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一球入魂 -日東高校女子野球部-  作者: 照山
第1章 ベストナイン大会編
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第6話 練習試合 下

日東高校対駒修学園の練習試合は5回表に入った。ここまで4-5と日東高校は1点ビハインドの状況にある。駒修のこの回から始まる攻撃は健軍に変わって牧原桃香が打席に入った。


対する日東高校の投手は絵茉に変わって琴葉がマウンドに立った。琴葉と彩也の高校最初の姉妹バッテリーが成立した。


「(ここは確実に打ち取ろうよお姉ちゃん)」


コクりと頷き、琴葉は大きく腕を振る。琴葉のボールは牧原のバットを掠めた。ファールとなったが一球目から打ってきた。さすがの一言である。


「(ストレートと思わせてフォークを!)」


琴葉は二球目にフォークを投じた。予想通り牧原はストレートかと思っていたがフォークであったため見逃した。カウント0ボール2ストライクとなった。牧原はヘルメットを触り、もう一度バットを構えた。


牧原に投じた三球目を彼女は左中間を抜けるヒットとなった。牧原は一塁ベースを蹴り、二塁ベースへと向かった。琴葉は早速ノーアウト二塁のピンチを作った。彩也はマウンドに向かい、アドバイスをした。


「お姉ちゃん、球が結構浮いているから気を付けて。二塁の牧原さん、通算盗塁数37だから走られるかもしれないから」


「分かった」


琴葉は気を取り直して牧原の次の打者は根岸と守備交代をした吉川奈緒美と対戦する。彼女の武器は圧倒的な守備力が売りである。琴葉は中学時代に同じ部活のチームメイトとして切磋琢磨していたがあの日を境に話さなくなった。。


「(久しぶりだね・・・奈緒美。あの日以来だね)」


琴葉は渾身のストレートを投じた。回転数のある白球は奈緒美のバットに当たった。当たったボールはショートゴロになった。二塁ランナー・牧原はゴロでアウトになる前に三塁へ進塁した。これで1アウト三塁となった。


「(ショートゴロか・・・彩也も琴葉もすごいな・・・)」


奈緒美は彩也とも面識がある。中学の時はたまに話す程度であった。


吉川の次の打席には捕手の梅本が立った。琴葉は三塁に牽制した。しかしその牽制球が三塁手・村上心愛のグラブから逸れた。すかさず三塁ランナー・牧原はホームインし、4-6と1点を追加した。牽制球の悪送球による失点は非常に残念である。打席は梅本のままである。


「(お姉ちゃん・・・慣れない牽制するから・・・)」


琴葉は牽制の練習をせずに試合に出ていたため高原先生は試合終了後に牽制練習をさせようと決めた。梅本に対しては6球粘られたがファーストゴロに打ち取った。


続く打席には祖父江に変わって交代した森恋が打席に入った。森は捕手も出来る二刀流である。琴葉はホームランを打たれないように一球目を投げた。森は琴葉の一球目をいきなり当てた。彩也と琴葉はホームランを確信した。しかし、右翼手・義美のダイビングキャッチで3アウトチェンジになったが義美は脚を痛めたのかその場に座り込んでしまっている。


「大丈夫!?」


「脚ちょっと捻ったのかな?結構痛い・・・」


中堅手・小越舞香は高原先生を呼んだ。高原先生は義美を今後のためにも松井埜々香と守備を交代した。埜々香は捕手以外ならどこでも守れるユーティリティプレイヤーである。


守備交代 日東高校

丸亀義美(右翼手) 2年→松井埜々香(右翼手) 3年


「埜々香、頼む」


「もちろんさ」


5回表が終了し、4-6のビハインドの展開となっている。2点を追う5回裏、打席には小越が入っている。ちなみに小越は今年のプロ野球ドラフト会議に出るつもりである。


小越に対しての一球目は緩急のあるカーブを空振った。二球目は低めのチェンジアップを打ち上げセカンドフライとなった。これで1アウトランナー無しの場面で比奈が打席に入った。前の打席では三塁打を狙おうとしてアウトという致命的なミスを犯していた。


比奈は一球目を見逃し、二球目を振りに行った。結果的に三塁への内野安打となった。ノーアウト一塁の場面で埜々香が打席に入った。義美の代わりとして守備に付いた埜々香はバットを小さく構えた。


「(ノーアウト一塁・・・タイムリーでも決めようかな)」


埜々香は四球目まで見送っていた。カウント2ボール2ストライクとし、五球目をセンター前に運んだ。センター前に飛んでいった打球は中堅手・右京の前に落ちた。比奈は二塁に到達し、ノーアウト一二塁と一発出れば逆転となる。


ここで4番・雪峯が打席に入る。スリーランホームランで逆転という所であるが二球目を打ち損じ、セカンドゴロ。二塁ランナーは三塁へ、一塁ランナーは二塁へ走るもダブルプレーが成立し、2アウト三塁となった。今雪峯が打ったボールは遅めのチェンジアップであった。ここで併殺を打つのは厳しくなる。


