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迷うご先祖様

作者: ハウス

 昭和のある時代に、山上家という3人家族で暮らしている家がありました。


「おい、お酒を買ってきてくれ」


 その家では、お父さんは毎日お酒ばかり飲んで仕事もせず家でゴロゴロするばかり。

 

 それで段々とお金が減って家計が苦しくなるのでお母さんはお金を稼ぐ為、朝は新聞配達、そして子供の朝食を作り、後片付けをしたあと近くのスーパーで仕事をしていました。

 

 子供は学校から夜遅く帰宅したり、早く帰ってきても勉強もせずゲームをするか漫画を読んでいます。時々家に友達を連れてくることがあり、お母さんが差し入れを持って子供の部屋に入ると、シンナーやタバコをやっていることもありました。

 お母さんは仕事の疲れや子供の悩みで毎日クタクタで疲れていました。

 

 お父さんは数年前までは真面目に仕事をしたし、お酒は飲んでなかった。子供に対する躾もあったのにどうしちゃったのだろう。まるで人が変わったみたい。ひいひいおじいちゃん、ひいおいじちゃん、おじいちゃんともよくお酒を飲むし、仕事も真面目ではなかったと聞いていたけど、まさかお父さんまでとは。子供達もお父さんの真似をして帰ってきてから勉強もせず遊んでばかり。

 

 お母さんは何度も離婚も考えましたが子供の為を思い踏みとどまり、何とか夫を立ち直らさせる方法はないかと毎日悩んでいました。

 

 ある時スーパーでの仕事が終わり車のある駐車場に行く途中で,D宗教団体の信者がチラシを配っていました。

 何のチラシか気になったので受け取って見るとそこには、あなたの悩みひょっとすると霊障ではと書いてある部分に目が留まり、もしかしてお父さんは霊障かもと思うのでした。


 お母さんはお父さんをチラシに記載のある住所のD宗教団体の施設に連れていき教祖様にみてもらうと

 

 「悪霊じゃ、悪霊に取りつかれておる、除霊が必要じゃ」


と言いました。


 お母さんは


「除霊をお願いします。いくらくらいかかるのでしょうか」


と聞くと

 

 「20万で除霊を行う、どうしますか」


と教祖様は質問するとお母さんは

 

「除霊をお願いします」


と言いました。

 教祖様は除霊を行い


「これで大丈夫じゃ」


と言いました。

 お母さんは大喜びして教祖様にお礼を言ってお父さんを家に連れて帰りました。

 それからお父さんはお酒は飲まなくなり、約2週間後には土木の仕事に就いたのですが、3カ月くらいするとまた大酒を飲むようになり、仕事もさぼりだしクビになりました。

 

 困ったお母さんは何とかならないかと悩み友人に相談するとY宗教を紹介されました。

 友人と一緒にお父さんを連れてY宗教の施設に行き教祖様に相談すると


 「お父さんには亡くなったご先祖様が憑いておる、まず除霊をして引き離してしまおう」


教祖様は言い除霊を行いました。

 続けて教祖様は


 「ご先祖様に酒癖の悪い男性がおってな、お酒を飲み仕事もせず借金まみれで死んだようだ。この男性は生前あの世を信じておらず、死んだ事にも気づいておらず、どうしてよいかわからないので子孫に助けを求めてきている。子孫の肉体に入っているので見た目は子孫でも精神はご先祖様なんだ。それで仕事もせず大酒を飲んでいるのだ」


 と答えました。

 お母さんは教祖様に


「前回D宗教団体にみてもらい除霊をしたところ酒癖が治り働くようになったのですが、3カ月くらいするとまたお酒を飲むようになり仕事もさぼるようになりました。なぜでしょうか」


と質問すると教祖様は


 「そこの教祖には、かなり強力な悪魔がついておるのだ。強い悪魔が一時的に弱い悪霊を追い払ったんだろうがまた戻ってきたんだろう」


と答えました。


 「お前さんの家庭の場合は、ご先祖様が死んでいることに気付いておらず、どうすればよいのかわからずにいる。だから子孫の方が死んでもあの世があり天国、地獄は存在すると信じる事。あなたはお父さんの事ばかり言うが、自分は悪くないのか、自分には何一つ原因はないのかよく考えなさい、瞑想して心が落ち着いてきたら自分の行動、言動を反省しなさい。Y宗教の教学の本を1冊あげるから学び日々実践する事だ。またご先祖様が邪魔しにきている思ったら再度除霊をするからここにくるといい」


