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一球入魂 -日東高校女子野球部-  作者: 照山
第1章 ベストナイン大会編
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第3話 京田比奈はこれからも

紗也たちが野球部に入部して1週間以上が経過した。少しは慣れてきたかと思いきや少し疲れが見え始めかと思ったがしかし、1年生3人は意外にも練習にはついていけているようだ。


「部長、打撃フォームの確認をお願いします!」


比奈は部長の小越に打撃練習に付き合ってもらっていた。打撃フォームの確認や問題点などの修正をしてもらっていた。


「分かったよ。そうだね・・・少し左側に負荷がかかっているね。これだと左の腰傷めるかもね。中学校の時もこんな感じだったの?」


「中学・・・まぁはい」


「どうしたの?」


「いえ少し中学野球部時代のことを考えていました。心配しないでください」


「気になるよ。聞かせて」


「姉にも言っていないのですがいいですか?」


「良いよ?」


「では行きますね」




私には中学時代の野球部の試合で大きな失敗をした過去がある。私の中学校は古真島中学という野球中堅校に通っていた。


まだ私はレギュラーではなかったが守備は誰にも負けなかった。そして女子中学野球公式戦を勝ち進み、準決勝の鷲岳高校の試合で初めてスタメンに名を連ねることができた。


「今日は8番遊撃に比奈。いけるか?」


「はい!もちろんです!」


河藤久美監督は8番遊撃に私を起用した。決勝進出をかけた試合であったため手汗が酷かった。


この日の先発は涌田朱莉。公式戦4戦3勝1敗の投手が登板した。


『さあ涌田。今日はどのようなピッチングをするのか!4球目!松田打った!あーとショート京田の悪送球でランナー出塁!ノーアウト一塁!初スタメンの京田、緊張してしまったか』


初回から私のミスで出塁させた。周囲からは


「大丈夫だよ比奈。初めてで緊張するのはわかるよ」


「そうそう。落ち着いて」


と励ましの声をかけてくれた。しかし私はこの失敗を引きずってしまった。連日守備練習はしているがいざという時になると私はミスしてしまう。


初回の守備はそれ以外はミス無かった。しかし涌田先輩は4番バッター・小野叶香にタイムリースリーベースを打たれ失点した。



「(飛んでこないで・・・)


私はそう祈っていたがこういう時に限って眼前に白球が飛んできた。取ればショートフライの場面。


『あーと京田!ショートフライの場面で落球!本日2個目のエラー!これでワンナウトランナー一三塁。おっとここで河藤監督出てきました』


ショートフライ落球後、河藤監督が私の所に駆けてきた。耳元で話しかけ


〝大丈夫?初スタメンで緊張するのは分かるけど頑張って。それとこの失敗はバットで取り返してね〟


〝分かりました!〟


ショートフライ落球後の裏の攻撃、2ー1のビハインドで迎えたこの回は私に打席が回ってきた。対戦投手は当時エースだった加藤さんだった。


「(1球目はボール・・・次の球で打つ!)」


私は1球見逃した後、次の球で狙い打ちすると決め、加藤さんが投げた球を思い切って振った。当たらないかと思っていた打球はピッチャーライナー性の当たりであった。


『おーと8番バッター京田比奈の打球はピッチャーライナーかと思いきや投手・加藤の脇腹付近へ!痛がっているが何とかアウト!大丈夫でしょうか!』


私の打球は加藤さんの脇腹付近に命中した。加藤さんは痛みに耐えながらボールを一塁に投げ、アウトにした。しかし加藤さんの当たりどころが悪かったのかこれ以上投げられないと監督が判断し、投手交代となった。


「(私のせいだ・・・私のせいで加藤さんは・・・)


「大丈夫だよ京田さん!頑張って!」


ベンチに戻る途中、私に声をかけてくれたのは加藤さんだった。痛みを堪えてるはずなのに私の心配までしてくれた。とても良い人だ。


ベンチに戻り私は監督にこう言われた。


「残念だけど今日は交代した方が良いかもしれない。初スタメンで本当に申し訳ないけど小さなミスが多すぎる」


「分かりました。自分の練習不足です。すみません」


「失敗は成功のもと。今後も頑張って」


ここで私は守備機会にて交代を告げられた。私の代わりに出たのは西野帆奈と交代した。


「比奈、帆奈頑張るから」


「うん!頑張って!」


その後の試合展開は五分五分となった。先発の涌田さんは6回を投げて7安打3失点と力投し、最終回に登板した王田多美がきっちり3人で抑え5ー3で私の高校は何とか決勝に駒を進めることができた。


2日後の決勝戦では代打で出場したが空振り三振に倒れた。また、最終回まで同点という接戦を繰り広げ、延長にもたれた。


タイブレーク制度が導入される9回まで延び、登板したのは松野沙弥が2アウトまで追い込むも内角低めのチェンジアップを捉えられ、バットに命中した白球は放物線を描き、スタンドに打ち込まれサヨナラホームランで敗北した。


監督は私に最後までチャンスをくれたが私はことごとく潰してしまった。今思えば非常に後悔している



「こんな感じです」


話を終えると私の目にはわずかながら涙を浮かべていた。


「そっか・・・でも私も必死に練習して今があるから比奈ちゃんも頑張れば上手くなるよ!」


「相談乗ってくれてありがとうございます!私、これからも頑張ります!」


「よし!じゃあもうちょっと練習したら終わりにしようか」


「はい!」


比奈は過去の過ちを引きずっていたが部長の小越に話を聞いてもらい吹っ切れた。その後比奈は紗也も小越に打撃フォームを見てもらった。


そしてこの日の練習は終了し、部員全員でラーメン屋「私の道二郎」で夕飯を食べ帰宅した。





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