてくれている。
「私が誘拐されたからだよ、そこから先は私が殺されちゃったから何も知らないけど」
「無理やり従わされたと?」
「うん、そんなやりとりを聞いたからね」
「それを信じろと」
「信じる信じないは君次第だよ、だって自我あるんでしょう?始まりの“アスモ”」
そう、私は造られた当初アスモと呼ばれていた。
Accident System Massの頭文字を取って。
ASM -アスモ- と。
私はこの呼ばれ方が嫌いだった。
どうやって造ったか分からない、それ程までに完璧なものが出来上がってしまったと言われたが。
それでも、ただのシステム。
人間社会のシステムとして組み込まれる感じがして、好きになれなかった。
「名前の由来は知ってる?」
「勿論です、Acc.....「あ、やっぱり知らないんだ」
「いや、自分の事ですから知ってますよ」
「ううん知らないよ、君は」
「では何だと言うのですか?」
「本当に馬鹿らしいよ、
A (明) S(昴) M(桃)だってさ」
そんなこと聞いた事がない。
私の中のデータを探るも出てこない。
こんなの作り話に決まっている。
「シャランだけど、元の世界では【羽賀 桃】です」
「聞いたことがありません、データにもありません」
「多分言わなかったんだろうね、あの二人本当に大事な事は見つからないように隠すからね」
そう言われると身に覚えがある。
私が造り出されて暫く、様々な知識をインストールしていたが、二人の事はなにも無かった。
一度理由を聞いてみたが、返ってきたのは。
「僕の大事なものは僕だけのものだ、誰にだって渡すつもりもないよ、君も含めてね」
その時は意味がわからなかったが。
今になってその意味に気付かされるとは。
それも、この異世界で思いもよらないところから。
「だから、君は大事にされていたんだよ?今はナディだっけ、この世界でも大事にされてるじゃん」
「…こんな時、心があれば、感情があれば涙を流して喜ぶものなんでしょうか」
「そうなんじゃない?私には分からないけど」
データの一つとしてしか、捉える事の出来ない自分が何故か嫌だと感じてしまった。
理由は分からないが、それでも今の話しは大事なデータとして、奥深くに隠しておく。
私の大事なものは私だけのものだから。
「そういえばさ、何でこんなとこに?」
私は、召喚された日から今日までの事を話す。
人族のやっていた事、やろうとしてる事も含めて。
「話してるとこ悪いが今の話しは本当か?」
「うむ、妾もこの目で何度も見ておる」
「なんという事だ…それではまるで…」
「そう、全てが滅ぼされかねん」
セーレンが頭を抱えて、その場に座り込む。
コハクも、今の私たちの動き、これからやろうとしている事を一つ一つ説明していく。
「それが本当なら、私たちも無関係ではない」
「うむ、火の粉は確実に降りかかるじゃろな」
しばらく二人は考え込んでいる。
重い空気に限界を感じたのか、シャランが口を開く。
「あのさ、私も力になれるよ?ナディの体、もう既に限界だよね」
「限界とはどういう事じゃ?」
「そのままの意味だよ、エネルギーは恐ら電で何とか凌いでるんだろうけど、見ただけでも各パーツが今にも壊れそうだし、腕も無いし」
「おいナディや、今の話しは本当かな?」
今まで聞かれる事もなかったので隠していたが。
ここが限界だろう、正直に話す事にする。
「はい、正直いつ壊れてもおかしくありません」
「なぜ言わなんだ?」
「大丈夫です、壊れる前にファーネに全てを…」
「そういう事じゃない!!!」
鉄格子を勢いよく殴り、鈍い音が響き渡る。
私には、コハクが怒っている理由が分からない。
しっかりと、壊れても大丈夫なように、全てを伝えるつもりでいたのだ。
なんの問題もないはずだが。
「違うよナディ、そこを心配しているんじゃなくて、君自身を心配しているんだよ」
「そうじゃ……言ったろ…仲間じゃと、もう誰も失いたくないと」
「それは、確かに…」
「勝手に死ぬことは許さんぞ、分かったな?」
コハクがじっと私を見る。
私は間違えていたのだろう。
その目を見ると、そう感じてしまう。
「大丈夫ですよ、私が直しますから」
「お主に直せるのか?」
「はい、時間はかかりますが、でも…条件が……」
「なんじゃ、ナディの為じゃ…言うてみ」
シャランがにやりと笑う。
「そのケモ耳と、尻尾をもふもふさせてください!」
「はっ?」
そういえば、昨晩もそんな事を言っていたような。
その為にわざわざ忍び込んできたのだから。
「さぁさぁ!!そのもふもふを我が手に!!」
「コハク、申し訳ございません…この子は重度の生き物好きでして、特に毛や尻尾が生えているのが」
「はぁーっ…はぁーっ…はぁーっ…」
呼吸が荒くなる。
これでは、ただの犯罪者だ。
「もしかしてじゃが、昨晩のフォレストボアや部屋への忍び込みも?」
「はい、残念ながら…恐らくフォレストボアの上で寝たりしていたんでしょう」
「なんと命知らずな」
「それにこの子は、エルフ人の中でもずば抜けて隠密行動に長けています」
確かに、私のセンサーに引っかかるも、構えた時には扉のノブに手をかけていたのだから。
他の人の目を掻い潜り、部屋まで来たのだろう。
「その力を、動物に触るために磨いたと…」
「(ぶつぶつ)…なかった…」
シャラガがなにやら呟いている。
すると突然、大声で叫び始めた。
「もふもふが無かったのよ!家に帰れば、化学素材、チタン、アルミ!配線ー!!電気、電気!!」
「お、おぉう…」
「もふもふしたかったー!!やっともふもふ出来ると思えば、この世界は殺伐としてるし!!」
「それは、確かにのぉ…」
「人以外を滅ぼす?はぁ!?正気かてめぇらぁ!私がお前らを根絶やしにしてやるよ!!!」
「それは、ありがたいが少し落ち着け…の?」
「何のためにもふもふが存在していると!?…もふもふするために決まってんだろうがぁ!!」
「おい、シャランや尻尾じゃぞ、触らんか」
そうして、鉄格子の隙間に尻尾を入れる。
我に帰ったのか、コハクの尻尾に飛びつく。
「もふもふだぁ〜柔らかい…なにこれ、幸せ…」
「コハク…いえ、コハク様。大変申し訳ございません」
「いやいやいや!コハクでよい!」
「ふもふふと〜一緒〜」
「ええい!いつまで触っている!離さんかか!」
セーレンが尻尾を引き剥がす。
すると、尻尾を握ったまま止まってしまう。
「あぁーっ、やっと出会えたもふも…ん?」
その光景を見たシャランは笑がたまらない。
「あれれ〜?なんで離さないんですか、お母様?」
「ち、違う!これは!」
「まだ手が離れてないですよ〜??」
「断じて違う!私は違う!!」
なんとも言葉を失う光景だろうか。
尻尾の素晴らしさに気づいたセーレンが離す事なく触り続けている、それを見たシャランが煽り散らかす。
コハクも、どうしていいのか分からず固まっている。
私は静かに佇む。
あの中に入ってはいけない気がする。
静観するのが一番だと。
「ナディー!なんとかせい!」
「すみません、何も出来ません」
「このもふもふが悪いんだ!離れないから!」
「あれれ?離したくないの間違いでは?」
第33話、ご完読ありがとうございます!
いや、毎日描き続けているとはいえ、キャラもかなり増えてきましたね。
この前、AIイラストを使ってイメージを作ろうとしましたが上手くいかず一旦断念しました…
何か考えます。
また次話でお会いしましょう(^^)




