第15話 The ベストナイン大会 -第6戦 駒修学園戦- 再戦
3日目の第6戦、日東高校は駒修学園と試合を行った。以前練習試合を組んで日東高校が勝利したがこの試合ではどちらが勝つのか。
「よし、今日の2試合目はこの前試合した駒修との試合です。疲れがあると思いますが各自協力していきましょう。それではスタメンを発表します」
高原先生は駒修戦のスターティングメンバーを発表した。また、この試合から第5戦で欠場した雪峯が合流した。
日東高校 スターティングメンバー
1,与那国樹里(中堅手)
2,内田七海(遊撃手)
3,丸亀義美(右翼手)
4,乃木咲希(DH)
5,生方赤穂(二塁手)
6,大野彩也(捕手)
7,中島雪峯(一塁手)
8,青山すみれ(三塁手)
9,吉田穂香(左翼手)
P,上原礼子(先発)
日東の先輩は第2戦で登板した上原が登板する。一方の駒修学園のスターティングメンバーは以下の通りである。
駒修学園 スターティングメンバー
1,右京紫乃(中堅手)
2,鵜飼詩織(右翼手)
3,森野淳子(一塁手)
4,石川小百合(三塁手)
5.坂本夕美(遊撃手)
6,涌井彩希(DH)
7,川端由希(捕手)
8,ダヤン・ユキーナ(左翼手)
9,吉川奈緒子(二塁手)
P,松葉愛乃(先発)
である。以前の練習試合で途中から一塁守備に入ったユキーナはレフトも守れるため今日はそっちに入った。先攻は日東高校、後攻が駒修となり、試合がスタートした。
1回表、樹里が打席に立った。先発の松葉は多彩な変化球を投ずる。一球目のチェンジアップを空振り、二球目のスローカーブを打ち損じショートライナーに倒れた。続く七海の打席では一度もバットを振れず三球三振でアウトになった。2アウトランナー無しで義美が打席に立った。義美は久しぶりの三番に意気込んだ。
「(よし・・・ここで後続に繋げるよ・・・!)」
義美は松葉の六球目のフォークを下から突き上げるかのように打ち上げた。義美の打ち上げた打球はライト前に落ちた。この試合一本目のヒットを打った。二死一塁の場面で咲希が甘く入ったストレートを見逃さずにレフト前にヒットを放ち連続出塁を決めた。しかし、咲希の後続の赤穂が先制点のチャンスでピッチャーフライとなった。
「さぁ!抑えていくよ!」
「おー!」
1回裏、右京が打席に入った。彼女は日東の守備位置や弱点などを掴んでいる。先発の礼子は彼女の足の速さを知っているため内野前進守備を取った。右京は一球目から打っていきセカンド後方に行き、二塁手・赤穂がエラーし一塁に到達した。赤穂は遊撃と二塁の守備範囲であるがまだ二塁守備になれていない。続く鵜飼の打席では礼子の四球目のストレートを振りに行き、センター前へのヒットを放った。
「良いぞ詩織~!」
無死一二塁の場面で森野と石川に対してフォークとストレートと新しく覚えたナックルボールで連続三振を奪った。一二塁のチャンスで坂本は礼子のチェンジアップを高く舞い上げた。舞い上がった打球は左翼手・穂香のグラブからポロリと落ちてしまい、後逸してしまった。その間に一二塁ランナーが生還し2点を挙げた。さらに得点を積み上げたいが続く涌井がセンターフライに打ち取られた。
「ホームラン打つぞ~!」
「彩也~!どんどん打っていこう!」
0-2の場面で2回表に突入した。彩也の第一打席、第5戦から続いて松葉の五球目のストレートを当てて3号ソロホームランを放った。チーム最多のホームランを彩也は放った。第5戦を欠場した雪峯は母の思いを背負いながらセンター前に打ち返した。見事センター前ヒットを記録し、一塁上で天を仰いだ。無死一塁の場面ですみれは松葉の七球を打ち損じダブルプレーを取られ、ランナーがなくなった。先ほどの守備で後逸をした穂香はファーストゴロに打ち取られた。交代時、穂香は右腕に痛みを訴えた。
「先生、右腕に違和感が・・・」
「大丈夫?万が一に備えて交代しよう」
高原先生は穂香に守備交代を告げた。穂香に代わって部長の舞香に交代した。
日東高校 守備交代
吉田穂香(左翼手)→小越舞香(左翼手)
2回裏、川端が打席に立った。礼子は彼女に対して失投を投げてしまい簡単に右中間方向に放った。二塁打を放ち、チャンスを作った。しかし、ユキーナが空振り三振を喫したが吉川がボテンヒットを打ち一三塁とチャンスを広げた。右京に再び打席が周り、彼女は礼子の暴投の間に三塁ランナー生還後、ヒットを放った。
「(今日は守備の乱れが目立ちますね・・・)」
1-3となり、打席の鵜飼はバントの構えを見せた。だが、ファールを連発しバント失敗でアウトになった。二死二塁の場面で森野は礼子の高めのフォークやチェンジアップに振り遅れてしまい、サードゴロに倒れた。
「礼子、今日はここまでにしよう。お疲れ様」
「すみません」
