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アンドロイド魔王による異世界での理想郷  作者: ノウミ
ニ章 〜種族連合と戒族の遺産〜
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【第20話】戒族の遺産の在処(前編)

どうも、ノウミと申します。

まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。

沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。


X(旧:Twitter)でも情報更新しています。

↓是非フォローください↓

https://x.com/noumi_20240308?s=21

コハクが試し斬りを終え、嬉しそうにしている。

何かを成し得たのか顔つきも変わったようだ。


手に持つ日本…魔術刀は素晴らしい完成度を誇る。

巻藁を一刀両断したその切れ味もさることながら、ぶれない綺麗な太刀筋も見事だった。


クベアも、同じ技法で作られた刀を貰っていた。

それを見ていたのか、同じく巻藁の前に立つ。

タルトーが見守る中、小太刀を構える。


両刀で使うそうだ。


巻藁に向かって振り切るが、一刀両断とはいかない。

深く切り込むが、途中で止まる。


「えぇ!?どうして!?」


「クベアよ…」


タルトーが呆れた顔を浮かべていた。

コハクも笑いを堪えている。


「もしかして、失敗作とか!?」


「はははははっ!クベアよ、お主は技量不足じゃ」


「同じ刀だからスパッといけないのー!?」


「儂が鍛えてやるから安心せい!!」


「げっ、」


タルトーの訓練は壮絶なものなのか。

苦渋の顔を上げている。


暫くタルトーの特訓が始まった。

腕の振り抜き方や、体の捌き方など。

実践もやり、何度が吹き飛ばされるのを見ている。




「も、もう…だめ…」


限界を迎えたのか、その場に倒れ込む。


「なんじゃ、もう終いかいの」


「妾も物足りんぞ…」


すると、二人は目を見合わせる。

二人でやり合うのかと思いきや、何か話している。

その視線は、ファーネへと注がれたのだ。

もう逃げれない。


「へっ?」


コハクが駆け寄り、肩を叩く。


「ファーネや、これから一緒に山登りをする仲じゃろ?ここで親睦といこうではないか?」


「い、いや…僕は……」


「がはははっ!遠慮するでない、やろうか!」


「いーやぁぁぁぁぁあ!!」


時すでに遅しだ。

見事に捕まったファーネは特訓される事になる。

ギリギリ意識のあったクベアも、その光景を見て思い出したかのように気を失う。


場は阿鼻絶叫の地獄と化していた。

横たわる屍、逃げ惑う女の子、それを笑いながら追いかける鬼が二人。


「まさに、地獄ですね…」


地獄を断ち切るはずが、地獄を作り出していた。

なんとも言えない光景にグロガルも呆れていた。




辺りはもう真っ暗になっていた。

この地獄はようやく終わりを告げる。

周囲に置かれたかがり火に火をつけ、広場を照らす。


「はっ!?」

「へっ!?」


気絶していた、クベアとファーネが目を覚ます。

特訓のせいで気を失っていた、と気づく。


「死ぬかと思ったっすよ!」

「そうだよ!やり過ぎだよ!」

「ほんと加減をしらないんすから!」

「そうだそうだ!ハゲじいと同じやん!」

「鬼!」

「悪魔!」



二人して交互に文句を叫び続ける。


「ほほぉう…まだ気力が残ってあったか…」


「まだ叫ぶ元気があるとは…」


「「 ひっ! 」」


二人の気迫に気押される。

そこからは、押し黙るように静かになる。

これ以上の特訓は命の危険を感じたのだろう。

決して逆らえない二人を前に、拾われた子犬のように震えていた。


「おい、お前ら!飯じゃ!」


奥から、女店主とグロガルが夜食の準備をする為、コンロと食材を持って歩いてくる。

今から外で、食材を焼きながら食べるらしい。

それぞれの肉や野菜、魚などに鉄の串が刺さる。


「さぁさぁ!たんと食べな!」


コンロを設置し、炭を入れていく。

火をつけると上には網がしかれる。

風を送り、火力を上げていく。


炭の匂いと、煙が立ち込めていく。


「私が焼いていくから、好きなように食べさい」


