【第31話】剣術にて舞い咲き誇る
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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ようやく皆が寝静まったと思えばこれだ。
頼むから、静かに休ませてくれと願う。
私はいいが、皆は限界に来ていたのだから。
ドアノブが静かに回り、扉が開く。
私たちは扉の方を向き侵入者に対し、警戒する。
一体、誰が入ってくるかと。
そいつはドアが開き、顔を覗き込んでくる。
「ど、えぇ!?」
なんと、現れたのはセーレン王の娘だった。
驚いた表情でこちらを覗いている。
「お主、こんな夜更けに何用じゃ?」
「先ほどの腹いせとかですか?」
辺りを見渡しながら、驚いた表情を続ける。
「あの、もしかしてバレてました?」
「うちのナディがお見通しじゃ」
「ナディ?」
コハクが私を指さしている。
指の先を追いかけ、こちらに視線が向けられた。
私を見るや、さらに驚いた表情を向けられる。
「えぇ!?“家庭用アンドロイド”じゃん!!」
「な、なぜそれを!?」
私は思わず聞き返した。
この世界の人から出る事のない、言葉だったから。
「え、うそ!?本当にそうなの!?」
「は、はい……」
「てか、腕ないじゃん!シュールだね!あははっ!」
「まぁ、事情がありまして…」
「おい、側から聞いてたら失礼なやつじゃの…なんなら、夜更けに気配を消しながら現れよって…」
コハクが刀の柄を握る。
その気迫に驚いたのか、慌てて話し始める。
「違うんすよ!それはすいません!」
「何が違うのじゃ?事によっては…」
「そのケモ耳と尻尾に触りたくて!つい!」
「……は?」
その場にいた全員が固まる。
私も含めて、言葉が出てこなかった。
「はぁーっ…はぁーっ……へへへへっ」
「お主…なにを…」
「ちょっとだけ、先っぽだけでいいから…へへっ」
コハクが珍しく身を引いている。
タルトーとクベアも状況が飲み込まず、動かない。
ファーネは…まだ寝ている。
コハクを追い詰めるように、詰め寄っていく。
壁際に追い込まれていた。
「お、お主!なんじゃ急に!!」
「少し、少しだ…「こんの馬鹿娘がぁぁあ!!」
「ぎゃふんっ」
頭を思いっきり殴られたのか、その場に倒れる。
倒れたまま、動かなくなってしまった。
後ろから現れたのはセーレン王だった。
こちらが何かを聞く前に、娘を簀巻きにしていく。
「いないと聞いて、探してみれば…(ぶつぶつ)」
あっという間に縛り上げ、抱き抱える。
私たちは、ただただ見ているだけだった。
「本当に申し訳ない、逃げれないように今から牢屋にぶち込んでおくので、安心して休まれよ…明日にまた改めて謝罪させて頂く」
振り返りながら、そう言い残して去っていく。
嵐のような一瞬だった。
残された私たちは、何が起こったのかわからず。
全員が顔を見合わせるが、言葉が出ないらしい。
無言のまま、静かな空気が流れる。
「考えても仕方ない、寝るとしようかの」
「うむ、そうじゃの…明日もあるからの…」
「はい、姐さん…」
「スーピー…スーピー…スーピー…」
「ファーネの奴、よく寝ておれるの」
「仕方ないじゃろ、この旅がこんなに過酷なものになったんじゃからの…」
「「「おやすみ」」」
皆がまた眠りにつくが、私は警戒を続ける。
また同じような事が起きないとも限らない。
それにしても、なぜ私のことを知っていた。
あの人は私と同じ世界から来たのだろうか。
どうやってこの世界に?
