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それでも、生きていた  作者: sinnemina
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5話

眼前にはまだニヤニヤと笑っている神が僕の反応を楽しむ様に見ている。話題を逸らしてみるか。




アキラ「それで、頼みたい事ってのは?」




神「ん? ああ。簡単な事だよ。僕が創った異世界に行って貰いたいんだ。」




アキラ「何をしたらいいんだ?」




神「いや、特には何も。」




アキラ「……は?」


思わず素っ頓狂な声を出してしまった。神とやらの目的がまるで見えないからだ。




神「君の好きな様に生活でもしてればいいよ。別にやって欲しい事がある訳でも無いから。特に期待もしてないし。」




アキラ「何の為に行くんだ?」




神「娯楽だよ。」




アキラ「娯楽?」




神「そう、君達の世界にもテレビや映画なんてあるだろう? それと同じで君に主役でも演じて貰おうと思ってね。」




ようやく理解した、こいつを楽しませる為だけに異世界は創られ、僕はピエロを演じる為に生き返らされた、だとしたら。




アキラ「お前は命を何だと思ってるんだ!?」


語気が強まる。





神「君はその命を軽々しく捨てたけどね。」





言葉に詰まった。正にその通りだ、こいつの言う通り僕はさっき死んだ。自殺でだ。そんな僕に言う資格は無いのだが、




アキラ「異世界の住民は関係無いだろ?」




神「別にいいだろ? 僕が作った物だ、君にどうこう言われる筋合いは無いよ。」





アキラ「確かに異世界の人達も創造主であるお前に感謝してるかもしれない。だけど、お前は間違っている!」


あの世を見てきた僕は今なら胸を張って言える。命を弄ぶ行為なんて間違っている!





神「ははは! 君は二転三転したりと忙しいね? 今度は、あくまで僕に楯突くんだね? 媚を売ったりしないのかい?」


高笑いを浮かべながら神は言う。





アキラ「お前のご機嫌を伺ってどうなる? 機嫌を損ねたから殺すってか? 生憎だがお前が怖い訳じゃない! 死ぬ事が怖いだけだ!」




そうだ、遅かれ早かれいつかは死ぬ。回避できる方法などない。だから、今また死ぬ事になっても諦めよう。そう思えるほど、こいつの言動に対して冷静でいる事が出来ない。





神「へー、そうかい。今なら特殊能力や特別な環境を与えてから異世界へ送ってあげてもいいんだよ?」




アキラ「信用出来ないやつから信用出来ない物を貰っても意味が無いだろ。例え本当に特殊能力を貰えたとしてもお前は馬鹿にするんだろ?」




神「いやいや馬鹿になんてしないよ。ただ、僕の人間観察がより楽しめるんだよ。」





アキラ「それが馬鹿にしているんだ!!」


僕は今度は怒りで顔を真っ赤にしてしまった。



神「おいおい、そう熱くなるなよ。気楽に考えて行ってきな。」




アキラ「ふざけるな! 僕の人生を笑うんじゃない!」


こいつと話していて段々と腹が立ってきた。





神「全く、面倒だな。それじゃあこうしないか? 」




アキラ「何だ?」




神「笑い者になるのが嫌なんだろ? だったら賭けでもしないか?」




アキラ「賭け?」




神「ああ、僕と君の勝負の舞台に異世界を使おうじゃないか。」




アキラ「勝負って何だ? バトルでもするってのか?」




神「はははっ! 平々凡々な君が僕に勝てる訳無いだろ。」




アキラ「イチイチ、イラつかせるやつだな。じゃあ、何をするんだよ?」




神「ん〜、そうだな。それじゃあ、かくれんぼはどうだい?」


かくれんぼ? あの子供の遊びのか? あんまりやった事が無いんだよな。ましてや大人になった今では、




アキラ「かくれんぼ? 僕が異世界で隠れればいいのか?」




神「う〜ん、それでもいいんだけど、異世界に君を転送するのが僕の役目だろ? だからすぐに君を見つけてしまった場合、不正を疑うじゃないか?」




アキラ「確かに、送る側は位置を把握してるからな。お互いの為に止めておくか。」




神「そうだね。それじゃあ、君がオニをしてくれ。」




アキラ「わかった、それで僕がお前を見つけたら勝ちでいいんだな?」




神「ん? いや、僕は行かないよ。」




アキラ「は? どういう事だ?」




神「僕が隠れる側でも不正を疑うかもしれないじゃないか? 例え、君の無能の所為で見つけられなかったとしても。」




アキラ「じゃあ、どうやって勝負するんだよ!?」




神「僕は代理人を立てるよ。」




こいつはどこまで舐め腐っているんだ。


こいつは自らの手で勝負することもしないというのか!?いや、これはこいつなりのフェアなやり方なのかもしれないな。まだ様子を見よう。




アキラ「代理人を立てるって誰をだ?」





神「そうだね、適当に人間を一体作ったら送るよ。」





アキラ「だからそれを止めろと言ってるんだ!」




神「はいはい、わかったよ。それなら向こうの人間を一人使おう。」




アキラ「……まあ、それならいいか。その人の特徴とかは教えてくれるのか?」




神「異世界に着いたらヒントでも出しておくよ。」




アキラ「わかった、それで制限時間はどうする?」




神「君が死ぬまででいいよ。」




アキラ「見つけるまで僕は元の世界には帰れないのか?」




神「蘇生までしたんだから御の字だろ? その上、送迎までしろって? 随分と図々しいことを言うね。」




アキラ「……そうだな、そうだったな。」


残りの人生は異世界で過ごすのか、まあ、仕方ないな。





神「その件にも関わるけど賭けの内容を決めてもいいかい?」




アキラ「ああ、どんな内容がいい?」




神「君が勝ったらどんな願いも一つだけ叶えてあげるよ。」




アキラ「…何でもか?」




神「ああ。 元の世界に帰りたい! 金持ちになりたい! 不老不死になりたい! 過去をやり直したい! 世界征服をしたい! 全知全能になりたい! 何でもござれだ。」


そしてまた嫌らしい笑みを浮かべて言った、





神「神を殺したいでもいいんだよ?」





アキラ「本当に叶えてくれるのか? 嘘をついてるだけじゃないのか?」


訝しげに神を見た。




神「嘘? 嘘なんて雑魚が使うものだろ? 神である僕が君に? そんな事する必要が無いだろ。」


フッ、と鼻で笑ってくれたよ。




アキラ「それもそうだな、それに関しては信じよう。僕が勝った時の内容はわかった、負けた時はどうなる? もう一度死ぬだけか?」




神「いや、僕のオモチャになってもらうよ。」




アキラ「って言っても敗北条件は僕が死んだ時だろ? 僕の死体でもオモチャにするのか?」






神「何を言ってるんだい?」


神は首を傾げた後、こう告げた。






神「もう一度生き返らせてあげるよ。」




そうだった、こいつはこういう奴だった。




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