そういうと、網の上に串に刺さった食材を並べる。

炭の匂いに焼けた肉や野菜などの香りが混ざる。

空腹を刺激するような音も耳に入る。


…気がする。

私には“美味しい”が分からない。

食べることを必要としないので、危険を察知するように匂いを拾うが、美味しそうな匂いは分からない。


「すまぬの、世話になりっぱなしじゃ」


「かまいやせんよ、これから大変だろうからさ」


「おい、タルトーや!俺とあっちで呑むぞ!」


「おぉ、グロガル!話がわかるじゃないか!」


「ファーネ?だっけ、ご飯食べに行こうか?」


「そうやな、もうクタクタで腹もぺこぺこや」


皆が思い思いに食事を楽しんでいる。

私はベンチに腰掛け、その光景を眺めている。

火の明かりに照らされる顔は、全員笑っていた。

束の間の休息なのだろうが。

この時間を、全員で暖かいものにしている。


この光景が壊れないように…私はそう願う。


この日は、笑い声が絶えることなく終わっていく。

食事を終えると、店の中に戻り机を囲んで座る。


明日はいよいよ大峰魔山へと入る。

その為に、必要な準備と戒族の遺産について聞く。


「グロガルや…話しの途中じゃったが、山の向こうには戒族の遺産が眠っておるのは間違いないのじゃな」


「うむ、間違いない…あの地には、かつて戒族の国が存在しておった」


「人族に滅ぼされたと言う…?」


「そうだ、その国が山向こうにあった」


手を強く握り、目元を濡らしている。

かつての国に想い馳せているのか。


「じい……」


「俺は元々戒族の国にいたんじゃ」


「確かにそう言っておったの」


「あぁ、これでも竜族の一人なんだが、見ての通りツノも鱗も生えておらん…これで生きづらくてな」


確かにその見た目は竜族とは相違がある。

言われなければ気づかないだろう。


「稀に現れるらしいの…」


「ファーネもその一人じゃ、ツノがない」


「それで、戒族の国へ?」


「幸いな事に、モノづくりの腕には自信があった、そこをたまたま拾われたのじゃ」


「それで、戦争があった時に…」


「そう、二人で戒族の国へ逃げた」


そこからは、戒族でモノづくりをしながら過ごしていたと語る。

まだ幼かったファーネは、戒族の技術に興味を持ち、見よう見まねで真似をしていたそうだ。

その時の記憶と、経験を頼りにしあの腕を作った。

亡き人々を繋ぎ止めるかのように。


「だが、彼の地には何もない」


「え?なんじゃ、言ってる事が違うぞ」


「人族が攻め込んだ際に、全てを破壊し尽くしおったのだ、今は砂漠と化しているよ」


「なら、戒族の遺産は!?」


「地下深くに隠した」


グロガルは、作業机を漁り何かを探す。

戻ってきたその手には、コンパスが握られていた。


「なんじゃこの薄汚れたコンパスは…」


「このコンパスの赤い針が向く方に、地下への入り口が隠されておる」


「おぉ、なるほどの」


「地下への入り方はファーネが知ってる」


「えっ??僕!?しらないよ!」


「行けばわかる、今はそれだけだ…」


「当の本人は知らないと言ってるが…信じていいんじゃな?」


「何を今更、大丈夫だ」


「ええ!?なんだよ!教えてくれよ!」


グロガルは頑なに口を開かなかった。

これから向かう地に、何が隠されているのか。

コンパスだけを渡し、後を託すように。


準備は抜かりなく進めていた。

装備を整え、万全の体制で明日に臨む。

どんな結果になろうとも、進むしかないのだから。






俺に何度もお礼を述べると、宿屋へ戻った。

ファーネにはしつこく、開け方について聞かれたが、答えるつもりはない。

諦めたのか、不貞腐れて自室に戻っていく。


「友よ…すまんな、約束守れそうにない」


「あいつは…お前の面影を探している、これ以上辛い顔を見たくないからな…分かってくれよ」


火を消し、部屋の灯りを落とす。

暗くなった部屋の中で、物思いに耽る。


20話、ご完読ありがとうございます!


これから、グロガルとファーネの過去について触れていこうかと思いましたが、長くなりそうなので一旦ここで切ります!

次話も含めてのこの話です!

よろしくお願いします。


また次話でもお会いしましょう(^^)

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