【第8.5話】弱者と光の力
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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気がつくと俺はベットの上にいた。
身体を起こし、辺りを見渡すが見慣れない景色だ。
「そっか、異世界に来てたな…それで、俺は…」
また俺は負けたのか。
元の世界でも負けて、この世界でも負けて。
負け続けた……。
「くそがぁぁぁぁあっ!!」
手元にあった枕を壁に投げつける。
すると、部屋の扉が開く。
「王燐様、お目覚めになられましたか?」
メイドの女が部屋に入ってくる。
「ホウキ様を、お呼びして参ります」
俺のことを確認するなり、部屋を出ていく。
暫く、静かな部屋の中で横たわっていた。
また部屋の扉が開くと、今度は食事を持ったメイドと一緒にホウキが入ってくる。
メイドは部屋のテーブルの上に食事を置き、部屋を出ていく。
部屋にはホウキと2人だけにされる。
「…体、大丈夫…?」
「ちっ、うるせぇよ…」
「…負けた…お前、弱いね……」
「あぁ!?負けてねぇよ!まだやれんだよ!」
「負けて、気を失って、運ばれた…お前は負けた…」
「何しにきたんだよ!出てけよ!!」
「…王の命令、私がお前…鍛える…」
「いるか!んなもん!俺1人で十分だ!」
「このままじゃ…死んじゃうよ?」
強がってはいるが、奴の言う通りだ。
これから戦おうとする他種族は、魔物よりも強い。
その魔物にすら歯が立たないのだから。
力の使い方も、戦い方もなにも分からない。
この世界でも弱者なのだと、思い知らされた。
「…言った、王の命令…私の意思ではない…」
「…」
「お前が死のうと、私が王の野望を叶える…」
「…」
「……お前の力があれば、楽になる、事実…」
「…」
「…どうする?やるの?やらないの?」
「………王燐…だ…」
「…なんて言った?」
「"王燐"だっ、つったんだよ!"お前"じゃねぇ!」
「……嫌、お前は、お前…名前で呼んでほしければ、それぐらい強くなれ…お前」
「ちっ、やってやるよ…絶対名前で呼ばせる!」
「…ふふっ……無理」
不意にも笑うと可愛かった。
いつも無表情で、無愛想なくせに。
俺は、絶対にこいつを越えると誓う。
こいつに鍛えられて、この世界で強くなる。
もう弱者にならない為にも。
「この後、修練場に案内する…ご飯食べて…」
「お、おぉ…う」
急いでテーブルの上に置かれたご飯を食べる。
食べ終わると、用意されていた服に着替える。
2人で部屋を出ると、急ぎ足で修練場へと向かう。
城から出て、内隔壁の内側にある修練場に向かう。
ここでは、様々な人たちが鍛錬に勤しんでいるらしい、修練場に入ると皆が声をかける。
「おはようございます!」「ホウキ様!」「また稽古つけてください!」「次こそは一本取ってみせます!」「ホウキ様!今日もお美しい!!」
奴は皆から慕われているらしい。
手を振りながら、軽く会釈をし進んでいく。
「…練習、ご苦労…頑張ってね…」
「「「「「 はいっ!!! 」」」」」
まだ周囲はざわついている。
どうやら、俺にも原因があるらしい。
胸糞悪い、刺さるような視線を向けられている。
ホウキの前に、細身の男が立ち塞がる。
男のくせに長い髪を揺らしながら。
「ホウキ様、よろしいでしょうか」
「おっ、トリト…いいところに…」
「単刀直入に伺います、隣のこいつはなんですか?」
敵意を剥き出しにし、尋ねている。
先ほどの視線から我慢の限界が来ていた。
「んだてめぇ!やんのか!!」
「弱い犬ほどよく吠える…身の程知らずが…」
先程まで押さえていたであろう殺意を向けてくる。
俺は悔しくも、その殺意に気押されてしまう。
「はい、終わり…そこまで…」
「はっ…失礼しました」
「トリト…こいつを鍛えてあげて?」
