【第96話】セイVSゼツゴク
こんにちは、ノウミです。
たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。
これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。
皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、
一層精進してまいります。
どうぞ、これからもご期待ください。
各自が持ち場につき、セーレンが号令を放つ。
「大砲、バリスタ…撃てぇいっ!!」
激しい爆音と空を切り裂くような音と共に、戦争の火蓋が切って落とされた。着弾した砲弾は爆煙を上げながら敵を吹き飛ばしていく、バリスタから放たれた大矢も数人をまとめて貫いていく。
敵軍は急な攻撃に慌てる様子もなく、変わらない歩みでこちらに向かってくる。
「君の悪い連中め、我らも行くぞ!」
ガスール率いる空の部隊も高度を上げながら、敵軍の頭上を飛行し爆弾を投下していく。砲弾に合わせてさらなる爆撃を生み出し、まとめて吹き飛ばしていく。
誰もが順調に攻めていると感じていた、変わらない歩みに気味の悪るさを覚えながらも、魔王ナディのもたらしてくれた兵器の数々が、想像していた以上の威力を生み出しているからだ。
だが、そうは簡単にはいかない。
たちこめていた爆煙が流れていくと、そこにいた敵軍の数はそこまで減っていない事が確認できる。吹き飛ばされた敵は立ち上がりながらこちらに向かっていたのだ、体を欠損しながらも関係ないかのようにこちらに向かって進み続けていたのだ。
「化け物か……皆よ、撃ち続けろ!」
少しずつ数は減ってきているように見えるのだが、敵軍は推定一万。焼け石に水と言われても否定できないほどの戦果しか上げられていない、このまま攻め込まれるのか、それともこちらの弾が尽きるのか。
するとセーレンが慌ただしく移動を始めた、それに付いて行くように数名が連なる。
向かった先は城門の真上に設置した、超特大の砲台だった。
「魔王よ、早速使わせてもらいます」
数人がかりで、身の丈ほどの砲弾を運び入れていく。砲台に設置し照準を合わせていく。
「いいですか……放てぇっ!!!!!」
これは、魔銃・超電磁砲を超大型に改良したたもので、実弾は使わずに、数名の電を溜め込み放っている。その絶大な威力は地面を抉りながら伸び進んでいき、とてつもない爆音と轟音が戦場全体響き渡り、超高速の魔弾が一筋の彗星の如く敵軍に向かって襲いかかる。
敵軍に着弾と同時に大きな穴が空き、爆煙が空に向かって登っていく。
今までとは比べ物にならないほどの威力となり、大多数の敵を葬り去った。
その威力で、先程までは体が欠損して変わらずに向かってきていた敵軍たちが完全に消滅した事を視認できるほどに。
「次弾装填!!」
第二撃目を放とうとした時に、戦闘を歩いていた一人の男が動き始めた。男はなにやら叫び声を上げながら腕を空に掲げる、男の手の上には槍のようなものが見えていた、何かを始める前にこの超電磁砲にて仕留めてしまったほうが良いと考え、準備を急がせる。
「放てぇっ!!!」
二撃目を放つ、男の元へと一直線に伸びていき捉えたかと思われたが今回は先程のような光景が広がることはなく、その場で消滅してしまった。逸れたのでも防がれたのでもない、その場から消滅した。
「くっ、次弾装填前に各員あの男を狙いなさい!!!」
それを聞いたガザールが、空の舞台全員に命令を下し術式を各々が放つ。先ほどと同じく目の前で消滅されており届くことはなかった。更に追い打ちをかけるように、、大砲とバリスタが放たれるが、これは消滅されずに弾き飛ばしていた。周囲の敵兵は吹き飛ばされれていくが、その男だけは無傷なままであった。
「なぜ、大砲やバリスタは弾いているのかしら?」
嫌な雰囲気を感じながらも、セーレンは三度目の砲撃を下す。が、これも同じく消滅してしまった。
違和感に気づいたセイが全体に伝える。
「原素による攻撃は駄目だ、実攻撃のみやれ!!!」
方法は分からないが、原素による攻撃はすべて消滅させられるらしい。それに気づき超電磁砲は一旦休止させる、人員を他に回し大砲やバリスタなどで敵の戦力を削っていく。
そうしていよいよ敵軍は目前まで迫ってきていた、ここからはセイの部隊も動き始めていき戦況は大きく動き始める。セイと先ほどの槍を持った男が向き合う、互いに槍を構えながら言葉を交わす。
「ギャハハハハハハッ、派手にやってくれたなぁ、おい!」
「そっちこそ、何をした?」
「検討はついてんだろぉ?」
「このまま帰ってくれねぇか?」
「帰らせてみろやぁっ!!」