まぁ、明日になれば聞けばいいのだから。
それから、陽が昇るまでは何事も起きなかった。
「ふぁ〜あ…あれ…おはよ」
「おはようございます、ファーネ」
「あれ?まだ皆んな寝てんね…?」
「ええ、昨晩に…「じゃあまだ寝とくわ」
そう言ってファーネはまた眠りについた。
どれだけ寝るつもりだろうと感心する。
皆も起きる気配がないので、疲れているのだろう。
昨晩も途中で無理やり起こされたのだから。
私は、起き上がり窓の外を眺める。
窓の外は、朝露に木漏れ日が反射し、幻想的な景色が広がっていた。
「綺麗じゃの」
「ええ」
起きたコハクが、後ろから声をかけた。
何を見ているのか気になったのだろうか。
「綺麗だと思うのか?」
「感情がないので難しいですが、綺麗だと考えることはできます」
「そっか、少し寂しいの…それは…」
「寂しい…ですか?」
「心は、これを見た時に、綺麗以外にも色々な想いが溢れてくるもんじゃ」
「そうですか…それは分かりませんね…」
そう、私に分からないのだ。
わからないから困りもしない。
分からない事を想像するのは、出来ない。
「さて、皆を起こすかの…」
「まだ寝かしてなくていいんですか?」
「う〜む…それもそうじゃな」
今日は、また山に登る事になるだろう。
少しでも英気を養っていて欲しい。
「なら、少し散歩でもせんか?」
「お供致します」
「ふふっ、かたくならんで良いぞ」
そう言いながら、コハクが扉を開けてくれる。
レディーファーストという言葉があるが、この状況でそうはいかない。
軽くお辞儀をし、扉から出ていく。
「んーっ……ふぅー……いい空気じゃな」
大きく体を伸ばしながら、深呼吸をする。
残念ながら、私の装備には空気清浄機能はない。
従って、空気の汚れを検知するセンサーも無い。
「お主には分からんかったかの」
「はい、でもコハクの気分が良くなってるのだけは分からります」
「ふむ、それで良い」
そうして、特に会話らしい会話も無く歩いていく。
木漏れ日が優しく照らし、周囲を輝かせる。
そこにコハクが立っているだけで、絵になる。
私たちの世界でも、売れそうな絵が描けそうだ。
ついそんな事を考えてしまう。
それほどに綺麗だった。
…そう思うのは、感情なのだろうか?
考えてもよく分からない。
木々の間を歩いていると、広場が見えた。
昨日話し合いをした場所だろうか。
机と椅子は見当たらないが。
その中心に誰かいた。
挨拶をしてくるといい、広場に向かう。
コハクが声をかけようと近づいていくと。
そこには、セーレン王が剣を持って舞っていた。
広場に差し込む光が、舞う姿を優しく照らす。
周囲に溶け込むように、自然な動きをしながら。
声をかけようとしたコハクが息を止める。
軽やかに舞いながら、手に持つ二刀の剣を操る。
その姿に心を奪われているようだ。
ただ、一点を見つめて動かない。
「美しい…」
そう、呟く。
向こうもこちらに気づいたのか。
目線が合うと、舞を止めてこちらに近づく。
「おや、おはよう…よく眠れたかい?」
「はい、おかげさまで、ありがとうございました」
「構わないよ…すまないね、娘のことは」
「驚きはしましたが、私は大丈夫です」
コハクは言葉を話さず、微動だにしない。
押し黙るのは珍しいと思う。
一呼吸置いて、声を上げる。
「あ!あの!!」
「はい?」
「さっきの動きは一体!?剣術ですか、舞ですか、なんであんなに自然に溶け込んでおるのじゃ!?」
「あ、えーっと……おほんっ」
コハクが目を輝かせながら、見つめている。
「これはね【剣舞】と言って、剣術でもあり、舞でもあるんだ」
「剣術で舞…ですか」
「そう、“縁は環となりて、巡り巡る。紡がれたるは絆として己が剣を咲かせ、舞い、咲き散らんとす”」
「それはなんですじゃ?」
「私たちはね、縁というものを大事にする。君たちが山を越え、風龍と土龍に出逢ったのも縁。それを、私たちの元へ紡いでくれたのも、サルーンのもたらした縁と言える」
「なるほどの…」
「こうして出逢った君たちが、次の縁を紡いでいく、それはやがて大きな絆となり、力となるだろう。そして、花が咲き散るように遠くと広がり、その地に芽吹く」
「そんな事が広がればいいの」
「この剣もね、柄が紐で繋がっているだろう?私を伝って繋がる縁を形作っているのさ」
いい話だと思う。
私がここに来たのも何かの縁があるのだろう。
それは、ファーネに技術を伝えることで絆が産まれる。
その絆が力となり、皆を助けれたらと。
私がいなくなっても、その絆が咲き続けるように。
「では、舞いは必要はあるのか?」
その質問に、少し悩みながら答える。
「ふふっ、どうだ?私と立ち合ってみるか?」
「え?妾とかの?」
「丁度いい、朝一の運動さ、それに…剣術において舞うことの意味が伝わると思うよ」
「よいのか?妾も弱くはないぞ」
「その方がいい、木刀があるからそれでどう?」
「かまわぬ、よろしく頼む」
そうして、二人の元に木刀が運ばれる。
コハクは長めの一刀を構える。
セーレン王は先程と同じく、二刀を構える。
木刀を持ってきた人が立ち会いをするらしい。
二人は準備運動を行い、指定の位置に立つ。
舞う意味とは。
この立ち合いで分かるのだろうか。
私も端の方で二人を見守る。
これも何かの縁だろう。
そう考える。
第31話ご完読ありがとうございます!
最後の方読みづらかったらすみません!
結構頑張って書き上げました!
伝えたいことや、考えてる事が、上手く文字に書き起こさない事にもどかしさを感じる今日この頃。
まだまだ勉強していきます!
今後も楽しみにしていてください!
また次話でお会いしましょう(^^)