雪峯の次のバッターは七緒が打席に入るもボール、ボール、ストライク、ボール、ストライクのフルカウントでボールを選び出塁した。2アウトランナー一三塁と再びチャンスを作り、彩也は三球目のストレートを振りにいった。するとライト方向に飛んでいった打球は右翼手・大島のグラブから落球した。三塁ランナーはホームイン、5-6と再び1点差に縮めた。


「ナイスだよ~彩也!」


続く打席には穂香が入った。一点差に迫っているため追加点が欲しいところであるが相手投手・森のスライダーを打ち損じ、キャッチャーフライとなった。後1点を追加することが出来なかった。


6回表、一点差に迫られた駒修は更なる得点が欲しいところである。右京が再び打席に立ちバットを構える。琴葉は右京に対して4連続ボールの四球により出塁させてしまった。しかし、何とか立て直すことに成功し、後続の大島を三球三振、次のユキーナをセカンドゴロに打ち取った。これが琴葉の本来の実力である。また、この回を無失点に抑えることが出来た。


「琴葉、最終回も行ける?」


「行けると思います」


「『思います』っていうのは心配かな・・・故障されても困るから今日はここで降板かな」


「了解です」


「それと彩也、今日はこの辺で交代しようか。まだまだ成長途中だから休息も必要だよ」


「分かりました」


琴葉と彩也は6回裏まで試合に出た。琴葉は2イニングを投げて1失点という内容であった。一方彩也は3打数2安打と上出来な成績を残した。


その裏の回、彩也の代打で阿部加奈子が打席に入り、センター前ヒット。続く穂香は併殺でランナー無しの2アウト。穂香の次の打席には村上心愛が立った。心愛は森のストレートを捉え、レフトへのツーベースヒットを放った。再びチャンスを作るも琴葉の代打として出場した粟津若葉は四球で出塁した。2アウト一二塁の場面で上位打線に戻って来た。


部長の小越舞香が打席に入った。舞香も四球を選び、2アウトランナーフルベースの状況で高原先生は比奈に代打を送った。比奈の代打には同ポジションの土居美岬が打席に入った。土居は森が投じた四球目のチェンジアップを完璧の捉えた。土居の打球は右中間を抜けるタイムリーツーベースで3点を追加し7-6と逆転した。


「美岬~!ナイバッチ!この逆転は大きいよ~!」


土居はガッツポーズを見せた。琴葉と彩也もベンチからジェスチャーで返事をした。


土居の3点タイムリーで逆転し、次の打席の埜々香は十球粘るもセカンドゴロに終わり、3アウトチェンジとなった。


7回表、前の回にて逆転をしたためこの回が最終回である。高原先生は守備交代を告げた。


日東高校 守備交代

大野彩也(捕手) 1年→阿部加奈子(捕手) 2年

大野琴葉(中継2) 2年→粟津若葉(中継3) 3年

京田比奈(遊撃手)1年→土井美岬(遊撃手) 3年


駒修の打席には石川が打席に入った。粟津は落差のあるフォークを投じ六球目で空振り三振を取った。残り2人となり打席には坂本が立った。坂本はカウント2ボールからレフト方向に打球を飛ばした。打球は左翼手・穂香のグラブに収まった。ラストバッターとなったため駒修の監督・明石は吉川奈緒美に代打を送った。吉川の代打には大城美波が打席に入った。


「美波~!しっかり振りに行こう!」


すると大城は甘く入ったストレートを打った。がしかしセンターフライに打ち取られた。3アウトとなり試合終了となった。


「対戦ありがとうございました!」


試合終了後、高原先生と明石は機会があれば対戦しましょうと言った。また、勝利投手は琴葉、敗戦投手は森、セーブが付いたのは粟津若葉であった。


駒修学園野球部が帰校後、琴葉や彩也たちは部室に集合した。


「今日の試合は7-6で勝ちました。ですが多くの改善点がまだまだあります。今日この後と明日はオフとし、疲れを取って下さい。それともうすぐゴールデンウィークと中間テストです。勉強も部活も両立してください。それでは以上です。解散!」


その後、琴葉と彩也は片付けの後帰宅した。また、脚を痛めた義美の怪我の具合は重くはなく1週間~2週間程度は安静にするように言われた。


「はぁ~勝ったけど疲れたねぇ」


「そだねぇ彩也~帰ったら何する~?」


「今日野球の試合あったっけ?」


「もう終わってるんじゃない?試合。野球ナビで確認っと・・・彩也の好きなジャイファンツ勝ってるよ。良かったじゃん」


「いいね~」


「あっあの・・・」


プロ野球の試合結果を確認しながら歩いていると後ろから声を掛けられた。振り向くと吉川奈緒美の姿であった。何か話したそうにしている。


「何かな?」


吉川は緊張していそうな面持ちをしながら口を開いた。

次回は琴葉と彩也と奈緒美との過去について書いていきます。よろしくお願いします

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