互いの槍が衝突し合う、その周辺では激しい戦闘音が巻き起こっていた。二人の戦いを邪魔しないようにと大きく取り囲むように、敵兵たちを戦場の部隊が食い止めている、さらにその周囲をガスールの部隊の爆撃や、術式。セーレンが指揮する大砲やバリスタで狙い撃っていく。
戦場は更に激化していく。その中心に槍戟とでも言えば良いのだろうか、互いの槍は一進一退の攻防を繰り広げていき、それに合わせて周囲も邪魔にならにようにと防衛線を張るように戦闘を繰り広げる。
「お前、やりよるなぁ!!」
「ちっ、簡単にはいかねぇか」
打ち合った槍が互いを弾き、距離を空ける。
「お前、名は?」
「竜族が族長、セイ」
「セイ……そうか、俺は【ゼツゴク】。八獄衆が一人だ、死ぬ間際まで刻んでおけ」
「ぬかせ」
二人は地面を蹴り上げて更に槍を交える、あまり長引かせるわけにもいかないのだろう。敵兵も数が減っているようにも見えない、周りが持ちこたえてはいるがいつ崩れてもおかしくない。その前に、ゼツゴクを倒し、超電磁砲で敵軍を一掃したいと。ゼツゴクも同じく、徐々に減らされている自軍に焦りを感じ始めていた。
焦る気持ちとは裏腹に互いの槍は鋭さを増していく、初めに均衡を崩したのはゼツゴクだった。槍を弾き蹴り飛ばして距離を空ける。その隙に、腰に携えていた瓢箪に手をかける。それを口に運ぶと、中の飲み物を飲み干していき、最後に自身の槍にそれを吹きかける。
すると、槍が激しく燃え上がり始めていく。
「ぎゃははははっ、もっと酒だ!酒をよこせぇ!!!」
「なんだ、酒でも呑んだのか??」
「呑まなきゃ、やってられっかよぉ!ヒクッ」
「なめやがって」
酔い初めてからゼツゴクの槍捌きは不規則なものへと変化していた、緩急をつけながら揺らめきのある槍は捉えることも難しく、セイの防御をいとも簡単にすり抜けていき、次第にセイの体には傷がつけられ始めていく。
「くそっ、厄介な」
「ヒクッ、ヒャハハハハッ、そらそらそらぁっ」
体を捻りながら燃え盛る槍を放ち、周囲ごと抉り取るようなその一撃は肩を貫く。
「ぐぁぁあっ!!」
「ぎゃははははっ、まだまだぁっ!!!」
[土の城壁]
互いの間に土の壁を作り遮る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「無駄ぁ無駄ぁ無駄ぁ無駄ぁ無駄ぁぁぁぁぁああああっ!!!」
土壁を崩す勢いで激しい音が鳴り響く、生み出した壁もそう長くは保たないだろう。セイは肩を抑えながら目を閉じて集中する、激しく大きくなっていく音にも怯まずに気持ちを整える。
「はぁっ!混ノ纏・金剛」
全身を土が覆い金属の鎧を形成していき、槍にも金属のようなものが集まり始め大きな三叉槍へと形創っていく。その装いは大きく変わり、一騎当千の猛将のようだった。
その槍を体を捻りながら構えて力を込めていく。
すると、土壁にも亀裂が入り始め今にも崩れそうになる。
「はっはぁっ!!ヒック、これで終めぇだぁ!!!」
土壁は大きく爆発したように崩れて、二人は相対する。
「姿が変わっても意味ねぇよっ![獄槍炎貫突]!!!」
「あぁぁぁぁぁあああっ[三叉槍]!!!」
互いに最強の一撃を放つ、衝突し合った槍は衝撃波を巻き起こしながらも片方の槍を砕く。
残ったセイの槍がその勢いのままゼツゴクの体を貫く。
「なぁっ、そ……そんな…」
「うぉぉぉあぁぁぁぁぁっ!!!」
貫いた槍を抜いて引き戻し、さらにその反動を利用して放つ。自身の身体をバネのように何度も何度も引いては放ってを繰り返していき勢いを増しながら、体を何度も貫いていく。
「三叉槍の豪雨!!!」
何度も放たれる槍は、息の根を止めるまで続いた。
身体の節々に負担が生じ、その場で片膝を突きながらしゃがみ込む。
「ぶっ、はぁっ!!!はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
全身の纏が崩れ落ち、解かれていく。それを見ていたセーレンが再度指令を出す。
「超電磁砲放てぇっ!!!」
戦況を把握していたセーレンは、セイが勝つと信じて途中から準備を始めていた。その思惑通りにセイは勝ち、心配することなく超電磁砲を限界を迎えるまで放ち続けた。ここまでくれば、人族軍の勝ちはありえない、気味の悪かった敵兵も数が目に見えて分かるように減り始めていた。
セイは皆に運ばれながら街の中間で後退していく。
勝どきを上げるまではそう時間はかからなかった。
全員が喜びを声に乗せて分かち合っていく、視界に入る範囲には敵はもういない、さらなる援軍が来ないとも言い切れないが、あの人族の軍勢を蹴散らしたことの事実が、なにより嬉しかったのだろう。
ご完読、誠にありがとうございます。
今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。
これからも応援よろしくお願いいたします。
また次話でお会いしましょう(*´∇`*)