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一球入魂 -日東高校女子野球部-  作者: 照山
第1章 ベストナイン大会編
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第5話 練習試合 中

3回表、駒修の攻撃は森野、石川、坂本のクリーンナップから始まる。志帆は結構肩が暖まって来た気がした。


森野が打席に入る。彼女の第一打席は空振り三振に倒れてしまったためヒットを狙っている。志帆は一球目に緩やかなカーブを投じた。森野はバットを振るもファールになった。


「(大分向こうも当てられ始めてきている・・・警戒しなければ打たれる!)」


志帆はここまで2失点のピッチングを見せている。小さなミスで点を奪われる訳にはいかない。


二球目は緩めのチェンジアップを投げ、ストライクを取らせようとしたがバットに当てられショートの深い所に行ったためショートへの内野安打となった。


「(比奈ちゃん体勢を崩しながらも良く取ってくれた!ナイス!)」


進塁を許したが比奈の成長した守備力を称賛した。比奈の守備は少し拙い所もあるがそれ以外は安心して見ていられる。


「(石川さんは・・・バントの構えか・・・ここは確実にランナーを送りたいという強い意思を感じるよ)」


4番打者石川はバントの姿勢を取った。志帆はアウトひとつでも多く取るためストレートを投じた。バットに当たったボールはピッチャーゴロとなり、1アウトとなるかと思った。しかし、志帆の送球が逸れてしまい一塁手の雪峯のグラブからボールが逸れた。


「(まずいノーアウト一二塁だ・・・慎重に慎重に)」


ベンチの方を見ると監督がマネージャーと話している姿が見えた。そろそろ交代が告げられるかもしれないがこの回は最後まで投げたいと思っている。


ノーアウト一二塁の場面で坂本が打席に入る。一打席目では先制のタイムリーヒットを放っている。二塁打以上で同点、本塁打で逆転である。


坂本へは内角中心のボールを投げた。一球目はストライク、二球目はボール、三球目はファールでストライクとし、四球目のチェンジアップを打たれた。センター方向に飛んでいった打球は中堅手・真琴の頭上を越えられ二塁打となった。


「(また打たれた・・・)」


志帆は3回表で降板となった。1アウトも取れずマウンドを降りた。自分のエラーによる出塁してからの失点に不甲斐無い気持ちで一杯だった。


志帆の二番手に上がったのは比奈や彩也と同時に入部した高梨絵茉(以下絵茉)である。3回途中4失点を喫した志帆の二番手としてマウンドに立った。この登板が高校入学後初めてである。


「(絵茉ちゃん、ここは空振りを取ろう)」


「(分かった)」


ノーアウト二塁の場面で打席には健軍が打席に入った。それにしても健軍とはカッコいい名前だなと絵茉は思った。それから彩也は絵茉にフォークでストライクを取ろうというサインを出した。絵茉は一球目を投じた。


「(投手の高梨さん。サイドスローなんだね・・・)」


絵茉の武器は高一にしては伸びのあるスライダーを武器とするサイドスローピッチャーである。打てないことはないが気を緩めると三振か併殺を取られる。


絵茉投じた一球目を健軍は打ち損じ、サードフライとなった。これで1アウトランナー変わらず二塁である。


「(7番の根岸さん・・・さっきは志帆先輩から死球を受けていたから気をつけないと)」


第一打席目にて根岸は志帆から死球を受けていた。彼女からは絶対打ってやるという強いオーラを感じた。何かに感づいたのか高原先生は申告敬遠した。申告敬遠を受けた根岸は次は敬遠気味のボールでも打とうと決めた。実際、プロ野球でも敬遠球を打った選手もいるのだから。


1アウトランナー一二塁とした場面で梅本が打席に入る。梅本はバントの構えを取ったが連続でファールとなりアウトとなった。ランナーは変わらず一二塁である。


「(これで2アウト。絵茉ちゃん、ここはしっかり打ち取ろう)」


9番には姫野の代打で祖父江美奈が打席に入った。彼女は本ポジは投手であるが万が一の場合に備えて外野手の練習もしている。


絵茉は祖父江に対する一球目にシュートを投げた。祖父江は一球目からバットに当てレフト方向に放った。レフト方向に飛んでいった打球は左翼手・穂香のグローブに収まり、レフトフライになった。


3アウトになり3回表は終了した。志帆の二番手で登板した絵茉は無失点に抑えることに成功した。高校初登板にも関わらず抑えることが出来たのは上々である。


「絵茉ちゃん、ナイスピッチング!」


彩也は絵茉に話しかけた。すると志帆にも声をかけられた。


「絵茉、大変申し訳ない!」


「大丈夫です。緊張感のある投球が出来てとても良かったです。次は頑張ってください」


その裏の3回裏の攻撃は比奈、義美、雪峯の上位打線から始まる。比奈の打席では1ボール2ストライクの四球目を右中間方向に引っ張った。三塁を狙おうとしてアウトになるという走塁ミスを犯した。


第二打席目に入った義美の打席は七球粘って四球とした。1アウト一塁の場面で4番の雪峯の一発が待たれる。


「(1アウト一塁の場面・・・義美の足次第で勝ち越しは可能・・・ここは長打を!)」


駒修外野陣は雪峯の打力を警戒するため長打警戒のシフトを取った。祖父江は一球目と二級目を連続でボール、三球目を打ち損じファーストゴロ。一塁ランナー・義美は二塁へと移動した。


