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アンドロイド魔王による異世界での理想郷  作者: ノウミ
終章 〜戦争と理想郷〜
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【第100話】ナディVS名前のない怪物

こんにちは、ノウミです。


たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。

これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。


皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、

一層精進してまいります。


どうぞ、これからもご期待ください。

先ほどから地面から伸びる赤黒い腕や、空から降り注ぐ溶岩は勢いを弱める事がない。幸いな事に溶岩を吐いている間は常に上を向き続けているので、こちらに視線が送られる事も、それ以外の攻撃が来る事はない。


とはいえ、この物量はかなり驚異的だ。


アレクが遠くの方へと走っていき、位置取りをしたのは確認できていた。後は方法は分からないがこの怪物の体を一気に冷やしてもらい、私たちの攻撃を通すことが出来るのかどうか……。


正直まだまだ不安も残るがやるしかない、少しの可能性かもしれないがそれに賭ける。先ほどから何度か刃を振り切っているが傷一つつく様子がない、コハクも同様に攻めあぐねている。


「出来れば早くして欲し……[おい何してやがる、俺と変われよ]」


暫く大人しくしていると思っていたが、この場面で出てくるとは。体の主導権を奪われるような気配はないが、このまま出てこられるとコハクやアレクと共倒れに巻き込む可能性がある。


「大人しくしていてください」

[硬いこと言うなよ、俺にもそのおもちゃで遊ばせろ]

「何度も言いますが、貴方の出番はありません」

[はっ、そう言っていられるのも今のうちだぜ?]

「それってどういう……」


そう聞き返したのを最後に声はまた聞こえなくなり、意識を取られている隙に溶岩を当てられていた。左腕に貰ってしまったがそこまで影響はない、問題なく刃も動かせている。


「お主、気を抜くな!」

「わかってます」


そうしていると、遠くの方でアレクが鎌を大きく高らかに掲げてその周囲に冷気のようなものが漂い初めて、鎌を氷が包み巨大な氷の鎌へと形を整えていた。


流石にあそこまで目立つようなものを作れば怪物の意識も変わる、口を閉じ溶岩の吐き出しをやめていた。その視線は真っ直ぐにアレクを捉えている。


私とコハクはこれ以上進ませないように、攻撃の手が緩んだこの隙を狙って連撃を叩き込んでいく、すると一瞬ではあるがその頭部が見下すように私たちに向けられた。


「はっ、所詮は怪物じゃの…知能も無いのか」

「頼みましたよ、アレク」


アレクが掲げる巨大な氷の鎌を大きく振りかぶり、その大きさをものともせず振り回す。一回目の振り回しで怪物に向けて扇状に地面が凍り始めた、私はコハクに咥え上げられ巻き込まれないように高く飛び上がりそのまま距離を空ける。


アレクはそのままもう一回転体を捻りながら氷の鎌を振り回し続ける、遠心力で速度と威力を上乗せさせているのだろう、その勢いのまま怪物に向かって飛び出し氷の鎌で斬り込む。


足元を凍らされて身動きの取れなくなった怪物はそのまま受け入れるしかない、直撃した場所から一気に水蒸気が噴き出す。私とコハクは離れた場所から次の攻撃タイミングに備えて見守る。


その瞬間に爆発のような衝撃が巻き起こり水蒸気が辺りに立ち込める、アレクが吹き飛ばされるのが確認できすぐにでも追いかけたいがこの機を逃すわけにはいかない、コハクと共に怪物に向かって走り出す。その巨体は水蒸気に覆われてしまって確認できないが、アレク作ってくれたのだ。「コハクっ、行きます!」


コハクが刃の横面に飛び乗り、私が勢いよく振り切り投げ飛ばす。投げ出す拍子に刃を蹴り上げたのだろう、衝撃に耐えながら送り出す。


私はその場に留まり足元からアンカーを射出させ、体を固定させる。王燐に放ったあの一撃をもう一度お見舞いさせる。


飛び出したコハクは吠えながら怪物に向かって一直線に飛んでいく、その姿から金色の炎を吐き出し勢いは増していく。まるで一筋の彗星のように煌めきながら。


雷龍王(らいりゅうおう)超電磁砲(レールガン)

炎狐(えんこ)金木星きんもくせい


水蒸気が晴れた頃、私とコハクの渾身の一撃が怪物に襲い掛かりその体を捉える。目論見通り冷やされた体は硬度を失い体に大きな風穴を二つ空け、さらに追い打ちをかけるようにコハクが巨大な金色の爪を腕から伸ばし、発現させる。その振り下ろされた爪は怪物の体を割き斬る。


私も刀に雷を纏わせ、走り出しながら巨大な刃へと伸ばし、割き斬られた後に最後の一閃を振り抜きその怪物を一刀両断する。


「ウボォァァァアアアアアッァァァアアアッッッ!」


最後の足掻きだろうか、足元から黒い腕が伸び上がり私に向かって襲いかかる。それを片っ端から切り落としていくが、何発か殴られた後に締め上げられる。


遠くに視線をやるとコハクも同じくこの黒い腕に捉えられていた、必死に抵抗しているがその度に捉える腕が増えて最後には完全に身動きすら取れなくなっていた。「くそっ」こんな所で倒しきれなかったとは、あそこまで斬り崩してもこの怪物は最後の最後に力を残していたのだ。


崩れゆく怪物を眺めながら、私は右腕に力を溜め込んでいく。捕まり覆われた腕の中で今出来ることを考えて行動に移す。


塞がれた銃口から[雷砲撃(サンダーキャノン)]を思いっきり放ち、行き場をなくしたその砲撃は銃身の中で溜まり大きな爆発を巻き起こす。掴まれていた腕ごと吹き飛ばし、その衝撃で私の左腕も吹き飛んでしまったが、拘束から逃れることは出来た。


