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3.前世王子の帝国皇子は、前世の出来事の真偽を探る

俺は一年前にカンダルス皇国から隣国のリンデール王国に来ていた。そして一週間前に学園に入学する予定だった。

しかし急遽予定を変更することになり、俺は国に戻ってきた。


ことの発端は、一週間前の入学式に遡る。





ーーーーーー




俺は、身分のしがらみから一時的にでも解放されたくて、身分を隠し、男爵令息として学園に入学することになっていた。

この国に来てまで、皇子という身分に学生生活を邪魔されたくなかったからだ。

学園の校長には、俺の父である皇帝を経由してすでに話を通していた。 


そして、入学式当日。


俺は、男子ばかりの騎士科の席に一人の女子生徒が座るのが見えた。

ほとんどの女子は淑女科なので、間違えているのかと思い声をかけた。

遠目でみてもとても美人だと思ったが、近くでみたら、それはもう、桁が違った。


腰まではありそうな、頭頂部で高くポニーテールにした輝くプラチナブロンドに、少し吊り上がった猫のような金の瞳。


その姿をみて俺は既視感に囚われた。


しかしそれが何だったのか気にすることなく、その女子生徒に話しかけた。


そこで分かったのは、彼女が貴族令嬢でありながら騎士を目指しているということ、とても表情が豊かだということだ。

さらには、可愛らしいとまで言われ、思わず言い返してしまった。


彼女がそう言った時の笑った顔が、記憶の中の知らない誰かの笑顔と、重なった気がした。





ーーーーーー




俺はこのリンデール王国の第三王子でレオハルトという名前だった。


そして護衛騎士である一人の少女に片想いしていた。


ちょうど想いが通じ合い、舞い上がっているところに、一番上の兄、次期国王の第一王子が、彼の部屋で無くなっていたという報告が入ってきた。


俺は第一王子である兄のことが大好きだった。


だから、信じられなかった。


あの可愛がってくれていた、あの兄が・・・・死んだ、と。


急いで王宮内の兄の部屋まで行くと、立ち入り禁止となっていて本当のことなんだと、やっと理解できた。


それからは、死んだように毎日を過ごした。


唯一、愛している人からは「私のためにも、前を向いて生きろ!」と叱咤されたが、それでも、大好きだった兄の死は受け入れられなかった。


俺と2歳差の兄、第二王子は、とても権力欲が強く、国王の座に固執していた。

次期国王の第一王子を殺せば、国王の座に着けると考えていたのだろう。


奴はそれを実行した。


そこまで考えて俺は、奴に対して、兄を殺したことに強い憎しみを覚えた。


それからは、奴に対する復讐心だけを胸に生きた。


国王の座に固執するくらいだから、少しでも自分の邪魔をする可能性のある危険分子は排除しようと奴が考えることぐらい、普通の思考であったなら分かったはずだった。


しかしこの時の俺は、奴に復讐することだけを考えていた。

だから、そのことに気付かなかったのだ。


そのせいで、俺は愛する人を危険に晒した。


結果、奴が送ってきたであろう大勢の暗殺者に、俺を最後まで守ろうとして、殺された。

一緒に戦った俺も足に怪我をして出血多量に陥り、彼女が息絶えてから数十分後に俺も意識を手放した。


俺は、奴に復讐も果たせず、愛する人も自らのせいで死なせてしまった。


彼女は死ぬ間際まで、掠れた声で繰り返し、俺のせいじゃないと言っていた。血を口から吐き出しても、彼女は最後まで俺を庇ってくれていた。


死ぬ時に俺は、もし二人とも生まれ変わったなら、今度こそ共に生きようと、願った。





ーーーーーー




・・・・たった今、思い出した。


さっきは気にしなかったが、あの女子生徒の笑った顔が重なって見えたのは、前世で俺の護衛騎士だった女性の笑顔だったのだ。


彼女は、前世で俺が愛していた人の生まれ変わりかもしれない。

前世の彼女も、輝くプラチナブロンドに、猫のような金の瞳をしていた。


ただ、油断はできない。

俺たちが転生しているのなら、兄だった第二王子も転生している可能性がある。

大好きだった方の兄が転生してくれているのなら、それはもちろん、嬉しいが。


そのように考えていたら、奴に対する憎しみが再び蘇ってくる。

今の精神状態なら俺はたぶん、奴の転生体を見つけたら即襲い掛かってしまうだろう。

しかし、実際にはそんなことはできない。

もしやったら、狂った人間による殺害だとされ、牢獄されて断頭台行きになってしまう。

この国では、当然だが無闇な殺害は犯罪になるのだ。


そこでふと、前世の俺たちの歴史がどのくらい伝わっているのか気になった。


前世の時代から、もう1000年以上は経っている。

歴史が正しく伝わっていない可能性は十分にある。


なので俺は一旦国に戻り、俺たちの前世の歴史について調べることにした。

なぜ、カンダルス皇国以外の国の資料があるのかといえば、我が国カンダルス皇国は裏の組織である暗殺部隊や諜報部隊を多く抱えている。


中でも腕利きの諜報部員が他国の城に潜入し、資料を入手してから頃合いをみて、国に戻ってくる。

入手した資料はいざという時に、弱みとして握ることができるので、必ず皇帝に確認をしてもらってから保管するのだ。



皇国の皇城には、閲覧禁止の資料が多くある。

そして、他国から盗んできた資料のほとんどは閲覧禁止資料となっている。

閲覧できる本や資料はほとんど読んでしまっているが、その中に今回調べたいことは無かったと記憶しているのでおそらく、閲覧禁止資料の中にあるのだろう。

閲覧禁止のものの中には機密情報が載っているものもあるので、通常、普通の貴族は見ることができない。

しかし俺は皇子なので、特別に機密情報が載っている資料以外ならば読むことができるのだ。





ーーーーーー




そして、冒頭に戻る。


今俺は、カンダルス皇国皇城の情報室にいる。

情報室とは、皇族のみが見れる閲覧禁止資料がしまってある部屋のことだ。


前世の歴史についての資料は、だいぶ奥にしまってあった。




「ええと・・・リンデール王国519年8月23日、第二王子死亡。死因は暗殺・・・・・・どういうことだ?

この日は、あの兄・・・第一王子が暗殺された日じゃないのか・・・・?」



・・・・一体どうなっているんだ?


シリアス回でした。

嫌な人はごめんなさい:;(∩´﹏`∩);:

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