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【Web版】成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~  作者: m-kawa
第八部

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第423話 港街ペルグリッド

「くぅー、やっと解放されたぁ」


 詰め所から出ると大きく伸びをする。


「そんな言うほど拘束されたわけでもないと思うけど」


「だよねぇ」


「暇だった!」


 しかしどうやら味方はフォニアしかいないらしい。


「それにちゃんと情報もらえたしな」


 だがイヴァンの言うことも尤もである。

 門衛いわく、この大陸にも冒険者ギルドは存在するとのことだ。ただ予想通り、北の大陸にある冒険者ギルドとは完全に別組織らしく、特に連絡も取り合っているようではないらしい。そういうわけで冒険者証も使えないというわけだ。

 ただし、新規登録時に提示すればそれなりのランクから始められるとのこと。こちらのギルドからすれば実績なしの人間になるわけだが、ある程度考慮してくれるのであればありがたいことである。


「んじゃま、ギルドに行きますか」


「おー」


 ちなみに冒険者証が使えないから入街税を払っている。ただし冒険者証と同じく、手持ちの貨幣もこの大陸では使えなかった。もちろん両替はできるが、普通の渡航者は船から降りた港でやるのだ。街中に両替できるところはないということだったが、門衛は話の分かる人でよかった。ある程度手数料も取られたが、手持ちのお金を受け取ってくれたのは好感が持てる。お役所仕事でダメと言われなくてよかった。


 大通りを歩いて港へ向かう途中にギルドがあるらしいので、先にそちらへ向かう。石造りの家が多く、地面にも石畳が敷かれていてかなり整備されている。露店もたくさん出て賑わっていて活気があるのは帝国も変わらないが、異国情緒あふれる街はワクワクするものだ。


 ふらふらといい匂いのする露店に引き寄せられるフォニアとニルに注意すると、しゅんと耳が項垂れるがここは我慢だ。買ってあげたいのはやまやまだが、両替するか素材を売るかしないと何も買えない。


「あれかな?」


 しばらく歩いていると目当ての建物が見えてくる。と、涎を垂らした欠食児童たちが一目散にギルドへと走っていく。

 かなり規模の大きい冒険者ギルドである。中に入るとお昼前にもかかわらず、そこそこの人がいるようだ。大半は併設されている食事処で(たむろ)っており、残りの少数は依頼が貼られているであろう掲示板の前にいる。


「こっちこっち!」


 呼ばれて見てみれば、フォニアとニルが仲良く手をカウンターに乗せていた。今のニルのサイズは中型犬くらいなので、立ち上がればフォニアと同じくらいの高さになる。二人そろってカウンターから頭だけ出ており、こちらを振り返って手を振っている。

 カウンター向こうにいる女性のギルド職員は困った表情だが、幾分か頬が緩んでいた。他に並んでる人もいないので邪魔にはなっていないようだ。


「あー、はい、いらっしゃいませ」


 ホッとした様子でこちらに向き直ると、頭の上に生えた耳をぴこぴこさせている。この長い耳はうさぎっぽい。


「えーっと、新しいご依頼でしょうか?」


 職員の視線は後ろのイヴァンに向いていたようだが、カウンターの前に立った俺に首を傾げながら尋ねてくる。


「いえ、登録をお願いしたいんですけど」


「あっ、登録されるんですね。……どなたが登録されるんでしょうか?」


「俺たち三人でお願いします」


「えっ?」


 答えるとなぜか受付の職員が目を丸くしており、同時に聞こえていた喧騒がいつの間にかなくなっている。


「……えっ?」


 何か変なこと言ったかと思って周囲を見回せば、食事処で屯っていた冒険者たちから注目を浴びていた。それにしてもここにいるのは獣人ばっかりである。


「あ、失礼しました……。あちらの冒険者証はお持ちですか?」


「はい」


 職員に促されて三人そろって冒険者証をカウンターへ差し出す。


「お預かりしますね」


 そう言って受け取った職員がまじまじと見つめて「Sランク……」と静かに呟いた。


「はぁ?」


 とそこで、食事処にいた冒険者の中から不機嫌そうな声が上がる。

 職員が慌てて自分の口を手で塞ぐがもう手遅れだと思う。


「し、失礼しました! ギルドマスターを呼んでくるのでちょっと待っててください!」


 大人しく座っていた冒険者たちが立ち上がるのを見て叫ぶと、冒険者証を持ったまま慌てて奥へ引っ込んでいくギルド職員。待てと言った相手は俺たちじゃなくてあっちだろうけど、待つわけもなく数名の冒険者がこちらへと近づいてくる。


「おいおい、冒険者証の偽造は重罪じゃなかったのか?」


「しかもSランクて……。もうちょっと現実的なランクにすりゃよかったのによ」


「お粗末にもほどがあんだろ、この無獣族がよ」


「むじゅうぞく?」


 何が気に入らないのかよくわからないが、初めて聞く単語に首を傾げる。


「なにそれ」


「聞いたことねえな」


 どうやら莉緒とイヴァンも知らないようだ。


「ははっ、そこまでしてランク上げて登録したいのかよ」


「船が出てない時期に北の大陸から来ました、は通用しねーぜ」


 ドヤ顔を決める獣人の男だったが非常にウザイ。北の大陸から来たんだからそれくらい知っている。話から想像するに、北の大陸の冒険者証があればある程度のランクから始められるということは、偽物の冒険者証を持ってくるやつがいるということだろうか。

 本物の証明はどうやるか知らないが、仮にもこっちのギルド登録時に使える証明書だ。ここで調べればわかるのではないだろうか。


「じゃあ本物かどうか調べてもらいましょうか」


 奥からこちらにやってくる人の気配を察知してそう返しておいた。

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