side 神
アキラ「僕とお前の出会いを無かった事にしてくれ。」
先程、ゲームが終了し、アキラの願いを叶える段階になったのだが、何だその願いは!意味を分かって言っているのか!?
アキラ「…少し違うな、僕とお前が出会わなかった世界に創り直してくれ。」
ダメだ、アキラの考えがまるでわからない。心を読む能力を使って、アキラの心を読んでみよう。
アキラ「叶えられるか?(どうせ出来るんだろうな。)」
アキラの声が聞こえてくるのと同時に思考が読めてくる。
神「ああ、可能だ。しかし、その願いの意味が分かっているのか?」
アキラ「分かっているさ。(これしかないんだ。)」
神「それで惨劇も無かった事になるけど、タシスが心変わりをして実行する可能性もあるんだよ?」
アキラ「だが、事件のキッカケも起こらない。(僕が行かなければ。)」
神「また僕が別の人を異世界に送り込む可能性だってあるかもしれないぞ?」
アキラ「そこまでは責任持てないよ。(送らない可能性だってあるしな。)」
神「誰の記憶にも残らなくなるんだぞ?友人も、恩人も、恋い焦がれた人からも、異世界で出会った全員がアキラの事を忘れてしまう!」
アキラ「まあ、どうせ大した人数と知りあってないしな。(悲しいなあ。)」
神「それだけじゃない、アキラ! 君も、君の記憶も無くなってしまう。 この異世界で得た経験も思い出も全てが無かった事になる。全てが無意味となるのだぞ!」
アキラ「そうだよ、初めからそうすればよかったんだ。(元凶は僕だからな。)」
神「どうしてだ?」
アキラ「全てのキッカケは思念体、お前なんかじゃない。僕だったんだ。僕が自殺を図り、お前の甘言にのせられ、異世界に来た。そして、僕が来たせいで悲劇が起こった。あの世界にとって僕は異物なんだよ。(だから消えるべきなんだ。)」
神「僕と出会う前の君は死んでいた。つまりもう一度死ぬんだぞ!?」
アキラ「だけど、皆が生き返る。(僕が死ぬ代わりにね。)」
神「あんなに死ぬのを怖がっていたじゃないか、なのにどうして?」
アキラ「遅かれ早かれいつかは死ぬだろ。(嫌だ、死にたくない。)」
神「だからといってアキラが死ぬ必要など無いだろ、何なら願いを増やしてもいいし、全知全能になる事も叶えられるよ。」
アキラ「何だよ、何でそこまで引き止めるんだよ?(生きたくなってしまうだろ。)」
神「僕にも分からないよ。」
自分の気持ちが分からなくなってきた。ただ、何故だかアキラを失うのが惜しくなってしまった。
アキラ「それで、全知全能になるとか願いを増やすだの提案は却下だ。(この願いのままでいい。)」
神「何でだ?アキラも死なないし、あいつらも死なないだろ?それにアキラが死んだ後にあいつらに不幸が訪れるかもしれないぞ。見守ってあげなくていいのか?」
アキラ「僕が生きたいと、欲を掻いた結果がこれだろ?本当はあの時に死ぬべきだったんだ。ズルをしてはいけないって事だよ。それに、ファルザさん達ならきっとどんな困難も乗り越えていけるさ。(もう何も背負いたくない。)」
神「どうしてもやるのかい?」
アキラ「ああ、やってくれ。(決心が鈍ってしまう。)」
神「何でそこまで頑ななんだ!?現世の未練は無いのか?」
アキラ「ああ、初心に帰ろうと思ってね。(むしろ、未練を晴らそうとしてるのさ。)」
神「死んだ奴なんてどうだっていいじゃないか、誰もアキラを責めたりしないよ。」
アキラ「あの日の記憶を忘れたいんだよ。(僕が責めるよ。)」
神「そうだ、ならアキラの記憶を消すのはどうだい?これなら死ななくて済むよ。」
アキラ「いや、それならファルザさん達を助けたい。(僕一人が幸せになるのは間違っている。)」
神「あいつらはそれで幸せになるかもしれないよ。でも、それじゃあアキラの幸せはどこにあるんだい?」
アキラ「言っただろ、初心に帰るって?僕は苦しむのが嫌で死を選んだんだ。(心が苦しい、痛いんだよ。)」
アキラ「楽になりたい。ただ、それだけだよ。(赦されたい、何も無かった頃に戻りたいんだ。)」
神「…そうか、それが君の望みか。」
アキラ「ああ、もう他に何も望まないよ。(望む資格などないから。)」
神「二ついいかい?」
アキラ「何だ?」
神「アキラの願いを叶えるにあたって、僕の記憶も消さないとだが、僕だけは記憶を残したままでいいかい?」
アキラ「何が狙いだ?(悪用するのか?)」
神「いや、何もしないよ。願いを履行出来たかの確認をする為さ。」
アキラ「わかった。(こいつは嘘を言わないから大丈夫だろう。)」
神「…ありがとう。もう一つはアキラがここにいた証をくれないか?」
アキラ「証?」
神「ああ、何でもいい。何か残してくれないか?」
アキラ「証ねえ…。(腕の一本でも寄越せ的な意味か?)」
神「物質的な物じゃダメなんだ、願いを叶える際に世界が創り変わってしまい、消え去るから。…そうだ、僕に名前を付けてくれ!」
アキラ「名前?(無かったのか?)」
神「ああ、アキラが名付け親になってよ。」
アキラ「……シネ。(思念体だけにな。)」
神「プッ、それはヒドいね。」
アキラは最後まで、センスも思いやりも無いね。でも、笑顔が溢れてくるよ。何だろう、この気持ちは。
アキラ「もう、これでいいか?(早く楽になりたいんだ。)」
神「…本当にいいんだね?」
アキラ「あ、最後に一つだけいいか?(せっかくだからな。)」
神「何?」
アキラ「僕はお前を神とは認めないよ。(シネ。)」
ふふふっ、これが別れの挨拶か。すごくアキラらしいよ。
神「バイバイ…アキラ。」
パチンッ、僕が指を鳴らすとアキラは現代へと帰っていった。




