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それでも、生きていた  作者: sinnemina
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第5−2話

神「さあ、感動のご対面だよ!」

諸手を挙げて喜んでいる少年がいた。この何も無い空間に似つかわしくない行動には滑稽さを覚える。


そんな滑稽な少年だが、とんでもない事をしてくれた。死んだはずの人間を生き返らせた。ただの他人ではない、僕が異世界で初めて出会い、お世話になって、そして…見殺しにした人だ。


いや、まだファルザさんと決まった訳じゃない。思念体の事だ、何か裏があるかも…。


ファルザ「うう、……何だ、アキラか?ここは?」


ファルザさんだ!僕の名前を呼んでくれた、そうだ、やっぱりファルザさんだったんだ!


アキラ「ファルザ…さん。」

喉が上手く動かない、泣いてしまいそうになる。予期せぬ再開で嬉しさとショックが同時に襲ってくる。


ファルザ「どうした?いや、違うか。ここは夢か。さっきも家族が殺される夢を見ていたし、まだ俺は眠っているようだな。」

独り言の様に言っている。


どうやら、この現実離れした空間と、殺された出来事を重ね合わせて夢だと判断している。そして何も返事が出来ないでいる僕と思念体を夢の登場人物だと勘違いしている。


だが、全てが現実だったなどと伝えるだなんて! 思念体を見ると僕だけを見て、ニヤニヤと我関せずの顔をしている。


いや、違う。僕だ、僕がファルザさんに伝えないとダメなんだ!


アキラ「…ファルザさん。」


ファルザ「何だ?って夢の中だからな。会話なんか出来る訳無いな。」


アキラ「違う、違うんだ。聞いて下さい。」


ファルザ「おうよ、夢の中だからな。しばらく付き合うせ!」

笑顔が向けられる、あの頃みたいに変わらない笑顔が。


アキラ「…そうじゃない、ここは夢じゃないんだ!」


ファルザ「何を言ってるんだ、それならここは何処なんだよ?」


アキラ「ファルザさん、あなたにはあるはずだ!殺された記憶が!」


ファルザ「…はは、なるほど。夢が繋がってるのか、それにしても目が覚めないなあ~。」

まだ現実だと受け止めてくれない。いや、受け止めたくないはずだ、夢であれば、どれだけ救われたか。


アキラ「あの晩、賊が襲撃した筈です。」


ファルザ「…止めろ。」


アキラ「そして、あなたと僕は目が合った。」


ファルザ「止めろ。」

先程までの笑顔が一転、悲痛な顔へと変わっていく。


アキラ「それでも、あなたは僕を匿ってくれて…」


ファルザ「止めろって言ってんだろおおおおお!」


アキラ「思い出しましたか?」


ファルザ「うるせえ、そんな訳あるか!あんなのが現実な訳ねえだろ!あれは夢に決まってんだろ!?」


アキラ「違う、違うんです。」


ファルザ「黙れ!だったら何だよ?夢の通りに俺が生き残ってあいつらが殺されたってか?だったら違うね、あの夢は俺も殺されて終わったんだからな。」


アキラ「………そうです、あなたも殺されたんです。」


ファルザ「何言ってんだよ、俺はこうして生きてるじゃねえか。」


アキラ「違う、あなたも死んだんだ。」


ファルザ「…どういう事だ?」


アキラ「ここは死んだ人間を生き返らせる場所なんだ。」


ファルザ「生き返った?それなら家に、いや、あいつらは?マーザとドータはどうした?」


アキラ「…生き返ったのはあなただけです。」


何かが切れる音がした。


ファルザ「ふざけんな!何であいつらがいねえんだ!?」

激昂したファルザさんに胸ぐらを掴まれる。


アキラ「…ごめんなさい。」

最早、何に対しての謝罪か自分にも分からない。…だが、僕に言えるのはこの言葉しかなかった。


ファルザ「何でだ!?俺達が一体何をしたらこんな目に合わなきゃいけないんだよ!」


答えられない。僕はいつだって答える事が出来なかった。


ファルザ「何でお前はあの日、俺達を助けてくれなかったんだ!どうして、俺達を見殺しにしたんだ!」

胸ぐらを揺さぶる手が強くなっていく。



ファルザ「そうだ!賊の奴等がお前の事を言っていたぞ、どういう事だ!?」



何も言わない僕に痺れを切らしたファルザさんが右拳を振り上げ、僕は反射的に目を瞑る。

ファルザ「何とか言ったらどうだ!?」


僕の顔面に当たる直前にパチンッ、と音が響いた。目を開くとファルザさんの右手が粒子へと分解されていく。


ファルザ「何だよ、コレ!?」


今まで黙っていた思念体が口を開く。


神「はい、そこまで〜。危なかったねー、アキラ。」


ファルザさんの体が手だけでなく、体全体が粒子へと変わっていく。


アキラ「ファルザさん!!」

僕は懸命に粒子を集め、ファルザさんの体へと戻そうとするが、結合する事なく、すぐに離れていってしまう。


アキラ「思念体!止めろ!止めてくれ!」

また居なくなるなんて、嫌だ!


神「おいおい、そいつはさっきまで君を殴ろうとした奴だぜ?それに元々死んでた奴で…」


アキラ「うるさい!止めろ!止めてくれよ!」

僕は諦めずに粒子を集めていく。


ファルザ「…俺は、また死ぬのか?」

ファルザさんは自分の無くなった右手と両足を見て言う。


アキラ「違う!死なない!死なせない!今度こそ、今度こそ救うから!だから死なないで!」


涙が流れる、視界がボヤける。このままじゃダメだ、頭では理解しているのに体が言うことを聞かない。


どんどん分解が進んでいき、ファルザさんが上半身だけの状態になってしまった。ファルザさんは左手で僕の左手を掴むと、首を横に振った。


ファルザ「…もういいよ。」


アキラ「嫌だ! どんな罰だって受ける、ずっとこの空間から出られなくてもいい、あなたに嫌われたままでもいい。だから、だから死なないで!」


僕の言葉にファルザさんはフッ。と笑い、


ファルザ「男三人でこの空間なんて、むさ苦しいだろ?俺は可愛い二人の女のとこに行って来るよ。」


違う、そんな場所などない!僕は知っているんだ!天国なんて無いって事が!


アキラ「だめ…」

伝えようとした僕の言葉を遮るように、穏やかに安らかにファルザさんが横たわっている。


そしてファルザさんは、目を閉じたまま粒子へと変わっていった。

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