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一球入魂 -日東高校女子野球部-  作者: 照山
第2章 オールスターゲーム編
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第40話 幼馴染と

第3週のオールスター戦が終了後、志帆(以下私)はしばらく会えていない幼馴染みのことを考えていた。私には幼馴染みが昔いた。私はその幼馴染みが大好きであった。しかし、その思いを伝えることができずに離ればなれになってしまった。それは中学生の頃の話であった。


中学生の頃、私は幼馴染みの悠太に恋をしていた。悠太も私と同じ野球部で毎日夜遅くまで一緒に練習をしていた。当時私は投手、悠太は捕手をしていたためバッテリーを組んでいた。


「志帆~少し球が粗いぞ~気をつけろよ~?いくら長く一緒にいるからってあんな球捕るの難しいから気をつけてよな?」


「分かってるよ~じゃあ悠太は私の荒れ球しっかり取ってよね!」


「もちろんさ。どんなボールが来ても受け取れる自信があるんだ」


「本当~?ういうい」


「やめいやめい!(すげぇ・・・志帆のふんわりしてて何か良い!これが幼馴染みの特権ってやつか?この時間続いてれば良いんだけど・・・)」


悠太は変なことを考えていながらニヤニヤ見ていた。


「ちょっと~何考えてるの~?まさか私の胸が肘に当たってて喜んじゃった?変態さんだねぇ~」


「違うわ!」


「ほら二人とも!練習しなさい!幼馴染みだからといってイチャイチャして良いとは言ってないぞ!」


「すみません監督!ほら志帆、練習続けるぞ」


「は~い」


私と悠太が幼馴染みであるということは野球部の中では知られてはいたがイチャイチャしすぎてカップルかと思われたこともある。それでも表には出してはいないが私は悠太の事が意外にも好きであった。一方の悠太も志帆同様に同じ気持ちを抱いていた。昔ながらの幼馴染み同士が好意を持っているという展開はかなり激アツである。


「そうだ志帆、来週家族でキャンプに行くんだがお前も来るか?」


球速錬成をしながら悠太は話しかけた。キャンプに行くという言葉に私はすぐに反応した。


「行く行く!悠太とキャンプ楽しみだな~」


「分かった。母さんに伝えとくよ」


「うん!」


志帆は悠太とキャンプに行けるということに嬉しさよりも楽しみが勝っていた。乗るとしたら一緒のテントが良いなとは思っている。


「(志帆とキャンプか・・・久しぶりに行くが・・・あれは小3の時だったか。急にテントに入ってきて一緒に寝たんだっけ。あの頃はただの幼馴染みと思っていたが今は少々緊張するな・・・まぁさすがにあの時みたいにテントに入ってこないか)」


と考えながら練習を続ける。志帆は球速練習後は制球やスタミナの練習も欠かさずトレーニングを行った。最近の志帆の投球はピカ一である。プロとまでは行かないが良い勝負になれるほど投げれているのではと思うがさすがに過信していると思った。一方悠太は同じポジションの駿太とキャッチボールをしたりなど肩の酷使に気をつけながら練習を続けた。捕手にとって肩は命同然のものだ。壊してしまったら捕手としての役割を失ってしまう。それだけは・・・


「くっ・・・!」


キャッチボールの途中、肩に少々強めの痛みが走った。


「大丈夫か悠太。あまり無理しすぎない方が・・・」


「大丈夫だ。もう一回投げてみてそれで問題なかったら続けよう」


その選択のミスにより俺の野球人生と志帆とのバッテリーは壊れることになる。もう一度投げるとさっきよりも強い痛みが走り投げられずにいた。


「おい悠太。さすがにやめた方が・・・」


「そうだな・・・まさか捕手として大事な肩に支障があるとはな・・・」


「監督呼んでくるよ」


「あぁ頼む」


すると投手練習を終了した志帆が戻ってきてこちらに駆け寄ってきた。タイミングが悪かったか。


「悠太!大丈夫?すごく痛そうだけど・・・」


「大丈夫だこれくらい・・・痛っ!」


「今日は休もうか・・・?」


「倉内、肩に異常が出たと大丈夫か。念のため病院に行って検査すると良い。それと今日はゆっくり休みなさい」


「ありがとうございます監督。志帆、来てくれるか?」


「もちろんだよ!監督、行っても良いですか?」


「あぁ。倉内のこと頼んだぞ」


「はい!」


その後、私たちは病院へと向かい検査を行った。私は悠太の両親に電話をし練習中に怪我をしたと伝え迎えに来てもらうことになった。


「検査結果が出たので報告させていただきます。倉内さんは野球をしており捕手をやっておられるということで練習中に今までの負担が重くのし掛かったのかと思われます。また、検査結果から見るに肩関節骨折と診断しました」


「それは完治するのですか?」


志帆は心臓のバクバク音を聞きながら医師に聞いた。


「個人差はありますが3か月程度で回復するでしょう。ですが再発する可能性があるため捕手としての出場をするのは控えてください」


「そう・・・ですか」


「ですが野球を続けることは可能です。ですが肩に負担がかかる外野手と捕手は厳しいかもしれませんね。自分も同じ経験があってその時は一塁手で出塁しました」


「なるほど・・・」


悠太は納得していたが私は何も言えずにいた。だがこれは悠太の意思であるため私が何か言う必要はないため見守るしかない。ギブスをつけ病院を出て迎えに来てくれた悠太の家の車に乗り込み自宅へと帰っていった。


帰宅途中、悠太は医師に言われた通り捕手から一塁手に転向することを決めた。私は悠太がどの守備位置になるのであればそれはそれで応援する。一塁手になることを監督にも伝えリハビリに励んだ。


それ以降、ほとんど練習中は話さなくなった。また、両親の仕事の都合により悠太は転校することになってしまい私は悠太に好きだと伝えられずに離ればなれとなった。


「今どうしてるかな・・・」


現在、久しぶりに幼馴染みの考えをしていると彼の夢を見たようだ。懐かしい気持ちもあったし今はどこで何をしているのだろうと考えた。いずれあったらたくさん話して見たい。

次回11月7日投稿予定

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