第5−3話
神「さて、邪魔者はいなくなったし、お楽しみの願い事タイムといこうか!」
…こいつ!
アキラ「ふざけるな!お前の都合で呼び出したんだろうが!ファルザさんは、ファルザさんは、……ファルザさんは僕の家族なんだ!」
神「見捨てたのに?」
思念体の言葉が突き刺さる。
神「どうしたの?以前言ったはずだよ、僕の目的は人間観察だって。ちゃんと君の異世界生活ぶりを全部見ていたよ。」
そうか、こいつは見ていたんだな。あの日の事も、僕の頼みも、ファルザさんの叫びも全てを見ていた上で、無視していたんだな。
神「まあ、そんな些末な事はどうでもいいよ。僕はこの日を楽しみにしてたんだよ、悲劇に見舞われた君が何を望むか、そんな君は他者を憂うか、それとも自身の欲を満たすのか。楽しみで楽しみで仕方無かったよ!」
アキラ「……下衆な奴だな。」
神「おやおや、随分と嫌われたものだね。まあいいさ。さあアキラ、君は何を願う?」
アキラ「僕は…。」
僕は、僕の望みは、ただ皆とささやかでもいいから、仲良く笑い合って暮らしたかっただけなんだ。僕が壊してしまった、あの日常を取り戻したいんだ!
この願いは一度きりだ! 慎重に考えないと。
神「もういっそのこと、あいつらの事を忘れるのも手じゃないか?」
アキラ「そんな事出来る訳ないだろ!」
神「そうかな?さっきの男を見ただろ?あいつはアキラを憎んでいたじゃないか、もう分かり合える余地なんてないだろ。そんな奴等どうでもいいんじゃないか。」
アキラ「…どうでもいいなんて思えるか。」
そう思えたら、どれほど楽になれたか。
神「自分の事だけを考えればいいのに、律儀だね〜。」
違うんだよ、逆だ。僕はいつだって自分の事しか考えてない。今もファルザさん達を見捨てたところで、僕に何が残る?何も無い、何も残らない、そんな空っぽの人生しか送ってこなかったんだ。だから、今の僕にはファルザさん達を助ける事しか残ってないんだ。
……だけどさ、苦しいんだよ。こんな人生が、こんな自分が。
アキラ「願い事を言うタイムリミットはあるのか?」
神「無いよ、だから好きなだけ考えてもいいよ。」
アキラ「そうか。なあ、マーザさんとドータちゃんも生き返らせたりしないのか?」
神「ん?ダメだよ、さっきのご褒美はあの男だけでおしまい。それとも願い事の権利を行使するかい?」
アキラ「いや、止めてくれ。」
違う、こんな願いじゃダメだ!生き返らせたところでどうする?倫理観や道徳観なんかはもうどうでもいいと思っているが、あの事件の記憶がある、事件のショックで自殺を図るかもしれない。それに生き返ったところでタシスの件もある。あいつはファルザ家を狙っている、そんな中、生き返らせてもまた殺しに来るかもしれない。あいつにも願いを叶える権利があるのだから。…待てよ?
アキラ「タシスの願いはもう聞いたのか?」
神「まだだよ。アキラの願いを叶えてから、タシスを呼び寄せる形になるからね。何なら、タシスも呼ぶかい?」
アキラ「いや、それはいい。」
なるほど、優先度はこちらにあるのか。しかし、どうしたらいい。ああもう、何でこんな重い決断を僕に委ねるんだ! 責任なんて負いたくないんだ! みんなが幸せになれる世界なら、なんでもいい。もういっそ権利を放棄して逃げ出そうか。何も考えたくない。どうしてこんな事に………。
ん?ああそうか、そういう事だったんだ!
アキラ「なあ、思念体。お前はこのゲームが終わったらどうするんだ?」
神「特に予定はないよ。また退屈な日常に戻るだけさ。」
アキラ「そうか…。よし、願い事が決まったぞ。」
神「お、やっと決まったのかい?」
アキラ「ああ、これでお前ともお別れだな。」
神「そうだね、寂しくなっちゃうね。」
アキラ「せいせいするの間違いだろ?」
神「かもね。」
無邪気に笑う少年がいた。
僕は目を閉じ、深呼吸して気持ちを落ち着ける。そして目を開き、改めて思念体に向き合うと、口を動かした。
アキラ「思念体…。」
アキラ「僕とお前の出会いを無かった事にしてくれ。」
さあ、ハッピーエンドを目指そうか。




