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一球入魂 -日東高校女子野球部-  作者: 照山
第1章 ベストナイン大会編
18/46

第18話 舞香のあの時

大東国戦終了後、部長の舞香は琴葉や彩也らに挨拶したあとすぐに帰宅した。


「(何で・・・あの時の記憶が・・・)」


そう考えながらいると自宅に着いていた。


「ただいまぁ~」


「お帰り~舞香。今日の試合ちゃんと見たわよ」


「それは良かった。夕飯出来てる?」


「もちろん!お風呂入って早めに食べときなさい」


2階の自分の部屋に荷物を置き、クローゼットからパジャマを取り出し1階へ向かう。夕飯の内容を見てみると私の好きなお好み焼きであった。広島出身の母にとってお好み焼きを作るのは容易である。それを横目に風呂へと向かった。服を脱ぎシャワーを浴び、汗や泥で汚れた体をしっかりと洗った。


「ふぅ・・・今日も結構疲れた・・・あと3日程度か」


汚れを隅々まで洗い湯船に浸かり疲れを癒した。ある程度湯船に浸かったあと、私は洗面所で濡れた体を拭き、ショーパンのパジャマを履いた。風呂後、私は両親と弟と共に夕飯を食べた。


「ねーちゃん今日の試合も見たぜ!デッドボール大丈夫だった?」


「少し痛かったけど大丈夫だよ」


私の3個下の弟の康太は15歳で現在野球部でレギュラーを掴もうと努力している最中である。一度康太の試合を見に行ったことがあるが全打席空振りと散々であったが康太の諦めない姿を見て自分も頑張ろうと決意した。


「それでねーちゃんもうあの時のはもう大丈夫のなのか?」


「こら康太、その話はしない約束!」


母が間に入って康太を注意した。


「もう大丈夫だよ!あの時とは違って部員のみんな優しいし。それに私部長だし!」


「それなら良かった・・・」



私にとってのあの時というのはとても嫌な記憶である。それは5年前の中学2年の頃のことである。まだ私が日東中学ではないとき私は野球部とサッカー部を兼部していた。


5年前 城永大学付属中学校 サッカー部専用グラウンド


「ちょっと!あなた!連携とれてないよ!」


「ごめん!」


「全く・・・野球部の練習が忙しいのは分かるけどあなたには期待しているの!だから真面目にやって!」


「分かった!」


5年前の私は何を考えていたのか野球部とサッカー部を兼部していて、ほとんど野球部の方に顔を出していたためサッカー部にあまり来ておらず私はボール拾いや怪我した部員の代替選手として出場していた。しかし、野球部の練習が忙しくなるにつれてサッカー部での練習時間が一週間に一回から三週間に数回ほどとなりサッカー部員との間に軋轢が生まれていた。


だから私はサッカー部に顔を出しても「えー?あの子誰?」「練習サボってるらしいよ」だったり「彼氏とイチャイチャしてるんだって」と根も葉もない噂を立てられてしまっていた。


そしてあの時というのがやって来た。この日は野球部がオフであったため普段は家に直行だがたまにはサッカー部に行ってみようと思ったとき私のロッカーを荒らしている5人の部員がいた。


「今日もどうせ来ないんだったらさぁ!あいつのロッカーぐちゃぐちゃにしようよ!」


「いいねそれ!マジあいつ野球部がどうこうとかいってさぁ。別に私は野球嫌いじゃないけどあいつの態度ってやつ?気にくわないよねぇ」


「ほんとそれ!《私はみんなより違うんだ》とかいうアピールでしょ?マジムカつくわ~!」


部室の私のロッカーを荒らし、ゲラゲラ笑い私の悪口を言いながら中にしまっていたユニフォームやサッカーシューズを踏んだりしていていた。


「(何で・・・?私そんなこと言った覚え無いよ?正しいこと言わなきゃ・・・)」


すると後ろでスマホをいじっていた部員と私の目が合った。


「あ!今日は珍しく来てる~!何で今日は来るの~?いつもは野球部がどうたらで忙しいくせにさぁ!」


「ごめんなさい・・・だから私のロッカーを勝手に荒らさないで・・・」


私の声はちゃんと届いているのだろうか。そう考えながら言った。


「あぁ?勝手に荒らすねぇ。ねぇみんな!この子いつも部活来ないくせにこういうときだけ生意気な口聞いてくるんだけどマジウケる~!」


その子の問いかけにみんなクスクス笑ったりゲラゲラと笑ったり動画撮影を始める子までいた。まだ先生は来ていない。よりによって今日は職員会議で遅れてくる。


「で?今日は何しに来たわけ?」


「今日は久しぶりに来てみようかなと・・・思って」


「えー!いつも来ないのに今日は来ようと思ったんだ~!都合良いね~!」


冷たい目で言われてしまい私は下を向いてしまった。


「こっち見てよ~」


と言われ「あなた邪魔だからこの部活出てってよ。ほらユニフォームとか」


そう言いながらロッカーを荒らしていた子からユニフォームやサッカーシューズを投げてきた。ユニフォームはキャッチできたがシューズがお腹や肩に当たり痛かった。これ以上いても嫌なことをされるに違いないと思い部室から出ようとした。


