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それでも、生きていた  作者: sinnemina
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第3−2話

いい匂いがする、食欲をそそる香りだ。


リビングに行くとテーブルの上にパンとサラダとポタージュが乗っている。椅子には先程の夫婦が座っており、床にはさっきの子供がしゃがんで人形遊びをしていた。


僕が戻って来たのに気付くと、




男「おお、ここに座ってくれ!」


空いてる椅子を勧められた。




アキラ「はい、失礼します。」




男「そんなに硬くならないでくれよ。さ、腹が減っただろ? 沢山食べてくれ!」




女「簡単な物でごめんなさいね。」




アキラ「いえ、とんでも無いです! とっても美味しそうです!」




女「あら、お世辞でも嬉しいわ。お代わりもあるからいっぱい食べてね。」




アキラ「はい、いただきます!」


そう言って僕はポタージュに手を付ける。


何と言うか胃に優しく、染みこんでいく。素朴な味わいなんだが、空きっ腹な体が求めていた感じでフィットしていく感覚だ。


とても丁度いい。このポタージュだけで何杯もイケてしまう。ちょっとした感動を覚えてると、さっきの子供が人形を抱えながら、こちらを見ている。




子供「タマネギとね、ニンジンはドータがつくったの!!」


子供らしい大きな声で話してくれた。




アキラ「……え〜と、君はドータちゃんっていうのかな?」




ドータ「うん!!」


そう言って力強く頷いてくれた。




アキラ「そうなんだ、だからかな。とっても美味しいや。ドータちゃんは野菜作りの天才だね!」




ドータ「えへへ。」


会話をしているとお互いに顔が綻んでいた。




(子供って案外、可愛いもんだな…。)


異世界に来る前は子供と接する機会が無かったから新鮮な感情だ。




アキラ「すみません、自己紹介が遅れました。僕はアキラと申します。この度は助けて頂きありがとうございます!」




男「アッキラーか、いい名前だな。」




アキラ「いえ、アキラです。」




男「アキラーか、いい名前だな。」




アキラ「アキラです。」




男「アキラか、うん! いい名前だな!」




アキラ「……ありがとうございます。」


なんか釈然としないな。


男「俺達も名乗らないとだな! 食べながらでいいから聞いてくれ。俺はファルザでこちらは家内のマーザ。そして、娘のドータの3人暮らしだ。」




ドータ「カウとビフもいるよ!!」




アキラ「カウとビフ?」




ファルザ「ああ、そうだったな。外にいた牛の名前でね。あいつらも家族の一員だ。」





ファルザ「ところで、あんな場所で遭難するなんて何かあったのかい?」




………ああ、そういえば理由とか何も考えて無かったな。どうしよう。







アキラ「実は、山に入るまでの記憶が無いんです。」




ド定番だが記憶喪失のフリをしよう。異世界転移なんて本当の事を言っても信じて貰えないし、頭を疑われるからな。




ファルザ「? 誘拐や事件にでも巻き込まれたのか?」




アキラ「いえ、山に入る前後の記憶じゃなく、今までの記憶が無いんです。」


面倒だから完全な記憶喪失にした。この世界の知識も無いし、どうせ、この場限りの付き合いだからな。




ファルザ「そうなのか! じゃあ、帰る家も無いというのか?」




僕の嘘を信じて貰えたようだ、純粋な人達でよかった。




アキラ「ええ。なので、旅でもしながら記憶を探そうと思ってます。」




ファルザ「まだ若いだろうに、可哀想に…。じゃあ今夜の宿も決まって無いのか?」




アキラ「はい、町の方で探してみるか、最悪野宿でもしてますよ。」




ファルザ「もう夜も遅いし、町まで少し歩くぞ。今日はウチに泊まっていきな!」




アキラ「いえいえ、そこまでご迷惑を掛ける訳には…。」




ファルザ「人の心配するより、自分の心配でもしろよ。別に取って食ったりしないからよ。」




アキラ「……本当にいいんですか?」


本音を言うと、この申し出は有り難いが。




ファルザ「ああ! ただ、部屋に空きが無いから外の小屋になっちまうが…。」




アキラ「充分です! お願いしてもいいですか?」




ファルザ「おう! 今日はしっかり休んでいきな。」


ファルザさんはそう言うとドータちゃんにそっくりの笑顔を見せ、僕は(やっぱり親子なんだなあ)と思ったりした。



こうして僕は、本日の宿を確保する事が出来た。




物置小屋で寝ることになったので準備を始める。小屋の中は農機具や荷車などの道具が散乱していた。なので、足場を少し片付けて藁を敷いていく。そこに毛布をかけるとベットの完成だ。寝心地は独特な柔らかさと匂いがして気持ちいい。昨日の寝床と雲泥の差だ。




電気が通って無いので照明が無く真っ暗だった。ファルザさんはランタンを貸すと言ってたが、扱いに慣れてないので火事になってしまっても困るので断った。


だが、さすがに少し明かりが欲しかったので戸を少し開けて外の光を入れた。戸の隙間から星やファルザさんの家が見えて、なんだかオシャレな感じだ! 雨が降れば戸を閉めないといけないが。




時計が無いので体内時計の感覚だが、やる事も無いし、少し早いが寝ることにした。



そして、僕は5分もしないうちに眠りについた。





戸の隙間から陽の光が差し込む、早めに寝たのもあって寝覚めがスッキリしてる。爽やかな朝だ! よくよく考えてみるとハードな運動と栄養満点の食事、極み付けに早寝早起きまでしたので、とても健康的な生活をしてる気がする。元の世界にいた時より体の調子がいい! 意味も無く走りたい気分だ。 とにかく絶好調な気分だ!




そんな絶好調な僕だが、やる事が無い!


起きたのはいいが、ファルザ家に挨拶に行こうにも時計が無いので塩梅がわからない。(もし、早すぎる時間に挨拶に行って、ファルザ一家がまだ眠っていたら迷惑になるだろうし。)




とりあえず、手持ち無沙汰なので毛布を畳んだり物置を整理して時間を潰しているとバタンッと物音がした。




戸の隙間から覗いてみるとドータちゃんがこちらの小屋に走ってくる。僕は戸から少し離れて座りながら見ていると、





ドータ「おきろーーー!!!‥‥‥‥‥‥‥おきてるーーー!!」


勢いよく戸を開けた後、元気な声が物置に響く。




アキラ「おはよう、ドータちゃん。」




ドータ「おはよう!」




アキラ「お父さんとお母さんも起きた?」




ドータ「うん! おきた! ごはんたべよ!」




アキラ「そうなんだ、わかった。それじゃあ行こうか。」


(こんな起こされ方もいいな。)と思いながら僕は立ち上がった。




そして二人で並んでファルザ家に向かった。

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