【第97話】コハクVS
こんにちは、ノウミです。
たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。
これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。
皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、
一層精進してまいります。
どうぞ、これからもご期待ください。
ー 時は遡り
ナディ曰く、妾の父上がこのどこかにいるとの事じゃった、今もなお囚われて利用されているのであればすぐに解放してあげたい。これ以上、人族のいいように利用されるのは我慢ならん。
森を抜けて城壁に大砲を撃ち込み中へと侵入していく、しばらくそれと同時に各方角から同じような音と、戦闘音が聞こえてきていた。
「妾たちも遅れをとるわけにはいかぬ」
どこかに合流しようかと考えていたら、奥の方から人族の敵兵がこちらに向かってくるのが見えた。
「戦闘準備、構え!」
鞘から刀を抜き去り構える。
互いがぶつかり合い、握った刀で敵兵を斬り倒していく。共に来ていたエルフ族や竜族も入り乱れて、一気に戦場と化した。
向かってきた数は少なく、全員を倒し切れた。
「皆、油断するな!このまま進むぞ」
「「「 はいっ! 」」」
「おいおい、なんだよ弱ぇじゃねぇかよ」
上から声が聞こえて剣を構えながら見上げる、屋根の上に人影のような物が見えた気がしたが、その視線の先には誰もいなかった。
「どこ見てんだ?」
今度は背後から声が聞こえたので、振り返った勢いのまま刀を振り抜く。だが、その刀は空を切り声は聞こえるのじゃがその姿を捉えれない。
「コハクさん!前です!!」
エルフ族の言葉に動かされ前を見ると、声の主らしき男が立っていた。その存在感は明らかに他とは違う強者の雰囲気を纏っていた。
「お主、何者じゃ?」
何となく予測はできる、目の前の異質な雰囲気を纏った者は今までに何度も見てきたのだから。
「はっ、こういうもんだよ」
男はそう言いながら地面に手をつき、全身を燃え上がらせ地面に亀裂を入れ始めていた。
その亀裂から赤黒い手が伸び、中から人型の異質な存在が顔を出す。見てくれは人の形を成しているが、異形を感じさせるその気配は恐ろしくもある。
「やはり八獄衆か……」
「せいかい…俺は八獄衆が一人、【ムゴク】。お前らを殺す名だ、刻んでおけ」
「コハクの名を死に逝くその瞬間まで抱かせてやる、死に刻め」
[炎ノ纏・焔羅]
出し惜しみしている余裕はない…初めから全力で行かねば簡単に殺されるだろう、それほどの気迫と自信が奴から漏れ出しておる。
炎を全身から溢れさ身に纏わせていく、それは次第に羽織へと形作り背のあたりには、大きく龍の紋様が浮かび上がっている。
手に持つ刀にも炎を這わせ押し固めていく、刀の周りを薄い幕のようなものを形成させ、荒々しい炎とは違った落ち着いた静かに熱を帯びた刀が出来上がる。
[狐月流 ニノ太刀 斬炎波]
振り切った刀から放たれた炎の波は、鋭い刃物の形を形成し眼前の敵を切り崩していく。斬り離された四肢は燃えて灰となり消し去っていく。
ムゴクとやらには効かなかったのか、その体にぶつかった炎の刃は虚しくも消滅していた。
刀を強く握り返し、全員で走り出す。
妾はムゴクだけを習い定める、周りの敵はエルフ族や竜族に任せる事にする。
その首目掛けて刀を振り下ろすが、なんの変哲もない腕によって遮られる。ぶつかり合った瞬間に、聞こえるはずのない金属音を鳴らし上げながら。
「お主、奇怪な体じゃの」
「お前のヘンテコな刀で斬れないぐらいにはな」
さらに剣速を上げて斬りつけていくが全て弾かれていく、斬れる気配も感じなく隙がない。
「かっかっかっ、[炎極無焔]。俺が最強たる、俺だけの力だ……そらっ、いくぞ」
そう言うと、刀を合わせていたはずの目の前から突然消え去ってしまった。辺りを見渡してもその姿を捉えることは出来ない。
気づいた時には横腹に蹴りを入れられていた。
「がはっ、」
「そら、もういっちょ」
その瞬間、蹴りを入れられていた横腹から激しい爆撃が襲いかかってきた。時間差とはいえ、一撃をもらった場所が爆発するのだろうか。