2回3失点で礼子は交代となった。3回表に礼子に代わって登板するのは琴葉である。1イニング限定で登板させる。
日東高校 投手交代
上原礼子(先発)→大野琴葉(中継)
そして3回表、逆転のチャンスを作っていきたい場面で樹里に打席が周ってきた。1失点と好投を見せられている松葉に対して樹里は真ん中付近に来たストレートを振りに行った。バットに当たった打球はフェンス直撃となる二塁打を放った。ランナー二塁というチャンスの場面で七海はバントをした。七海はバント職人と呼ばれているほどバントが上手い。七海のバントに戸惑い、松葉は一塁への悪送球をしてしまった。無死二塁の場面でランナーを三塁に送ることに成功し一三塁のチャンスで義美が打席に立った。義美は松葉に対して一球も振ることが出来ず空振り三振に倒れた。二死の場面で咲希はチャンスを広げようと力一杯振るうも犠牲フライでとなったが1点を追加した。その後、2-3と1点差に迫る粘りを見せ、赤穂がレフト前にヒットを放った。そしてコンディションの良い彩也は松葉の五球目を強振した。
「(え?!2打席連発!?)」
彩也の打球は4号2ランとはならなかったが赤穂の猛ダッシュで同点に追い付いた。これで礼子の敗けは無くなった。続く雪峯は高めに来たボールを打ち上げてしまいショートフライに終わった。
「(同点か・・・ここで勝ち越さないと!)」
しかし3回裏、石川の打席では琴羽のスライダーを打ち砕くことは出来ず空振り三振に打ち取られ、坂本・涌井に対しても疲れに動じない強気の投球を見せ三者連続三振でこの回5分で終了した。琴葉と彩也の連携はとても素晴らしいのである。この回ゼロで抑えられた駒修は次の回でサヨナラ勝ちを決めるため代打陣に準備を促した。
「良くやった琴葉。次の回で勝ち越しを決めよう!」
駒修は松葉をこの回で降板させ、投手交代を告げた。
駒修学園 投手交代
松葉愛乃(先発)→祖父江美奈(中継)
4回表、最終回の攻撃には祖父江がマウンドに立ち、すみれと対戦した。すみれは祖父江の速球を打ち返し見事ライトへのヒットを放った。穂香に代わって出場した部長の舞香もライトへのヒットを放ってチャンスを拡大した。得点圏の場面で一二塁ランナーは樹里の打席にて盗塁を決め、樹里もヒットを放ちヒットエンドランで勝ち越しを決めた。樹里に続こうとするが七海と義美はタイミングが噛み合わず二者連続空振り三振に倒れた。咲希はセンター前へのヒットを打つも先ほどヒットを打った赤穂は空振り三振で3アウトとなった。
「よし。彩夏、頼みました」
「任せてください!」
日東高校 投手交代
大野琴葉(中継1)→小林彩夏(中継2)
4-3で勝ち越しを決めた最後の駒修の回では彩夏が登板した。4回裏、川端とユキーナに対して連続四球で一二塁とした。駒修は代打攻勢を取り吉川に対して梅本を出した。梅本は送りバントに成功し、一死二三塁のチャンスで大島櫻子が登場した。大島は一発出ればサヨナラの場面でピッチャーゴロに倒れた。ここで凡退したら試合終了というところで鵜飼は彩夏の3ボール2ストライクまで粘った。そして六球目、鵜飼は彩夏のストレートを見逃さなかった。
「(もらった!)」
鵜飼の放った打球はホームラン性の当たりだった。しかし、ポールの外側に入りファールになった。気を取り直しもう一度バットを構え、緩やかなカーブをバットに当てもう一度打った。彼女は確信歩きをした。
「(頼む!入ってくれ!)」
鵜飼の願い通り、サヨナラとなる2号ランホームランを放ち4-6で試合は終了した。駒修ベンチからメンバーが出てきて水を掛け合った。びちょびちょにも関わらず鵜飼ははしゃいだ。一方彩夏はマウンドで呆然としていた。今までの野球人生で一度もセーブ失敗したことない彼女にとって初めての経験で膝から崩れ落ちた。
「(これが・・・敗け・・・!くっそ!抑えたかった・・・)」
「彩夏、2試合連続で任せてしまい申し訳ない。今日はゆっくり休んで?」
「すみません・・・!」
試合終了後、明日のミーティングを終了した琴葉や彩也たちは彩夏を慰めるためカラオケに行ったりして気分をリフレッシュした。意外にも彩夏の歌唱力は高かった。一方の琴葉と彩也はアニソンを歌いまくった。
1 2 3 4 計 H E
日東 0 1 3 0 4 11 3
駒修 2 1 0 3× 6 4 1
勝利投手 祖父江美奈 2勝0敗1S
敗戦投手 小林彩夏 0勝1敗3S
本塁打 大野彩也(2表) 3号
鵜飼詩織(4裏) 2号3ラン
試合時間 1時間27分
今日の試合は日東守備陣のエラーによる失点が見受けられた。リフレッシュして改善に励んでもらいたい。明日の第7・8戦は早應と大東国との試合である。また、右腕を負傷した穂香は全治数週間程度の右腕の張りにより翌日以降の試合を欠場する。
次回7月25日投稿予定




