【第15話】走り続けた先の景色
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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国を出て、ひたすらに4人は走った。
後ろから兵士は追いかけてこない。
それでも、走り続けた。
ただただ、前に…前に。
陽も昇り、いつしか周囲を明るく照らしていた。
それでも走る、考えたくない事があるかのように。
そうして暫く走り、大きな川の前で歩みを止める。
魔の森とは、違う方角から国を飛び出した。
左手には魔の森、右手には平原が広がる街道をひたすらに走り続けたのだ。
限界を超えてもなお、走り続けた。
コハクが歩みを止め、その場に倒れ込む。
周囲には誰もいない。
私たちだけがその場にいた…たった4人だけが。
ずっと抑えていた感情は、もう止められない。
決壊し、押し寄せてくる。
泣き叫んだ、大声を上げた、色々な言葉を吐いた。
私にはどうする事もできない。
なだめることも、共感する事も。
この先の事を聞こうとしたが、聞けない。
ただ、見ているだけしか出来なかった。
誰もいないこの場所で、それは続く。
噛み締めている、彼らのいた時間を、最期を。
しばらくして、落ち着きを取り戻していく。
川のせせらぎと、風のなびく音だけが聞こえる。
それはとても、残酷な程に。
「お主ら……落ち着いたかの………」
誰も言葉を返さない、返せない。
「私は大丈夫です、どこへ向かうのですか?」
「何でそんなに冷静でいられるんっすか!」
「落ち着かんか」
「兄貴がっ!ライタ兄ぃが!!!」
「黙らんか!妾たちが何も思わないと思うか!」
「うっ、」
「クベア…すみません、私には心という物がありません。理解はしておりますが、共感がないのです」
何か言いたそうにしているが、飲み込む。
「わかったっすよ…すまんっす」
「妾こそすまぬ、言いすぎた」
「さて!儂等がここで捕まれば無駄になる!」
「そっすね、……どこに向かうんすか?」
これから、川上を目指して歩いていくらしい。
山の麓に目的地があるそうだ。
コハクは、それ以上何も言わなかった。
4人は再び立ち上がり、歩みを進める。
目立った会話はなく、川の側を歩いていく。
暫く歩き、山へと続く森の手前で休憩にする。
陽が沈みそうになっているので、一晩過ごすそうだ。
道中、追っては来なかった。
準備の為、それぞれが食材調達と枝木を集める。
コハクが火を起こし、食材に枝を刺して焼いていく。
目の前には果物と魚の焼き物が並んでいく。
3人は会話する事なく、黙々と食べ続ける。
私は食べる事ができないので、見ているだけだ。
皆が、食事を終えたところで私は話す。
「すみません、少しよろしいでしょうか」
「ん?どうしたのじゃ?」
「コハクにはお見せしましたが、私が見た映像を記録し、映し出す事ができる機能があります」
「お?なんじゃそれは」
「実際にお見せする方が早いかと、それに…今からお見せする内容は、皆さんに見せたいものですので」
「分かった」
「それでは、ここに映しますので集まってください」
私は一つの映像を映し出す。
ラクーンとライタの最期の映像と…声を。
ー ナディ、すまねぇ…ここでお別れだ…後は頼んだ。お前の中に記録してみんなに見せて欲しい。
おい、見てるか?時間がないので手短にな。
クベア、どうせ泣きじゃくってんだろ?俺が死んでも
強く生きろよ!俺の分まで後の事、頼むわ。
タル爺、今までありがとう、戦い方を教えてくれ色んなことに助けてもらった、道具を握っている時な、側にいてる気がして心強かったんだ。
最後に、姐さ…コハク。今まで俺を、俺たちを守ってくれてありがとう。何度も押しつぶされそうになってるの知ってたんだ、慰める事ができないので見てるだけだったけど……それでもそんな姿に憧れてここまで来れたんだ、ありがとう。
最後に守る事ができてよかったよ、預かった命は返すつもりないぜ?半分はナディに、半分は俺があの世まで預かってるからさ、いつか取りに来てくれよ。
俺たちの思いが成し得た、土産話と一緒にな。
みんな、こんな最後だけど…今までありがとう。
行けぇ! ごほっ… ナディ!