幸いなことに羽織のおかげで爆発によるダメージは少ない、それでも強烈な一撃であることに変わりはない。
「かっ、くっ…」
「まだまだっ」
畳み掛けるように左下から突き上げるような拳が目に入った、避ける事が出来ないと感じ刀を前に出して受け止める。刀に拳が当たった瞬間に先ほどと同じ爆発が巻き起こり、その衝撃に腕ごと打ち上げられた。
その隙を狙ったかのよう、そのまま左腕が捻り込まれる。激しい爆撃と共に後方へと吹き飛ばされた。
「がはっ、ごほっごほっ」
受け身を取り、刀を地面に突き刺して起き上がる。
足元を爆発させてその推進力をこちらに向けて飛び込んできた、蹴り上げられた足を躱すが追い打ちをかけるように周りながら拳で顔を殴られる。
何度も浴びせられる爆撃に、意識が飛びそうになる。
刀も刃が通らない、動きも追いかけることができずに一方的にやられるだけだ。
「がぁっ、[狐月流 一ノ太刀 円月斬華]っ!」
刀を強く握りながら激しく廻天し、炎を巻き上げて距離を空けさせる。後退りしていくのが見え、もう一度体勢を整える。
刀を鞘に納めて、体を低くする。
周囲から炎が消えたその瞬間、地面を激しく蹴り上げ一直線に向かって飛び出していく。
眼前に捉えた妾の刀を鞘から噴き出す炎と共に斬り上げる、その鋒で薄くではあるが男の体を斬ることが出来た。
「ははっ、どうじゃ。体を避けよったな?」
「かかかっ、こんな小傷で吠えるな」
振り下ろされる拳を刀で弾く、その表紙に爆撃が起こるが堪えながらも追撃に備える。両手両足から吹き荒れる嵐のように激しく打ち込まれるが、全てを刀で弾き返していく。
全身の筋肉が、骨が軋みを上げているのを感じる。
なんとか耐えながらも隙を伺う。
浴びせられる猛攻は勢いが衰えることもなく、次第に追い込まれてくる。
「くそがぁっ、」
「かかかかかっ!どうしたどうしたぁっ!」
このままでは埒が開かないの、持久戦になれば妾が圧倒的に不利……考えが浮かばない、どうすれば。
詰まった瞬間にまたもや刀を打ち上げられる。
「しまっ」
「かかかかかっ!!」
体を回転させながら鋭く勢いのある蹴りが飛び込んできた、今までよりも激しい爆撃と爆音を上げながら妾の腹部で爆ぜる。
「終い……んっ?」
だが、妾は倒れない。
「一回ぐらいなら耐えられるの…舐めるなよ」
まさに肉を切らせて骨を断つ、打ち上げられた刀を両の手で握り返し力を込める。
「妾の一撃じゃ、貰っておけ」
[狐月流 五ノ太刀 流星斬炎]
勢いよく振り下ろされた刀は、激しい炎を巻き上げながら一直線に流星の如く降りかかる。地面まで降ろされた刀からは天高く炎が吹き昇っていく。
「確かに斬り崩した手応えはあったの、これで…」
安心したのも束の間、目の前で起こった爆発と共に吹き上がっていた炎が周囲に散らされる。
「なっ!?」
確かに斬った感触はあった、無事でいるはずが。
「かかーっ!ようやったな」
斬った感触は男の腕だった、地面に転がった腕が目に入ったがそれ以上に逆の手に集められた赤い炎の方に目がいく。
「これで今度こそ終い、[爆炎暴渦」」
その手から放たれる爆炎が妾の全身を覆うように襲いかかる、小さな爆発が誘爆するように周囲で何度も何度も巻き起こる、その中心に閉じ込められたようで身動きが取れない。
爆炎と、爆発が入り乱れ身を委ねるしかなかった。
意識が薄くなり、途切れそうになりながらもなんとか保ち続けて耐え続ける。終わった頃にはかなり吹き飛ばされたのだろうか、男の姿がかなり遠くの方にあった。
起き上がることも、指先一本動かすことも難しい。意識を保つだけでもやっとの状態で刀を握っているのかも怪しい。
「な、こ、まま……倒れ…」
薄れゆく意識の中、妾に喋りかける声だけが聞こえる。遠い昔に聞き慣れた、大好きだった声。
(皆に申し訳ないが、迎えがきたようじゃの……)
その声に誘われるかのように、意識は途絶えた。
ご完読、誠にありがとうございます。
今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。
これからも応援よろしくお願いいたします。
また次話でお会いしましょう(*´∇`*)