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アンドロイド魔王による異世界での理想郷  作者: ノウミ
終章 〜戦争と理想郷〜
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【第98話】合流

こんにちは、ノウミです。


たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。

これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。


皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、

一層精進してまいります。


どうぞ、これからもご期待ください。

懐かしいお父様の声がする、無惨にも人族の手によって帰らぬ人となってしまったお父様。

今もなお囚われ、解放したかったのじゃが…妾では無力にも届かなんだ。


暗く沈んで落ちていく意識の中、そんなことを考える。最後の爆炎に包まれたこの身は終わりを告げたのだろう、その証拠に聞こえるはずのない声が聞こえる。


(お父様…妾は……)


「諦めるな、俺はここにいる」


おもむろに上げた手を、誰かが暖かく掴んでくる感触があった、その声に誘われるように重く暗い意識の中を這い上がっていく。


引き上げられたその瞬間、妾の意識が戻ってきた。見上げた空は大きく広がり、辺りには戦闘音が変わらず響き合っていた。全身の激痛と軋みに耐えながら体を起こす、目の前には変わらずムゴクが立っていた。


状況が変わっていないところを見ると、意識を失っていたのはほんの数秒の事なんだろう。


「お父様……そこにいるんじゃな…」


あの声と暖かい感触は間違いなく本物のように感じたの、そしてそれは私を深い意識の底から掬い上げてくれた。やらねばならぬ、意識を落としてる暇はない。


再び刀を握り、身の前に構える。


「我、狐火を纏し者なり」


再び炎を発現させ羽織に袖を通していき、全身に炎を巡らせていく。

ムゴクも焦って様子で、先ほど妾に放った爆炎と同じく手の上に炎を集めていた。


「狐火をくべ、炎を宿す」

さらに炎の勢いは噴き上がり、天にまで昇るほどの火柱を体から勢いよく放つ。

「その炎は業炎たりて、この身焦がさん」

荒々しく噴き出していた火柱は、徐々に形を円形に留め細くなっていく。

「この身焦がしたる業炎、龍のもたらしたる焔」

次第にその火柱は龍の形へと変わる。

「故に豪炎龍焔(ごうえんりゅうえん)、このひと時を共にゆかん」

竜の形を模した炎は刀に集まっていく、その刀を鞘に押し戻している。鞘の中に龍を押し込めるように、反発する力を押し戻すように力強く、戻していく。


甲高い音が鳴り、完全に鞘の中に収まる。先程まで荒々しく暴れ回っていた炎の龍は姿を消し、残されたのは優しく燃える火の羽織だけだった。


先ほどまでと違い、静かな時間が流れる。


左手で鞘を右手で柄を握りしめ、を屈めて下半身をバネのようにし力を溜める。


その瞬間、前方から爆炎暴渦とやらが放たれた。


構わずにその中へと飛び込む、先程までとは違い全身の火力を上げているので耐えられないことはない。それでも所々が焼けるような痛みがある、爆発には巻き込まれないように隙間を見極めながら駆け抜ける。


なんとか耐えきり爆炎を抜け、その先に見えるはムゴクの姿。しっかりと捉えて逃がさないように、その勢いのまま走り寄る。


親指で軽く刀を鞘から離す、隙間から溢れそうになる炎を抑えながら目を見開きムゴクを見据える。


「ふぅー、[狐月流 終ノ太刀 業炎滅閃]っ!!」


吹き出す炎の龍に勢いを乗せて爆発的な一閃を抜き去る、放たれる炎の刃はムゴクを捉えて胴体に斬り込む。


龍の炎が喰らいつき刀の勢いを落とすことなくそのまま体を両断、激しく燃え上がる胴体と喰らいつき離さない炎の龍が身を焦がしていく。


「ぐぁぁぁぁあっ!!!」


「灰燃ゆる業炎、龍と共に散るがいい」


「ぎざまぁぁぁぁあっ!!」


斬り飛ばしたはずの上半身から炎が集まる気配が感じた、そこを逃さずにさらなる追撃の一閃で斬り上げる、刀の先から飛び出した炎の龍が飛び上がり、天高く振り降りる。


辺りは炎の海となり、ムゴクを燃やし尽くしていく。


刀を鞘に納め、甲高い音と共に炎が消える。その場に残されたのは真っ黒な灰だけだった。


「お父様…ありがとう」


灰を背にして想いを馳せる、死ぬ寸前まで追い込まれ意識が消えた中でお父様が引き戻してくれた。勘違いだったかもしれないが、そうではないと信じれる懐かしい声や、暖かい手の感触がこの中に残っている。