「あぁ!?なんでこんなやつと!!」
「大変不本意ですが、こいつと同感です」
「私じゃ…実力が離れすぎている、鍛えれない…」
「こんなやつを鍛えて何の意味が?」
「ちっ…またこんなやつ…だと?」
ホウキは説明を続けた。
俺が光の力を持った異世界人であること。
俺の力を解放する為に、鍛える必要があること。
王から直々の命令であること。
「かしこまりました…俺のやり方で、任せてもらいますよ?」
「…ん…大丈…夫。信頼、してるから…」
そう言い残してホウキは去っていく。
修練場には俺1人だけが残された。
周りには、敵意を向けてくる奴らだけだった。
目の前の奴は、誰よりも濃い敵意を向けて。
「木剣だ…持て」
こちらに、木剣を投げてくる。
受け取ると、さっそく実践訓練を始めるようで、構えるように言われる。
「殺すつもりで来い…どうせ殺せない…」
「てめっ…絶対泣かす」
木剣を片手にトリトまで一気に駆ける。
大きく振りかぶり、顔面目掛けて振りかぶる。
「吠えるなよ、ガキが…」
俺の木剣が弾き返される。
弾き返された勢いで、後ろに仰け反る。
体制が崩れたところを狙われて、そのまま腹部へ強烈な一撃を見舞われる。
「がはっ!…ごほっ、ごほっ…」
「これが剣なら、死亡…」
腹を抱え、痛みに耐える。
反応できなかった、気づいたら腹に入ってた。
「立て、クソガキ…こんなもんじゃねぇぞ」
こんなやつから、クソガキ呼ばわりかよ。
ふざけんなよ、弱いままで終われるかよ…。
「色んな呼び方で、言いやがって…まだだ!」
俺は立ち上がり、もう一度構える。
腹に痛みは残るが、それ以上に怒りが込み上げる。
「俺はホウキ様ほど優しくはない、徹底的にぶちのめしてやる。強くなりたきゃ勝手にしろ、俺たちは、お前を認めない」
今度は奴から駆け寄ってくる。
低姿勢のまま、かなり速く迫ってきた。
あまりの速さに反応が遅れる。
速さを乗せた剣で、下から切り上げられる。
手に持った木刀で防御をするが、力で負ける。
顎にまた一撃、喰らってしまった。
意識が飛びそうになる…目の前が揺れる。
痛みと、揺れを抑えながら後退りする。
「て、てめぇ…」
何とか意識を保ち、もう一度構える。
構えると同時に奴は、目の前にいた。
すると、こちらの反応もできないうちに3回切りつけられた、次は反応すらできなかった。
「ちなみに、今の連撃は6回だ…」
倒れ込む俺に、吐き捨てるかのように置いていく。
「瞬発力も、力も弱い…攻めも防御も拙い。おまけに反応すらまともに出来ずにいてる」
くそ、手も足も出なかった。
薄れゆく意識の中で、己の未熟さだけが残る。
「おい、立てクソガキ」
胸元を引っ張り、こちらを睨みつけてくる。
「…(ごほっ)…な、なんだ…(ごほごほっ)…」
「いいかよく聞け、王やホウキ様からどんな話を聞いてるか知らねえが、光の力とやらがどんなものかは俺たちは知らねぇ」
「お、俺だって…(ごほっ)…しらね…」
「そんな力など無くとも、他種族との戦争は俺たちが支え続けてきた。クソガキの力なぞ求めてない」
好き勝手言われ放題で、何も言い返せない。
身体を起こすことすら出来ないのだから。
「分かったらここでくたばってろ、クソガキにできる事なんざねぇんだからな。ホウキ様には俺からしっかりと伝えておくよ」
胸元から手を離し、俺を地面に叩きつける。
「使えねぇクソガキでしたってな…」
木剣を2本拾い上げると、出口に向かって歩く。
やつの言う通りだ、ここでも強がった。
力の事も何も分からず、ただただ。
また負けた…また負け…また負け…また……ま…
意識が完全に消えた瞬間、全身が熱くなった。
何かが身体中を駆け巡る。
身体中の熱さと、身を裂く痛みで意識が戻る。
(熱い!痛い!熱い!痛い!熱い!痛い!)
何も出来ない、声もあげれない。
ただただ身を灼き焦がす何かが駆け巡る。
(あつい!いたい!アツイ!イタイ!アツイタイ!)