僕の言いたい事は…友と同じだよ、時間がないしね…
頼んだよ、みんなの事 ー
ここで映像が切れる。
誰もが泣いていた、泣き尽くしたはずの瞳から。
大粒の涙を溢しながら。
コハクが空を見上げる。
「馬鹿者が…自分で返しに来い……自分で」
「がはははははははっ…がはははっ…」
「兄貴ぃ、兄貴ぃ、会いたいよー!」
「えらいものを貸したの!コハクよ!はははっ!」
「そうじゃな…このままでは、返してもらえんな」
「兄貴の思い!俺が受け継ぎます!」
「その意気じゃ!クマラ!!」
タルトーが両肩に2人を抱え、大きく笑う。
静かな夜に響き渡るその声が、彼らに届くように。
3人は疲れたのか、安らかにそのまま眠りにつく。
私は3人を見つめながら、周囲を警戒する。
眠る必要のない私に出来る事だから。
エネルギー残量にゆとりはあるが、体の方が限界を迎えそうだ、これからどうしよう。
設備もなければ、材料もない。
おまけに、腕すら無くなっているのだから。
「私は、この人たちについて行けるのだろうか…」
せめて、邪魔にならないようにしよう。
戒族の遺産とやからが、解読さえ出来れば…私は…
気づけば朝を迎えていた。
追手が来る事もなければ、魔物の襲撃も無かった。
昨晩は平和な夜だった、あの戦いが嘘のように。
「…う…む……ナディ、起きとるか?」
「はい、おはようございます」
「すまぬな…ありがとう。問題なかったか?」
「はい、平和な夜でした、睡眠を必要としない私に謝辞は不要ですよ」
「…ありがとう」
「いえ、とんでもな…」
「違う、あの映像の事じゃ…ありがとう」
「お役に立てて何よりです」
「さぁ!2人も起きんか!行くぞ!」
2人は叩き起こされ、目を覚ます。
皆は、近くの川で顔を洗い整える。
十分に睡眠もとれたようだ、昨日とは違い、晴れやかな、何かを決意したような顔つきをしている。
私もこの身が朽ちる、その時まで側にいよう。
迷惑かもしれないが、私にもできる事はある。
まだ壊れるわけにはいかない、修理する事も何か方法があるかもしれない、諦めるのはまだ早い。
この世界で知らない事は、まだまだ多いのだから。
私にも託されたのだ、彼らの想いを。
心はなくとも、考える事はできる。
一歩ずつ歩みを進めながら。
その後、森の中へと入り山の麓を目指す。
中では魔物と遭遇する事も少なくない。
コハクとタルトーが順調に倒していく。
クベアは私のことを守っていてくれている。
道は険しく、楽とは言えない。
持っている装備も損傷が激しいようだ。
できるだけ戦闘は避けたいのだが、私のセンサーが使えない以上、周りを警戒する事しか出来ない。
「おーい、コハク、どれぐらいかかる?」
「すまぬ、妾も又聞きの情報ゆえ方角しかわからん」
「ええっ!?そうなんすか!」
「うーむ…ライタの置き土産という訳じゃな」
「妾に、作戦決行の前の晩に教えてくれたのでな」
「で?何に向かっておる?」
「………」
「おーい、聞いておるのか?」
「しっ…!」
「どした?」
「クベア、ナディ…離れるでないぞ」
「おいおい、目当てのもんが現れたか?」
奥から木々の擦れる音がする。
足音がこちらに近づいてくる。
「魔物ではないのぉ?ん?コハク、どうした?」
何かが勢いよく飛び込んでくる。
コハクが前にでて、飛び込んできた何かを抑える。
衝突の際、金属のぶつかる音がする。
途端に、コハクの剣が折れ、刃が茂みに飛んでいく。
「ちっ、限界かの……」
「コハク!下がれ!儂が出る!」
「大丈夫じゃ!構わん!……のう?竜族の者よ」
「んおぉ!?おぉぉぉぉぉぉおお!?」
「いやーーー!はっはっは!お久しぶりですな!」
どうやら、目的の地とは竜族に会う事らしい。
彼は笑いながらこちらを迎える。
初めて出会う、彼が竜族…。
第ニ章 第15話ご完読ありがとうございます!
第ニ章の始まりとなりますので、少し短め?です。
悲しみにを乗り越え、新しい種族との出会い。
益々物語は面白くなるでしょう!!
今後も乞うご期待です!!
次話でもお会いしましょう(^^)