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それでも、生きていた  作者: sinnemina
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第4−8話

お風呂を終えた僕は客間へと入ると、ルーガさんはグラスを片手に、物憂げに黄昏れていた。ルーガさんは僕の存在に気付くと右手を挙げ、手招きした。




ルーガ「お、上がったかい。座りなよ。」


言われるがまま座ると、空のグラスを手渡され




ルーガ「飲めるんだろ?」


ルーガさんが酒ビンを傾け、僕に差し出す。




僕は(少しだけ。)と、親指と人差し指を僅かに空けるジェスチャーをとった。


ルーガさんが僕のグラスに酒を注いでくれ、一呼吸置き、互いのグラスを合わせる。




ルーガ「…乾杯。」




僕も口パクで(乾杯。)と言うと、グラスの重なる音が響いた。




グイッと口に含むと辛味と熱が口の中に広がった。たまらず、少しむせてしまった。


[強っ! すごいなこの酒!] びっくりして向かいのルーガさんを見ると、ゴクゴクッと喉を鳴らしながら飲んでいた。




ルーガ「ふぅ。」


と息を吐いて置いたグラスの中身は四分の一しか入っていなかった。僕はルーガさんの酒の強さに平静を装いながらも内心驚いていた。


こちらはルーガさんの様に、急ピッチで飲めるものじゃないので、僕はチビチビと舐めるように飲んだ。




すると、ルーガさんのグラスが空になったので今度は僕から酒を注いだ。




ルーガ「…ああ、ありがとう。」


ルーガさんの瞳がトロンッとしていて、昼間の時とは違った色気や艶を感じてしまう。




ルーガさんが一口飲むと話し始めた。




ルーガ「…ファルザはさ、女の私を舐めたり特別扱いせず、一人の店長として接してくれてね。…マーザは、恋人に振られて落ち込んだ私を一晩中慰めてくれたっけ。…ドータちゃんは赤ちゃんの頃から見てきてね、最初に言葉を話した時を見たのは感動したよ…。」




ルーガ「悲しくなるのはわかってたのに、どうして思い出しちゃうんだろうね…。」


僕はルーガさんの言葉に何も答える事が出来ず、ただ静かに酒を口に運ぶ。酔いのせいか、視界がボヤけてきた。




ルーガ「…もうよそうか、この話は。………よし!! それじゃあ、あんたのベッド運ぶとするか。手伝ってくれ。」


静寂を大声で裂いたルーガさんは、立ち上がり奥の部屋へと向かった。僕もついていくと2つのベッドが置いてある寝室に案内された。その内の手前のベッドを僕とルーガさんが端と端を持ち合って先程の部屋へと運んだ。




ルーガ「さて、私も風呂にして寝るとするよ。覗いちゃダメだからね♡」


軽口を叩いているが、ルーガさんが無理して明るく振る舞っていたのがわかったのと、僕自身が冗談に付き合う気分ではなかったので対した反応が出来なかった。


 


図々しいが、疲れてしまったのと酒の酔いで眠くなってしまったので、寝る旨を伝えた。




ルーガ「ああ、おやすみ。」


微笑んでルーガさんが去った後、僕は床についた。すぐに眠気が襲ってきたので何も考えずに眠る事が出来た。




ルーガ「ほら、起きな!!!」


朝になると、ルーガさんの声と共に、僕の毛布が剥がされた。久しぶりにグッスリと眠っていたので、一瞬何が起きたのかわからず、パニックになった。状況を見渡し、すぐに落ち着くとルーガさんに尋ねた。(どうかしましたか?)




ルーガ「もう朝だよ、さっさと起きな! 買い出しや仕込みとか山程あるんだ。タダで住ませる訳じゃないんだ、あんたにも働いてもらうよ!」


朝から大声で捲し立てられたので面食らったが、僕は(対価としてお金を払う。)旨を伝えると、




ルーガ「金なんて要らないよ、ここは宿屋じゃないんだから。でも、人手が足りないからさ手伝ってくれよ。」




(さすがにそれはマズいんじゃないか?)といった疑問があり、返事が出来ないでいると、




ルーガ「あんた、この調子だと引き篭もっているだろ? それに、男は働くもんだよ!」




そう言って、ルーガさんは僕の腕を引っ張り起き上がらせると、リビングに連れて行った。リビングに着くと、テーブルにパンとスープが配膳されていた。




ルーガ「ほら、急いで食べな。」


そう言ってルーガさんは席に着くなり、がっついて食べだした、昨夜の雰囲気とのギャップが凄いな。少々面食らったが、僕もルーガさんに倣って食べ始めた。




ルーガ「買い出しから行くよ、荷物持ちよろしくね!」


僕は食べながらコクン、と一度頷いた。


急いで食べ終えると、皿を冷やかした後、着替えもせずに出かけた。




一軒目は肉屋へ向かい、干し肉を買った。荷を受け取ると、「次は野菜を買いに行くよ。」とルーガさんが言ったので嫌な予感がしながら、ついていくとサイさんの店に着いた。


僕が店を挟んだ通りで立ち止まると、ルーガさんに伝える為に肩を叩く。




ルーガ「ん? どうしたんだい? 早いとこ買い出し終わらせるよ。」




僕は慌てながら、両手をクロスして☓字を作り、サイさんの店を目配せするジェスチャーをとった。




ルーガ「……訳ありなのかい?」




僕は素早く首を三回、縦に振った。


それを見たルーガさんはタメ息をつくと、




ルーガ「わかったよ。それじゃあアンタは、ここで待ってな。」




ルーガさんは僕から離れると、サイさんの店に入って行った。少し談笑した後、風呂敷に包まれた野菜を両手で抱えて戻ってきた。




ルーガ「よし、これで終わりだから戻ろうか!」




ルーガさんの荷物を貰い、歩こうとしたが、荷物が溢れそうになったので、干し肉が入った軽い方の荷を持ってもらい、ルーガさんの店に戻った。帰りの道中では会話も無く、互いに淡々と歩いた。


店に着いたら、空気を変えるかの様にルーガさんが明るくなった。




ルーガ「よし、早速取り掛かるよ!」




ルーガさんの指示の下、火起こしや、肉の塩抜き、水を汲んだり等とやる事は沢山あった。野菜の皮剥きもあったりしたが、僕の包丁捌きではスピードが遅かったので交代を命じられた。ピーラーでもあれば良いのだが、この世界には無いので練習していくしかないか。




(…にしても、労働なんて久しぶりだな。)なんて思ったりもしたが、実際は十日程度しか経ってないんだよな。……色々、あったしな。




ある程度、下拵えが終わったので、基本的なルールや開店時の作業内容を教わった。僕は話せないのもあるので、裏方で皿洗い等をして、混雑時は下げ膳してくれ、と言われた。





そして、開店準備も終わると、いよいよ開店となった。

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