雪峯の次の打席には七緒が入った。第一打席では初ホームランを放っている。駒修内野・外野陣は山崎シフトを取った。


「(警戒されてる・・・ここはもう一発打ちたい!)」


祖父江が七緒に投じた一球目は外角高めのストレート、二球目のチェンジアップを打ち上げた。打ち上がった打球は凡フライとなり、3アウトでチェンジになった。


「絵茉、次も行ける?」


高原先生は4回表も行けるかどうか尋ねた。


「はい!行けます!」


高梨は即答であった。5回と6回に琴葉を登板させる予定であると伝え、琴葉は肩を作りにブルペンに行った。


4回表、右京が打席に入った。前回の打席では犠牲フライであった。


「(高梨さんか・・・1年生らしいけど頑張ってるな・・・)」


右京は絵茉の一球目を見逃した。二球目・三球目・四球目をファールとした。五球目に甘い失投を捉えた。高く上がった打球は右翼手・丸亀の前に落ちた。ライト前ヒットとなり出塁した。


「(少し手が滑っちゃったな・・・気をつけないと次の打者にも打たれる)」


次に打席に入るのは前の打席で空振り三振を喫した大島である。大島はバントの構えを取った。三振を取られるよりも二塁にランナーを送りたいのだろう。絵茉は外角低めにカーブを投げた。投げたカーブは大島のバットに当たった。


「一塁!」


「はいよ!」


大島のバントは成功した。これで1アウト二塁である。この場面で森野が打席に入った。二塁ランナー右京は絵茉が投球フォームに入ったと同時に盗塁した。


「(三盗!?)」


彩也は三塁に慌てて投げる。しかし、悪送球となり右京が一目散にホームベースを踏んだ。捕手の悪送球による失点で5-4のビハインドとなってしまった。右京の足は新幹線の如く速かった。


ベンチの方向を見ると監督は敬遠のサインを出した。森野を避け石川と対戦させるつもりだ。敬遠によって1アウト一塁とし、打ち取れば併殺も可能である。


絵茉は石川に緩めのフォーク、スプリットを投じた。そして三球目のストレートを打たれた。しかし、レフト方向に打球は飛んでいくも、左翼手・穂香がキャッチした。レフトフライトなり2アウトとなった。


「ナイスピッチング!落ち着いていこー!」


ベンチからも声をかけられる。絵茉はあと一人抑えたら交代となる。


石川の次の打席に入ったのは前の打席で二塁打を打った坂本が立った。絵茉は坂本に対してインコースの際どい所を攻めた。坂本はカット打ちで粘り九球目を打った。


「よし!ショート頭上!いやセカンドかな?」


ショートにふらふらっと上がった打球は遊撃手・比奈のグラブを弾き、二塁手・七緒のグラブにすっぽりと入った。危うくエラーとなるところであったが七緒のファインプレーによりアウトとなり3アウトで4回表が終了した。


これで絵茉は降板となった。2イニングを投げて1失点と初めてにしては及第点である投球を見せた。


4回裏、彩也が打席に立った。第一打席では内野フライに打ち取られている。祖父江の彩也に対する一球目はツーシームであったが見逃した。二球目に内角高めに浮いたストレートを見逃さず一二塁間を抜けるヒットとなった。


「ナイバッチ!続いていこう!」


ノーアウト一塁の場面で穂香が打席に立った。祖父江は穂香に対して三球連続でストレートを連投した。しかし、穂香は三球連続で来ると思わずハーフスイングを取られ三振となり、1アウト一塁とした。


穂香の次に琴葉が打席に入った。祖父江は琴葉に対して変化球中心に投げた。第一打席ではバスターを仕掛けたがこの打席ではどうなるか。


「(1アウトランナー変わらず一塁・・・)」


併殺を取ろうとしているのか相手内野陣は前進守備を敷いた。


琴葉は二球目のカーブを打ち損じ二塁方向へ。二塁手・根岸が軽快なグラブ捌きを披露し、併殺打にしてしまった。ダブルプレーによって3アウトチェンジとなった。


「(併殺打だけは打ちたくなかった・・・)」


4回裏の攻撃が終了した。次の回に入る前に高原先生は投手と守備の交代を告げた。三番手に登板したのは三塁を守っていた琴葉がマウンドに立つことになった。以下が日東高校の交代したメンバーである。


金子真琴(中堅手) 2年→小越舞香(中堅手2)3年

大野琴葉(三塁手) 2年→村上心愛(三塁手) 2年

小笠原志帆(投手) 3年→高梨絵茉(中継) 1年→大野琴葉(中継2)2年


そして駒修学園も交代したメンバーを告げた。1年生のメンバーは疲労などを考慮して2年生と交代となった。


森野淳子(一塁手) 1年→ダヤン・ユキーナ(一塁手) 2年

健軍乃愛(左翼手) 1年→牧原桃香(左翼手) 2年

根岸若菜(二塁手) 1年→吉川奈緒美(二塁手) 2年

姫野結愛(投手) 1年→祖父江美奈(中継1) 2年→森恋(中継2) 2年


5回表に続く・・・

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