そうしていると、コハクを捉えていた腕も音を立てて崩れ落ちていった。


時間切れだろうか、周囲に轟く断末魔と共にその体は崩れ落ちていく。巻き込まれないようにと距離を取りコハクが近づいてくる、「終わったのかの?」「そうですね」崩れたその怪物は土塊となり、黒い石の山が出来上がっていた。


コハクは姿を元に戻しその場で倒れ込む。そのまま、空を見上げて笑い声をあげていた。「はははっはは」私はこの瞬間に笑うことの意味が理解できていなかったが、悪い気はしなかった。「おぉーっい!!」遠くからはアレクが手を振りながらこちらに向かって歩いており、その姿も元に戻っていた。


「アレク無事で……」アレクの姿を見て安心したのか、その瞬間に全身の力が抜けたような感覚に襲われる。指先を動かそうとするが反応がない、もしかしたらエネルギーが切れたのかと思ったが、今の私にその心配はないはずだった。


次の瞬間、コハクに向かって刀を振り構えているその姿に理解をする事も出来なかった。動かすことも、争うこともできずに左腕が自然と上へと持ち上げられて、コハクの上で静止する。「ナディ?何しておるのじゃ」返答する事も出来ない。何が……。


[はははっ、久しいな]


そう言いながら私の中に奴は現れた、ノイズだ。


「何の用ですか?」

[そう言うなよ、俺とお前の仲だろ?]

「そんな仲ではありません、出て行ってください」

[俺に行き場所はないよ、ここだ]

「仕方ありません、後のことはもう大丈夫でしょうから私は自壊するとしましょう」

[出来ると思うか?]

「やりますよ」


私は自分の腕からコハクの首を狙って振り下ろされた刃を寸前で止める、なんとか腕は止まったが依然としてノイズはこの体を動かそうと抗っている。そこにアレクが駆け寄ってき、コハクを引きずり出したので誰もいなくなったその場所に刃を振り下ろす。


地面に深く突き刺さった刃は簡単に抜けなくなった、おかげで私も身動きが取れなくなる。右腕は先ほど失ったところだ。これでノイズに体を乗っ取られてもろくに動けもしないだろう。


「お二人ともすみません、どうやら私はここまでのようです」

「まさか、前に言っておったノイズかの?」


コハクはアレクに肩を借り、立ち上がりながら私に問いかける。最後に言葉をかわせるのはここまでだろうから、伝えたい事は伝えておきたい。


「はい、そうです。この弱ったタイミングを狙われたようです」

「何とか出来んのか?」

「すみません、どうやら厳しいようです」

「な、何の話だよ?」

「アレク、急ですみません。私の体は今別の人格に乗っ取られそうになっていると思ってください」

「それが何なんだよ?」

「その人格は貴方たちを含めて、この世界を破壊し尽くそうと動きます。その前に私が……」

「なっ、」


徐々に体の抵抗が効かなくなってきた、地面に突き刺さったままの刃を抜こうと腕に力が入り、少しずつ地面から刃が抜かれていく。


「時間がありません、後のことは頼みました」

「まて、何か別に方法があるじゃろう!?」


[させるかよ!せっかく表に出てこれたんだから!]


私は自身の中に眠らせていた機能の一つへとアクセスする、自壊プログラムだ。これを起動させ自身の中のシステムとAI、そして人工魔心すらも、残った全ての(エレクト)を体内で増幅させ循環させながら焼き壊していく、その影響で周囲に爆発を巻き起こしてしまうので、それを告げてここから去るように告げる。


「と、言う事……です…早く」


会話すらおぼつかなくなってきた、すぐにでもプログラムを起動させなければ本当に間に合わなくなる。これ以上は余裕がない。


「早くっ、行って……」

「くそぉっ、」

「行きましょう、コハクさん!」



「コハク、今までありがとうございました」

「一生許さぬからの」


ここまで短いようで長かった、突如として異世界に喚ばれ様々な人たちに救われた。最後の最後にアンドロイドロボットとして、誰かのために動く事ができ本当に良かったと思える、正直に言えば街の事も皆の事もこれからの理想郷としての形、発展を見ていたかったと思うがそれは望み過ぎだろう。生き方を示してくれた皆には、これ以上ないぐらい感謝しているのだから。


そうして、コハクを抱えながらアレクが遠くの方に消えていったのを確認してから、起動させる。


-ジカイ プログラム キドウ-


[や、やめろ、な?考え直せよ!]

「あぁ、ノイズ…まだいましたか」

[ほら、他にもあんだろうがよ!」

「いやいや、これしかないでしょう」

[悪かったって、共生しようぜ?なっ?]

「ありえませんね」

[ほら、何かを壊すって楽しいぜ、やってみるか?]

「それこそ、ありえませんね」


体中から放電が始まった、体が熱を帯び始めたのかオレンジ色に光り始める。これでいい、抗ったところでノイズは諦めることなく付きまとうだろう、それにこのままでは飲み込まれる危険性の方が高い。


次第に放電の量は増え始め体は赤く光っていた。


「最後が貴方と一緒とは……」

[ふざけるなよ]

「そういえば、もう一人の人格らしきものはどうなりましたか?」

[俺が知るかよ]

「そうですか」



そこで私の意識は途切れた……。

ご完読、誠にありがとうございます。


今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。


これからも応援よろしくお願いいたします。

また次話でお会いしましょう(*´∇`*)

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