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一球入魂 -日東高校女子野球部-  作者: 照山
第2章 オールスターゲーム編
35/46

第35話 思い出

オールスター戦第1週第1・第2試合が終了し、東陣営の選出メンバーが解散し各人それぞれ自宅への帰路へと戻っていった。七緒は道中、軽めの交通事故を目撃した。七緒自信には怪我はない。また、普通車と普通車の軽めの接触があったらしい。


交通事故目撃後、七緒(以下私)はあの時の出来事が脳裏に浮かんだ。私が言うあの時の出来事言うのは思い出したくないもない記憶であったがこの交通事故を目撃し、思い出してしまった。


「(大丈夫かな・・・交通事故起こした人たち・・・)」


と考えながら私は家に着き、撮影してもらった今日と昨日の第1試合・第2試合のハイライトや私の打席映像を確認した。映像確認終了後、夕飯を食べお風呂に入り、軽めの運動とアニメなどを見ながら寝ることにした。


布団に入ると試合終了後の交通事故の事を思い出してしまった。あまり考えないようにしようと思い、眠りについた。



その日私は夢を見た。それは小学生の時に巻き込まれた交通事故の夢を見た。試合終了後に見た交通事故よりもひどく、私にとってかなりのトラウマである。


小学6年生の夏、小学生のみの野球の試合に出場するため母に車で送ってもらっていた。当時の私の家庭環境は父がその3年前に病気で他界しており母親一手で育ててもらっていたためかなり感謝している。その後は決して裕福な家庭環境ではないが母親の頑張りによって私が野球できる環境を作ってもらった。何か恩返しが出来まいかと小6にして考えていた。


しかし、交差点で母さんと今日の試合のことなどを話ながら待っていたときに事件は起きた。


「七緒~?今日の試合はどう?体調悪いとかない?」


「大丈夫だよ~今日は朝から調子が良いんだ~」


「お~頑張ってね?母さん今日は会社で行けないけど陰ながら応援してるよ」


「分かった・・・母さん前!前!」


私たちの車内から見えた眼前には猛スピードで突っ込んでくる中型トラックが見えた。そのときはどうして停止することが出来なかったのだろうと思った。聞いた話によると中型トラックの運転手が逮捕時の取り調べでは居眠り運転と飲酒運転をしてしまったらしい。かなりの量のアルコールが検出されたため私はその運転手に怒りを覚えた。


「きゃーっ!」


対向斜線から突っ込んできた中型トラックと正面衝突し重たい音を響かせた。事故の瞬間時が止まったような感覚がした。


「おい!お前今すぐ降りろ!」


事故を目撃した通行人によって対向斜線から来た中型トラックの運転手を引き釣り降ろし身動き取れなくした。また、他の女性の通行人も私たちの事を救出したが運転手の母だけは出てこなかった。


「大丈夫?怪我はない?今警察と救急車呼んだからね?それに・・・ユニフォーム着てるということは野球の試合にでも行くのかな?」


「うん!でもそんなことよりお母さんを助けて!」


「分かってるわ。でもね・・・」


運転手の方を見るとぐしゃりとつぶれてしまっていた。もし仮に助手席に私が乗っていたらと思うと恐怖で仕方ない。


「くそっ!お子さんのお母さん!大丈夫ですか?!今助け出しますね!」


しかし、通行人の応答に母からの返事はなかった。そして15分後、駆けつけた救急隊と警察が到着した。到着した警察官は中型トラックの運転手の身柄を確保し、多量のアルコールと居眠り運転をしていたため過失運転で逮捕されたらしい。また、救急隊によって潰れた車の破片などを退かし母を救出した。しかし、母は意識不明の重体であった。


「母さん!大丈夫!」


「お母さんの娘さんですか?あなたも怪我をしているようなので念のため共に救急車にお乗りください!」


「わっ分かりました!」


野球の試合どころではなくなった。救急車の中で私は監督やチームメイトに交差点で事故に巻き込まれたという報告を行い軽傷と重篤の母の付き添いをするという理由で欠場の意向を監督に説明した。監督は無事を祈ると言ってくれた。


それから20分後、私たちは病院に到着した。私の怪我の具合は擦り傷程度で済んだため今後の野球のプレーに支障を出ることはないが母の容態が気になって仕方なかった。それもそのはずで病院に着いた時点で母は心配停止状態で脚部が機能していない状態であった。救急車から下車後、すぐに母は手術室に入れられ緊急手術を受けた。しかし、手術終了後も母は目覚めることはなかった。


「母さん・・・」


それからというもの母の意識は多少はあったものの一瞬だけだった。一瞬だけ意識が回復した翌日、私の母は亡くなってしまった。母の死という非現実的なことが起き、私は膝から泣き崩れた。


「どうして・・・どうして・・・っ!」


それから母の死後、私は母の祖父母の実家と住んでいた家を行き来しながら生活した。その後、私は母のためにも一生懸命野球の練習や家事など困難を乗り越えていくことを誓った。


「元気でね・・・お母さん。私、野球も勉強も頑張るね!」


ー頑張ってね!ー


一瞬母の声が聞こえたのかと思ったが勘違いだったが背中を押してくれた気がした。私のために頑張ってくれた母を安心させることが出来たらきっと喜んでくれるだろう。

次回10月18日投稿予定(オールスター戦第2週)

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