表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん剣士、「昔はヤバかった」と教えたら、将来有望な若手剣士と女魔法使いに尊敬されてしまう  作者: エタメタノール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

第5話 モンスター図鑑なんてなかった

 ある日、マーティたち三人は森に来ていた。


 今日の仕事は巨大な虫型モンスターの討伐。

 薬草の採集などに入った人々が被害を受けているという。


「森って苦手なのよね~、歩きにくいし、虫いるし」


 愚痴をこぼすエルシー。


「文句言うなよ、今回のは結構いい仕事なんだから! 成功すりゃでかいぜ!」


「まあまあ、エルシーちゃんは女の子だから仕方ないよ」


 マーティの言葉に、エルシーは頬を膨らませる。


「おじさん、“女の子だから”って言い方、よくないわよ」


「すまんすまん、俺のような古い世代の悪い癖だ」


 マーティが若い頃は女冒険者などほとんどいなかったが、今の時代は珍しくもない。

 すかさず謝るマーティ。

 とはいえエルシーも本気で怒っているわけではなく、和やかなムードで森歩きを続ける。

 が、“そいつ”は突然現れた。


 体長5メートルはありそうな巨大な芋虫のようなモンスター。

 体を捻じり、牙をちらつかせ、威嚇している。


「なんだこりゃ!?」


「初めて見るわ!」


 巨大虫の異形に動揺するジェックとエルシー。

 だが、マーティは冷静だった。


「ふうむ……大きいね」


「おやっさん、あいつ知ってるのか!?」


「いや、初めて見るが……あの牙は毒があるな。気をつけた方がいい」


「毒ぅ? だけど、一応調べた方がよさそうだな」


 ジェックがエルシーに振り向く。


「エルシー、あいつをモンスター図鑑で調べてくれ!」


「うん、分かった!」


「モンスター図鑑?」


 エルシーが小さな端末を取り出し、巨大虫に向ける。

 すると、端末に情報が映し出される。


「あいつの名前はポイズンワーム、おじさんの言う通り毒があるわ! だけど、炎に弱いみたい!」


 マーティとジェックがうなずく。


「よし、俺とジェック君で奴を相手して、エルシーちゃんの魔法で叩いてもらおう」


「了解!」


 ポイズンワームが襲いかかってくる。

 ジェックは素早い動きで、マーティはスピードこそないが敵の動きを読み、攻撃をかわす。

 二人で斬撃を浴びせ、怯んだところへ――


火炎弾フレイムブレッド!」


 エルシーが火炎による弾丸を浴びせる。

 これで弱ったところを、ジェックが頭を叩き斬りフィニッシュ。

 巨大虫――ポイズンワーム討伐達成である。


 ジェックとエルシーはハイタッチをするが、マーティはさすがにへたり込んでしまった。


「おやっさん、大丈夫か!?」


「ああ……ちょっと休めば大丈夫だ」


 親指を立てて答えるマーティに、ジェックとエルシーも安堵した様子を見せた。



***



 報酬を受け取った後、三人はマーティが勤めている酒場に向かった。


「まずはかんぱーい!」


 グラスとぶつけ合う三人。


 マーティがエルシーを見る。


「それにしても今は便利な物があるんだね。モンスター図鑑だっけ?」


 エルシーは懐から端末を取り出す。


「うん、1000種類以上のモンスターのデータが登録されている魔道具よ。これがあれば、大抵のモンスターの名前や性質、弱点なんかが分かるわ」


「大したものだね」


 出会ったことのないモンスターに出会った際は、まずモンスター図鑑で調べるのが冒険者の基本的動作の一つである。


「そういやさ、おやっさんはなんであのワームが毒持ってるって分かったんだ? あの言葉がなきゃ、俺は斬りかかってたかもしれない」


 ジェックが尋ねると、マーティは――


「ああ、あれは奴がそういう動きをしてたからだよ」


「動き?」


 マーティは酒を一口飲む。


「奴はわずかに体を捻っていた。あれは体内の毒液をしぼり出す動きだ。それに毒に頼らないモンスターは積極的に襲いかかってくるが、奴は威嚇していた。それで毒を持ってることが分かったのさ」


 感心する二人。


「モンスター図鑑なんかなくても、それぐらいのことが分かるんだな」


「まあ、長年の経験ってやつさ」


 ジェックが反省する。


「俺たちももしおやっさんがいなかったり、モンスター図鑑がなかったら、まんまとあいつの毒を喰らってたかもしれないな……」


「ホントね……」


 落ち込む二人を、マーティが励ます。


「まあまあ、俺だって君らぐらいの頃はがむしゃらにモンスターに挑んでいたし、これから色んな知識を覚えていけばいいのさ」


 ジェックとエルシーはうなずく。

 その様子を見てマーティは、素直な子たちだ、きっとこの二人は伸びる、と嬉しそうに目を細めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