それだけで十分だった。


『強くなったな…コハク』


「っ!?」


思わず振り返ったそこには、いるはずのない姿が見えていた。ナディから話は聞いていたが、どこか信じきれずにいた。


「お…お父様……」


『あぁ、久しいな』


「お父様!!!」


思わずその胸に飛び込む、ずっとこうしていたかった。叶わずいた時間を埋めるかなのように、この刹那の時間を永遠に感じていた。


『すまないな、苦労をかけた……』


「そんな、妾が弱かったから!」


『娘に、何も残せてやらなくてすまない』


「妾は…妾は……」


『おかげさまで、これを託せるようだ』


そつ言うと懐に入っていた黒い箱の鎖が崩れる音がし、取り出すと箱を開ける事が出来ていた。中から取り出された魔王心は、温かみを取り戻し脈を打ち始める。


「お父様…これが……」


『あぁ、待たせてしまったね…色々話したいことも多いがどうやら時間がないようだ』


「そんな、お父様!!」


『散々苦労をかけたと思う、こんな父親ですまない。それでも心から愛していた事に変わりはないよ』


「お父様っ、妾も、妾も…愛しておりました。お父様がお父様で本当に良かったと、心から……」


そうして、最後に笑い顔を浮かべながらゆっくりと姿を消していった。一人残されたが、不思議と寂しい思いはなかった。


「お父様、どうか…ゆっくり休んでください」


手に持つ魔王心を胸に押し当てて、ゆっくりと体の中に入っていくのを見ている。完全に体の中に入った頃、本当の意味でお父様の想いを受け継いだのだと、全身で感じる事が出来た。


王ではなくなってしまったが、それでも残された獣族を率いる者として、この魔王心に恥じないように生きていこう。その為には、この戦争を終わらせなければ。


そうしていると、周りからエルフ族や竜族たちが駆け寄ってきていた。どうやら、無事に切り抜けてきたようで安心した。


「さて、どこに行こう……」


すると、遠くの方で今までの中で一番大きな戦闘音が響いている方角があった。


「皆、次はあの方角に向かうぞ!」


「「「 はいっ!! 」」」


熱くなった胸に安心感を覚えながら、皆を率いて走り始める。無事でいる事を願いながら足を踏み出し音の方へと向かって行く。


「おっ!?」


すると、その音に誘われるようにアレクとクベアが合流する事になった。上の方にはジャスティスの姿も見えており、ナディ以外が無事なんだと取り敢えず安堵する。


「無事であったか!!」

「姉御ぉっ!ご無事で!!」

「へへっ、当たり前よ」


こちらを見たジャスティスが、焦りながら勢いよく飛び降りてきた。


「みなさん、ご無事で何よりです!」

「お主ら怪我酷いの、大丈夫かっ!?」


「そ、それよりあちらの方角で魔王が激しい戦闘を繰り広げており、決着がついたかと!」


「そうか、向かうぞ!!」


そうして走り始めると、向こうから走ってくる一つの人影とその後ろに複数の集団が見えた。敵が味方か判断をするよりも前に、見に纏う装備で魔王ナディたちだと気がついた。


「無事じゃったか!」

「皆さん、ご無事で何よりです」


そうして合流した妾たちは喜びを分かち合いたい所ではあるが、互いの状況を確認し合う。それぞれが八獄衆とぶつかり合い、見事に勝利を収めたと。


「ご苦労じゃった…」

「ええ、皆さんお疲れ様でした」


誰もが静かさの漂うこの国の中心で戦争が終結したと感じていた。


そう、あやつが現れるまでは。

ご完読、誠にありがとうございます。


今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。


これからも応援よろしくお願いいたします。

また次話でお会いしましょう(*´∇`*)

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