第44話 貴族街
「今日は王城まで行ってみようか」
「お城ってどんなところかしらね」
翌朝である。とりあえず王城前まで行ってみることにした。現物を実際に見てみないとわからないこともあるだろう。王城前までは行けるらしいので、門番に話くらいは聞けるかもしれない。結局考えてもいい案は浮かばなかったし、最悪わからないことは門番に聞いてみればいいのだ。
ちなみに昨日の夜に、魔法を封じる魔法の実験をいくつか試している。もちろんうまくいかなかったけど。制御がいつもより難しいと感じたから、効果がないわけじゃないのかもしれない。
「のんびり歩いていこうか」
「うーん、そうねぇ……」
何やら渋っている莉緒だけど、まさかちゃっちゃと空から行きたいとか言うんじゃなかろうか。
「馬車にも乗ってみたいけど、ぶらぶら観光しながらもいいわよね」
あぁ、そういうことね。そういえば乗ってみたいって言ってたな。俺もちょっと興味はある。
「王城前にくる観光客もいるっぽいし、もしかしたら王城前行きの乗合馬車もあるかもしれないな」
「そうなのよね」
「まぁ歩きながら考えようか」
「うん」
何か忘れてるような気がしないでもないが、気づいていないことに違和感を覚えることもなく俺たちは城へと歩き出した。
宿で朝食を食べ、そのまま北方面へと歩いていく。もともと貴族街の近くにある宿だから、貴族街への入り口は近い。門番はいたが特に咎められることなく通過できた。
「案外あっさり通してくれるんだな」
「一般人も入れるみただし、相当怪しい人しか止められないんじゃないかしら」
「だなぁ。……にしてもさすが貴族街だな」
一気に建物の質が変わった。屋敷が立ち並ぶ大通りは、人通りも減っている。道路にゴミは一切落ちておらず、街路樹なども植えられていて整然としている。
「異世界版の高級住宅街って感じね」
まさにその通り。奥へ進めば進むほど、屋敷の規模が大きくなっていく。庭が広くなり屋敷も大きくなり、門番も増えていくのだ。
「あ、商店街だ」
中にはちらほらと高級店なども見かけたけど、広場に出ると高級店ひしめく商店街に出た。
「おぉ、ちょっと魔道具店が気になるけど……」
「ちょっと寄ってみる?」
莉緒の言葉でふらふらとお店へと近づいてみたが。
「なんじゃこりゃ」
「……え?」
そこに展示されていたのは銃だ。
ずんぐりしたシルエットに黒く光る短い銃身。隣に三十ミリくらいの弾丸が置いてあるが、そこそこ強力な魔力を感じる。火薬で鉛球を発射するんじゃなくて、魔法が飛び出るんだろうか。
「超カッコいいんですけど」
「でも高いね」
銃というロマンしか目に入っていなかった俺に、莉緒の言葉で手前にあった値札へと視線が誘導される。
「げっ」
そこに書いてあった値段はなんと、一億フロンだ。弾丸もひとつ500万フロンとか、中には1000万する弾もある。属性によって値段が変わるところを見ると、やっぱり魔法が飛び出るのか。
「んー、でも私たちには不要かも」
しかし莉緒は現実的であった。
「柊もそこそこ魔法の発動速度早いよね?」
バッサリとロマンを切り捨てにかかってくる。
「あー、まぁ、そうかもしれないなぁ」
莉緒の言葉の通り、俺たちの魔法発動は速い方だと思う。詠唱破棄のスキルはもちろんのこと、普段から意識せずに魔法を使う様に師匠に言われたからなぁ。
引き金を引くだけで魔法が発動するんだとしても、銃口から飛び出すことがわかっていれば対処はしやすいかもしれない。師匠なんて魔法の遠隔遅延発動とかわけわからんことやってたし、いつどこに何が飛んでくるかわかったもんじゃなかった。
「何かお探しの物でもありましたかな?」
銃の考察をしていると、品のいい商人然とした衣装をまとった店主らしき人物が声を掛けてきた。やっぱり貴族街のお店だからして、この人も貴族なんだろうか。
「これがちょっと気になりまして」
目の前の銃を指さすと、店主がニコニコ笑顔で解説してくれる。
「これは魔道銃と申しまして、弾丸に込められた魔法を発動することができる魔道具なのですよ」
おおむね予想通りの効果のある道具だった。弾丸の質によって込められる魔法のレベルが変わり、初級、下級、中級とレベルが上がるごとに値段も上がる。再利用が可能な弾丸と、使い捨て弾丸があったりと弾にもいろいろだ。
「へー、そうなんですね。ただちょっと予算が足りないのでダメそうです」
「そうなのですね。もう少し低価格な商品もございますが……。失礼ですが予算はいかほどでしょうか?」
ぐいぐい来るねこの人。買わせようとするのは商人だから仕方がないのかもしれないが。
「今手持ちは900万フロンくらいしかないです」
「左様ですか。当店では500万フロンの商品からの取り扱いとなっております。魔道銃の弾丸を除くとあちらに対象商品がありますので、どうぞご覧ください」
所持金を聞いた瞬間に興味をなくした店主は、店の隅を指し示すとさっさと引っ込んでいった。あからさまな態度としては出なかったが、客に気付かれる時点でダメなんじゃないかと思う。要するに貧乏人は帰れってことですよね。
「何よ今の……」
店主の態度は莉緒にも漏れなく伝わっているようだ。
でもまぁ、そこそこ広い店内のどこを見れば購入可能な商品が置いてあるのかがわかったんだ。必要最低限な情報はもらったということでよしとしよう。
「んー、でもどれも見たことある道具ばっかりだな」
「そうね。高級になっただけって感じがするわね」
店の片隅に置かれた、いわゆるワゴンセールになっている一角を物色するも、昨日買い物したお店とそう変わりない。いや確かに高級品で性能は高いのかもしれないけど、みたことある魔道具ばかりだった。
「……面白いものは見れたし、さっさと城に行こうか」
「そうね」