「おっとっと・・・なに私たちの許可なしに勝手に帰ろうとしてるん?」


「えっ?邪魔だから帰ろうと・・・」


「やっぱコイツムカつく~!殴っていい?」


「あまり強くしすぎるなよ~!先生にチクるかもしれないし!」


ギャハハハと笑いながらみんな私のことを見ていた。すると私の頬に数発のビンタと蹴りが入った。


「さすがにやりすぎだよ~加織~!クックック」


すると扉が開き顧問と部活調査の先生がやって来た。


「おーい!静かにしろ~!今日は部活調査の先生が来てるんだ!ちゃんとやれよって久しぶりだな舞香!どうしたんだ?」


「この子が勝手に転んだだけです~!ね!舞香?(分かってるよね)」


「・・・うん」


「そうなのか?加織」


「はい先生!」


しかし、先生は少し考えた様子を見せていた。


「まぁあそこについてる録音マイクで分かるんだけどね。今聞いてみるね」


主犯の加織は少々慌てていた。しかし、先生は録音マイクのデータをスマホに移し変えてデータを再生した。


「これは・・・おい!お前ら!やはり舞香に何かやったな!」


「私たちは何も・・・」


「嘘はその顔で分かる。なぁ舞香。正直に話してくれ。加織たちにひどいことされたな?」


「・・・はい。ロッカーを荒らされたりユニフォームやサッカーシューズを投げられたりビンタや蹴られたりされました」


私は涙を流しながら先生にそう伝えた。しかし加織は認めなかった。


「先生!でもこの子はサッカー部をいつも休んでるし口答えするし「それでも暴力を振るって良いというのは違うだろ」・・・っ!」


「確かに舞香は野球部の練習で忙しくてここに顔を出せてないのは分かっている。だがサボっているからといって舞香にお前らが不快なことをさせるというのは理解の範疇を超える。それでも加織は嘘を貫くのか?どうなんだ?」


その後、加織はとうとう自白した。少々行き過ぎた言動をしていたとして認めた。また、舞香に暴力やロッカー荒らしを加えたり動画撮影を行った加織ら30名の全サッカー部員のうち9名が停部処分、13名が退部処分、3名が停学処分、加織ら5名が退学処分となった。ちなみに舞香は退部した。そしてこの件が学校中に広まりサッカー部の評価や知名度は地に落ちた。


また、私の安全を考慮して先生は私の退部を認めてくれた。また、加織の両親から謝罪を受けたが私たち両親は許さなかった。


学校中に広がったことにより私は居場所がなくなったと思い当日に事情を聞かされた両親に転校したいと言ったら快く受け入れてくれた。


「もちろんだ舞香。お前が楽しく学校生活を送れるようにしてやる」


「先生には感謝しないとねぇ・・・舞香。今度はこういうことが起きないよう何か選ぶとき決めるときは1つにしなさいね?」


「分かった・・・」


このようにして私は日東中学に途中転入した。


「城永大付属中学から来ました小越舞香です。趣味は野球をプレーすること見ることです。よろしくお願いします!」


自己紹介が終わりクラスメイトから拍手を受けた。休み時間廊下ですぐに話しかけられた。


「すみませんあなたが転校してきた小越さんですか?」


「うんそうだよ。それがどうかしたの?」


「野球好きですか?」


「うん好きだよ。元野球部だし」


「本当ですか!ぜひ私たちの野球部に入ってくれませんか?」


「良いけど・・・あなたの名前は?」


「大野琴葉です!」



それが琴葉との出会いであった。それ以降私は何かを選ぶとき決めるときは優柔不断にならずきっちりとこれ!というようにした。また、野球部にも入りここまで楽しく過ごせてきている


「いつかまた先生に会えたらな・・・いけないいけない!明日の試合のために早く寝なきゃ!」


残り7試合、試合に出るかは分からないが恩人の先生のためにも頑張らなければならない。そう誓いながら眠りについた。

次回8月6日投稿予定

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