トリト含め、修練場にいた全員が異変に気づく。
「トリト隊長!あれは一体!?」
「…知らん」
(あぁぁぁぁぁあっ!おぁぁあ!!あぁっ!!!)
「なんかおかしいですよ!隊長!!」
「全員構えろ!!勝手に殺すわけにはいかん!」
「「「「「 はっ!!! 」」」」」
何で俺ばっかりこんな目に遭わなきゃならねぇ。
昔からそうだった上手くいったと思えば、それ以上の存在に全部、獲られていく。
金や名声、女も、全て…何もかもを。
(チカラガホシイ…ダレニモマケヌ…チカラガ…)
(力が欲しい!奴らを見返す!認めさせる!)
(スベテヲ…ホロボスチカラヲ…ヒカリヲ…)
(俺に逆らう奴は全て滅ぼす!光の力とやらで)
「あぁぁぁああああっーーああぁあ!!!!」
「来るぞ!備えろ!」
目の前には、剣をこちらに構えた奴らが広がる。
いつの間にか立ち上がっていたようだ。
視界が広い、音もよく聞こえる…気配すらも。
身体を見ると、全身に光のあざが広がっていた。
灼きつく痛みはこのあざから来ていたようだ。
「頭が冴えている、お前らの顔がよく見える…警戒してるな?俺のことを…」
「さっきまでとえらい雰囲気がちがうじゃねえか、オムツでも取れたか?クソガキ」
「トリト……」
俺は、木々の間を優しく散歩するように歩いた。
トリトを含め、剣を構えた人たちの間を。
すれ違いざまに、トリトから木剣を一本抜き去る。
「!?」
「反応…できていなかったな?」
「調子に乗るなよ!クソガキが!」
剣を構え、俺に振りかぶってくる。
先程までは何も見えなく、反応できなかったが、今は違う。鋭い剣筋がしっかりと見えている。
剣筋をかわし、木剣と腕に力を込める。
木剣が眩く光り始めた。
(これが、光の力か…)
ゆらめきながら奴の腹をめがけ、腕を振り切る。
奴の腹を捉えた、骨の軋む音だけが聞こえる。
静かに、ゆっくりと木剣がめり込む。
振り切った衝撃で、修練場の窓が吹き飛ぶ。
ようやく音が戻ってきた。
窓の割れる音、周囲がざわめく声、奴の悲痛。
とても心地よく静かに、染み込んでくる。
木剣が手から離れる。
気づけば、背中は地面と接し天井を見ていた。
指一本動かせない。
俺は、眠るように…静かに目を閉じる。
目を開けた時には、2回目の天井が目に入った。
どうやら、寝室に運ばれていたらしい。
ほとんど記憶がない、何も思い出せない。
奴に叩きのめされた事は覚えているが。
「……やぁ…目が覚めたね?」
声の方に顔をを移すと、ホウキとトニトがいた。
トニトは腹に包帯を巻いていた、少し苦しそうな表情を浮かべている。
「…覚えているかい?さっきの事?」
どうやら、数時間ほど寝ていたそうだ。
だが何も覚えていないと伝える。
覚えているのは、トニトに叩きのめされ、現実を突きつけられた事だけだと。
「そっか……トニトから話を聞くといいよ…私は、報告があるので、これで失礼するよ……」
部屋に残されたトニトに事の経緯を聞く。
光の力について、あの時の状況、腹の包帯など。
「そっか…その力があれば…俺は強くなれるのか」
先程までの悔しかった気持ちを握り潰すように、拳を強く握る。
「…伝えたからな、俺はいく」
「また、修練場に行ってもいいか?」
「………好きにしろ、クソガキ」
扉を静かに閉め、部屋を出ていく。
新しい目標ができた、俺の目指す理想郷に向かって行くのに必要な、この光の力を使いこなす。
その日までは…弱者で構わない。クソガキでも、お前でも構わない。
いつの日か、果たしてやる。
第8.5話のご完読ありがとうございました!
8話と9話の間の話となり、王燐視点でした。
お互いの動きを追いながら、作品を楽しんでいただければと思います。
少しずつ、キャラも増えてきたので、キャラクターの紹介など作れたらなと考えています!
また次話でもお会いしましょう(^^)