【第32話】剣舞と孤月流
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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コハクは一刀を構え、目を閉じ集中する。
セーレン王は二刀をぶら下げならが、立ち構える。
コハクが目を開けると、合図が告げられる。
先に仕掛けたのはコハクの方だ。
下から上に斜めに切り上げる。
この前の、居合抜きを模した動きが繰り出される。
だが、その剣は空を斬ることになる。
上体を後ろに反りながら、これを躱した。
コハクは続けて、二撃目、三撃目と斬りつけていくが、かすりもしない。
まるで、自然に踊るかのように剣を避ける。
これが剣舞なのだろうか。
コハクも笑いながら、何度も繰り出すが当たらない。
「ははははっ!踊っておる、舞っておるな!」
「まだだだよ?」
今度は、剣を剣に当てて弾いていく。
まるで楽器を奏でるように、軽快に。
コハクは完全に翻弄されていた。
子供が大人に弄ばれるように、剣が届かない。
「これはこれは、不思議な感覚じゃの」
「でしょう?私の舞の一部となりなさい」
「いやいや、まだまだこれからじゃ」
顔から笑みが消え、目つきが変わる。
どうやら様子見をしていたのか、動きも変わる。
剣筋が不規則になり、鋭くなり始めた。
徐々に剣を弾かなくなり、避けるだけになる。
ここから二人は、会話が無くなっていた。
鋭い横薙ぎの一閃が、放たれる。
これを、頭上を飛び越えコハクの背後に着地。
その動作さえ、一連の舞のように見える。
すぐに振り返り、もう一閃。
だが、これも当たることはない。
今度は、コハクを中心に円を描きながら舞い踊る。
まるで、流れる川のように。
掴みどころのない、自然な動きで。
ここで初めて、セーレン王が攻撃に転じる。
舞いながらも、四方八方から二刀で斬りつける。
前を防げば後ろから、また後ろかと思えば、横から。
かろうじて防いではいるが、長く持ちそうにない。
初めて、コハクに一撃が入ったのだ。
続け様に、数回斬られる。
これが、本物の剣ならただでは済まないだろう。
コハクも黙ってやられるわけではない。
二刀同時に斬りかかれるが、これを弾く。
その隙に、剣を構え…
[ 狐月流 一ノ太刀 円月斬花 ]
そうして放たれるは、円月を描く剣筋。
これなら全方位、どこに逃げられても斬りかかる。
セーレン王の懐に、浅くも一撃を与えた。
円の中から出るように、少し距離を取る。
たが、コハクが構え直すと、眼前に剣が迫っていた。
二刀は紐で繋がっているので、投げ飛ばしたようだ。
当たらないと分かるや、すぐに引き戻す。
そして、逆の剣でさらに投げ込み追撃。
剣で勢いを殺せたとはいえ、肩に直撃した。
引き戻された剣は、その両手に携われる。
今度は、紐の部分を持ち振り回す。
攻撃範囲が広がり、剣に勢いを乗せていく。
回り続ける剣は、次第に空を切る音を鳴らし始める。
それを見たコハクは、笑みを浮かべる。
剣を前に構え、これを向かえ討つつもりらしい。
軽く膝を曲げながら、深呼吸をする。
コハクの攻撃範囲外から放たれる剣は、空を裂き切りながら、薙ぎ払うように飛ばされる。
反応が遅れたのか、しゃがみ込み避けきる。
その瞬間を狙って、セーレン王が回転し、二刀目を頭上から振り下ろす。
これも剣を坂のように、斜めに捌く。
まだ終わっていなかった。
三刀目が迫る。
最初に飛ばした刀を手に、直接斬りかかる。
横に振りかぶり、コハク目掛け駆け出していた。
放たれるその剣に合わせ、コハクも剣技を放つ。
[ 狐月流 四ノ太刀 月砕剛剣 ]
速度は落ちるが、力強く放たれた剣技は、迫る剣を捉え衝突する。
激しい音と共に、セーレン王の剣を砕く。
怯む事なく剣を引き寄せ、逆の剣を握る。
お互い喉元に剣を置き、寸前で止める。
「そこまで!!」
終了の合図が伝えられる。
お互いに最後の攻防は息つく暇もなかったようだ。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ…凄いの」
「はぁっはぁっはぁっ、そちらこそ」
「はぁーーーっ…ふぅーっ…妾の負けじゃな」
「どうして?私だって剣を砕かれた」
「これが、本物の剣なら…最後の攻防はあそこまで動けなんだよ」
「なるほど……また手合わせしません?」
「こちらこそ願いたいぐらいじゃ」
二人は手を握り合う。
お互いの剣技を認め合ったようだ。
「それにしても、舞踊るとは凄いの」
