2.公爵令嬢は学園に入学する
1話目より長くなってしまった・・・(´・_・`)
そして色々あったが、お父様に認められた日から8年が経った。月日が過ぎるのは早いものである。
今日は、ついに王立リンデール学園に入学する。当初の予定通り、騎士科を選んだ。
今は馬車に揺られて王都にある学園の入学式に向かっている最中だ。
「着きましたよー」
学園に着き、我が家の使用人である御者兼執事見習いのカークが馬車の扉を開けてくれる。カークは少々、変わった話し方をするのだ。
「ありがとうございますわ」
騎士を目指すとはいえ、私は公爵令嬢であるため公の場では粗雑な言葉遣いはできない。なので、学園に入学する前の3年間、みっちり淑女教育をお母様直々に課された。お母様は元王女で、この公爵家に嫁いできたので、立ち居振る舞いやマナーは完璧だった。
そんな感じで、私も淑女教育をクリアすることができたのだ。しかし、お母様の基準はとても厳しかったので昨日ギリギリOKをもらったばかりだった。
「いえいえー。いいですよー」
馬車から出て見えたのは、前世では見ることも出来なかった、お城のように大きな学園だった。我が公爵邸も大きいが、その比ではない。
正面ゲートの両側には、淡いローズピンクの花の木が植えられている。落ちてきた花びらがそよ風に吹かれ、舞っていてとても幻想的だ。
通ると、先程正面ゲート越しに見えた、赤茶色のレンガ造りの建物が建っていた。そこにも玄関がある。
二重に入り口があるらしい。どちらの入り口にも衛兵が直立していて、警備が厳重なことがわかる。
入学式の会場である外ホールにはすでに100人ほどの令息令嬢が集まっていた。中には数人、平民らしき生徒もいる。おそらく特別枠で入ったのだろう。特別枠とは、平民でお金が無くても上位の成績を取れば奨学金が支給される制度だ。ただあくまでも借りたお金なので、学園街という学園の敷地内にある大規模な街で、清掃や数多くある店の何処かでアルバイトなどをして、少しずつお金を返していく。
席は、騎士科と淑女科で分かれているらしい。ほとんどの女子生徒は淑女科で、男子は全員騎士科を選んだらしい。女子の私が騎士科の席の方へ進んでいくと、やはり異質なようで、周囲に奇異な目で見られている。
「おい。おまえ、女子なのになんで騎士科にいるんだ? 淑女科はあっちだぞ?」
席に着くと早速、声をかけられた。淡い金髪にエメラルドグリーンの瞳をしている。瞳は掛けている眼鏡から、ちらっとしか見えなかった。せっかく綺麗な瞳なのに、もったいない。イケメンなのも分厚い眼鏡で隠れてしまっている。そういえば、前世のレオハルト殿下も全く同じ色をしていたな。
「いいえ、間違ってませんわ。私は騎士になりたいんですの。だから心配は無用ですわ。親切にどうもありがとう存じます」
「は? 女子が騎士? そんなことありえるのか?」
「実際に私がここにいるではありませんか。学園側も承認済みですわ」
「・・・そうか。いらん心配だったな。それとたぶん、女子がいることに難癖付けてくる輩がいると思うから、気をつけろよ」
「・・・・・・あなたは難癖を付けにきたのではないんですの?」
「俺は違うッ! 勘違いするんじゃない! そもそも俺はそういう奴みたいに狭量ではない!」
逆ギレされてしまった。言い出し方がそれっぽかったので、ついそう思ってしまった。しかし、注意点を教えてくれるぐらいなので、いい人なのだろう。友達になれそうだ。
「そうだったんですの」
「・・・・・わかったなら、いい」
「ふふっ。可愛らしいですわね」
「はあ!? 俺は可愛くなんてない!!」
「あ、あら。口に出てしまったようですわ。男の人は可愛いと言われても嬉しくないですわよね。失礼致しましたわ。」
「・・・もういい。俺はもう行くからな!」
「またお会いしましょう」
「・・・・・・・・・」
友達になろうと思って言ったのだけど、もうすでにどこかに行ってしまっていた。
「・・・これより、第103回入学式を始めます。初めに新入生代表挨拶です。新入生代表、リンデール王国第二王子レイン殿下、お願いします」
もう始まるらしい。
ちょっとした知識として、この国に王子は2人いる。第一王子ブライアン殿下が側妃の息子で、今年私達と一緒に入学した第二王子レイン殿下が正妃の息子だ。
側妃は豪華なドレスやらアクセサリーやらを大量に買って、散財しまくっているという。その息子である第一王子は、聡明な陛下の血をほとんど引き継ぐことなく、側妃のアメリア様と共に王宮では傲岸不遜に振る舞っているらしい。
しかし、レイン殿下は、陛下と正妃の聡明さをそのまま受け継いでいて、とても優秀だそうだ。
アメリア様が側妃になり、王宮に住まいを移してからは、王宮は常に殺伐とした雰囲気だ。
前に私も父に付いていって王宮に入ったことがあるが、まさにそんな感じだった。
国王陛下は正妃のマーガレット様を愛しているが、なかなか子供に恵まれず、元から陛下の妃の座を狙っていた侯爵家の令嬢を、マーガレット様が伯爵家の出だということを弱みにされ無理やり側妃として娶らされたんだそうだ。また、その侯爵家は代々宰相を務めている家系で国王陛下でも無碍には出来ず、結果的に側妃として召し上げることになったらしい。
心の広い正妃マーガレット様は、そのことを責めずに受け入れた。でも陛下として見れば、愛する人に側妃を娶ることを受け入れられたら傷付くのではないだろうか。
この話は貴族なら、ほとんどが知っていることだ。
噂ではこれ以上、国費を使われてはまずいため、そして王子と妃としての役割を果たしていないということで今現在、陛下は側妃アメリア様と第一王子ブライアン殿下を失脚させる機会を狙っているらしい。
しかし、散財と義務放棄だけでは、失脚させるには足りない。
更に調べているらしいが、なかなかボロが出ないそうだ。
と、まあ、知識披露はここまでにして、レイン殿下のスピーチを聞かないといけない。
と思ったら、もう終わっていたらしく、今はもう新入生を担当する教師の紹介まで進んでいた。
更新頑張るので、よろしくお願いします〜!