と教祖様は言いました。


 お母さんはお父さんはどのようにすればよいのか尋ねると、


 「ご先祖様に取り憑かれるという事は波長同通の法則で何か似たような性質があったという事だ。よく反省して原因を改善する事。明るくサッパリした性格になるように努力し、ちゃんと仕事も真面目にする事。とにかく根気よく努力する事だ。ご先祖様は子孫の学んだ事や、生き方を見て自らの過ちに気付いて離れていくだろう」


教祖様は答えました。

 お母さんは

 

 「私達以外にも霊障の方はいるのでしょうか」


質問しました。

 

 すると教祖様は

 

 「そこのご婦人を見てみなさい。数年前に夫をガンで亡くしたのだが、亡くなった夫が腰にしがみついておる。家族に話しかけても会話ができないし、どうしていいのかわからずにいる。それでご婦人も夫と同じガンなったようだ、このままではご婦人もガンで死んでしまうだろう」


 さらに続けて


 「あの奥にいる男性には悪霊が6人ついておる。男性はすぐカッーと怒る。職場の人や友人や知人の粗探しばかりし、嫌なことや何か失敗すると全て周りの人や環境が悪いと言う。それで波長同通の法則で地獄から男性に似たような悪霊がきておるのだ。男性は死んで霊になると6人の悪霊に体をつかまれ地獄に連れ去られるのだよ」


と答えました。

 お母さんは教祖様にお礼を言って帰宅しました。


 帰ってからお母さんは早速もらった本を何回も読みました。そこには愚痴を喋るとゴミの山が出来ること、怒って、心を波立たせてしまうのは、自分自身を不幸にする行為だということなどをが書かれていまして自分に当てはまることばかりだと思いショックを受けました。

 

 次に瞑想して自分の心の中を見つめていきました。

 見えてきたのは、数年前までお父さんが仕事から帰ってくると近所での出来事や子供の勉強の出来なさ、収入の少なさなど愚痴や不満ばかりを言っている姿が浮んできました。

 

 お父さんに対して何度も何度も給料が少ないと言い、子供の出来が悪いのは全てお父さんのせいよと言ったこと。なんて嫌な性格をしていたんだろう。お父さんが仕事をしなくなって、自分が仕事を増やさなければならなかったのは自分に間違いがあったからだ。お母さんは反省しました。


 お母さんはお父さんを連れて職安に行ったり、求人誌を見たりして一緒に仕事を探しました。

 最初、ガードマンの仕事でしたが仕事から帰ってくるとお酒を飲み、時々今日は体調が悪いからと言って休んでいました。

 給料日の日、仕事から帰ってきたお父さんから給与明細をもらい見てビックリしました。時々休んでいるにしては金額が少なすぎる、おかしいなと思い給与明細を見ていると出勤に日数が少ないのに気が付きました。


 お母さんは


 「出勤日数が少なすぎるけど、朝出かけると言ってどこに行ってるの」


とお父さんに尋ねると、最初は沈黙していたが


 「すまん、実はパチンコしてた」


と言って頭を下げました。


 お母さんは段々と頭に血が上ってきて怒りがこみ上げてきたが、怒ってはいけないと心の中で思い、数回深呼吸をして自分を落ちつかせるようにしました。

 お父さんが真面目に仕事をしなくなったのは、私が愚痴や不満ばかり言ってきたからもあるのだから、ここで文句を言ったり怒鳴りつけても真面目に仕事をしないだろうと思い、お母さんは

  

 「そっか~。パチンコに行ってさぼってたのか、でも今度からは真面目に仕事にいってね、あなたは本当は真面目で努力家なんだから、やれば出来るはずよ」


 と言いました。

 それから毎朝お父さんの出勤時に


 「今日もがんっばってね」


と言い、給料日には

 

 「今月もありがとう」


と感謝の言葉を口にするようにし、愚痴や不満を言いそうになったら深呼吸をして自分を落ち着かせるよう努力しました。

 お父さんは時々パチンコをして仕事をさぼっていましたが、約1年経ったころには仕事も休まなくなりお酒も飲まなくなりました。

 それから数か月経った頃には家族全員に笑顔がでるようになり家庭の中が明るくなりました。

 お母さんはお父さんを連れてD教団に連れていき教祖様にご挨拶に伺いました。

 教祖様は


 「ご先祖様はいなくなったようだ。よく頑張ったな。ご先祖様もあの世があると理解し、あなた達の生き方を見て自分の間違いに気が付いて成仏できたのだろう。また困った事があったら相談に来なさい」


と言いました。

 お母さんとお父さんは何度もお礼を言い家に帰りました。

 


 



 


 

 

 


 






 












 




 

 

 






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