「そんな、あなたの優しく鋭い剣技かと思えば、最後のは破壊的で思い剣技も驚いたわ」
「コハクで大丈夫じゃ」
「あら、なら私もセーレンでいいわよ」
「よろしくなセーレン」
「ええ、コハクも。…そっちのあなたもねー!」
私は何もしてないが、コハクの仲間だからだろうか。
とりあえず、これで敵対関係では無いだろう。
お互いの王がここまで打ち解けあったのだから。
「あ、そういえば娘さんは大丈夫ですか?」
「あぁ〜…、あぁ、一緒に見に行く?」
「是非お願いしたいです、聞きたい事もありまして」
「ついておいで、案内するわ」
私たちは、そのままセーレンについて行く。
案内されたのは、地下の部屋だ。
犯罪を犯したりした者が入れられるそう。
まぁ、昨日の出来事はそれぐらいなのだろう。
こちらとしても迷惑をかけられたから。
しばらく、地下の階段を降りていくと牢屋が見えた。
入り口には二人ほど立っていた。
「「王よ!おはようございます!」」
「ごめんなさいね、ご苦労様」
そうして、中へと入っていく。
左右にそれぞれ牢屋が構えられている。
一番奥に閉じ込めているそうだ。
「実の娘とはいえ、大丈夫なのか?」
「いいのよ、昔から聞き分けのない子で…」
「昨日のようやことが?」
「ええ、そうなの…今回は特に酷かったわ」
そうして、一番奥の牢屋に着く。
鎖で繋がれながらも、いびきをかいて寝ていた。
よくもこんな状況で爆睡できるもんだ。
「“シャナン”!起きなさーい!!」
「は、はいぃ!起きました!お母様!!」
シャナン?は飛び起きて敬礼をしている。
こちらを見るや否や、鉄格子まで飛び込んでくる。
「おぉ!いつぞやの!ケモ耳様とアンドロイド!」
「シャ・ナ・ン・?」
「ひぃぃ!お母様!」
反省の色が見られない。
牢屋に閉じ込めても意味がないのでは?
「ごめんなさいね、改めて紹介するわ娘の【シャナン】よ」
「うん!シャナンと申します!さぁ!近くに!」
セーレンが耳を引っ張り説教をしている。
うん、やはりこの人には意味がなさそうに見える。
「ご、ごほん……さて、聞きたいことがあるって?」
「おぉ!何でも聞いて!好きなケモ耳は…「シャナン!」
「うぅ、ごめんなさい…」
「あ、えぇ〜と宜しいですか?」
「ん?なに?アンドロイドさんからの質問?」
「はい、私からです」
すると、私の疑問が向こうの口から飛び出す。
ここに来て聞きたかった事だ。
「なぜアンドロイドを知ってるのか、どこからきたのか、いつの時代から来たのか…ってとこ?」
「わかっていたのですか」
「君を見ればわかるよ、まぁ、私も気になることがあるし」
先に、シャナンの方から話し始める。
どうやら、前世の知識を持ったまま産まれたらしい。
前世では科学が発達し、そこで学生をしていたと。
いくつかの情報を擦り合わせると、私がいた世界、私が飛ばされた時の時間軸と一致する。
大きなニュースや、流行りの、総理大臣の名前など。
全てが見事に一致していたのだ。
それでは、何故こんなにも時間軸がズレた?
「私はね〜今年で50歳だよ〜、前世と合わせると70歳ぐらいの計算になるなかな」
「すみません、この通りまたまだ子供で」
「見た目は大人のように見えるがの…本当なのか?」
「はい、私たちは見た目がある時期から変わらなくなるのです、それに合わせて長命でして」
「なるほどの、同じ人族でもこう違うか」
「同じではないんですが…」
「どういう事じゃ?」
セーレンの口から驚きの言葉を耳にする。
かつて、始まりの人族“ノブヨシ”がセーレンを異世界から召喚、それがエルフ人の始まりだと。
続けて、同じ世界から複数人が召喚され、今のエルフ人を形成した。
「私はもう永い時間を生きてきました、初めこそ人族に協力していましたが、私たちは自然を愛し、自然と共に生きる種族。彼らの行いが許せなくなりました」
「そんなことがの…」
「私たちは、還る方法も分からなく、この地に留まり生き続けるしかありません。なので、人族から逃げるようにこの森に住んでいるのです」
「話しの途中でごめんね、私も聞いていい?」
「ん?どうしたのじゃ」
「ねぇきみ、何で綺麗な自我があるの?」
「何故それを?」
「わかるよ、だって君達を造ったのは私の親だから」
第32話ご完読いただきありがとうございます!
季節も夏へと移り変わるこの頃。
外に出るのはいやだ、涼しい場所で過ごしたい。
そんな時に私の作品を見つけてください!
また一話から読み返しても面白いと思います!
是非是非、今後も応援のほどよろしくお願いします。
また次話でお会いしましょう(^^)




