第337話 ショートカット
「マジか」
タブレットに表示されている文字を見て思わず言葉が漏れる。
「え、なにこれ」
「ダンジョンにそんな機能が……」
莉緒は首をかしげているが、エルは衝撃の事実に絶句している。
そこに表示されているメニューは次の通りだ。
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ダンジョン拡張
魔物召喚
アイテム召喚
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うん。もうこれ完全にダンジョンマスターができそうなことが並んでるな。というか実はダンジョンマスターって本当は実在するんじゃなかろうか。
「というかこの剣すげーな」
それにしてもまさか予想が当たるとは思わなかった。ダンジョンに長く関わっていればいるほどタブレットの情報を読み取ることができるようだ。この剣がどれくらいの権限を持っているのかわからないが、とりあえず全部のメニューを試してみるしかない。
期待を込めて今度はダンジョン拡張に剣の柄で触れてみる。が、残念なことに権限がありませんと表示されてこの先には進めなかった。魔物召喚とアイテム召喚も同様だ。
「うーん、一つ進めただけか……」
「次はステータスね」
莉緒に促されるままに次はステータスに剣の柄で触れてみると、こちらは中身を見ることができた。
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名前:マシーナレイズ
年齢:2689歳
LV:1087
DP:5624500813
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最初のパラメータはダンジョンの名前か。やっぱりマシーナレイズで合ってたみたいだ。にしても年齢というパラメータがよくわからん。ダンジョンって生き物なのか。人を鑑定しても年齢は見えないんだが、ダンジョンはまた別なんだろうか。
それにしても2689歳ってかなり歳食ってるな……。他のダンジョンの情報は知らないので比較はできない。LVはレベルなのかな。DPはよくわからんが……、ダンジョンポイントとかいうやつだろうか。にしても貯まりすぎだろう。
「すごく長生きね……」
「LVとDPというのはなんだろうな?」
あーでもないこーでもないと話していても推測の域を出ないし、何も進展はしない。フォニアとニルは退屈だったのか、いつの間にか部屋の隅で仲良く寝ていた。
残りは地図と魔物だが、まずは地図から同じようにして剣の柄で順に触れていく。今まで一階層の地図しか見れなかったが、二階層目以降も見ることができた。
「お、見れた」
「おお、すげーな。……って五階狭いな」
一階層に引き続き二階層から四階層目までは相変わらずの広大なダンジョンだった。だけど五階層目だけはすごく狭い。というか一部屋しかない。
「……部屋ひとつだけ?」
「もしかして最下層なのか?」
見たところメニューの五階層の下にも六階層を表示するスペースはあるが、何もない。次ページへの切り替えボタンもなさそうだ。
「その可能性はあるかもしれないわね」
ひとしきり地図を確認した後にそう結論付ける。長生きな分広いが、階層は浅いダンジョンということか。広いか深いかの違いだけで、最奥に行くまでにかかる時間は古いダンジョンなりにかかる可能性もゼロではない。
何気なく五階層から逆に地図をたどってみる。
「んん?」
四階層から三階層はすぐだった。二階層も……。
「って五階層思ったより近い……?」
「ええ? ホントに?」
莉緒が半信半疑で尋ねてきたのでタブレットと剣を手渡してあげる。地図で見る限りだと、薄い壁で隣り合っている通路に扉があったりとショートカットができそうに見える箇所が多い。正攻法で行けば大回りになるが、次階層への階段は直線距離でとても近い場所にある。
「うーん……」
「ほら、こことここが……」
地図が読めないこともないんだろうけど、莉緒が唸っているので教えてあげる。
「えー、こんなのわかんないわよ」
なんだか納得いってなさそうだけど、俺にはそう読めるのだから仕方がない。……もしかして地図スキルも関係してるんだろうか。エルとイヴァンにも伝えてみたけど同じくわからなかったらしい。なんだかスキルも関係ありそうだ。
「まぁとりあえず明日もダンジョンに行ってみよう」
「そうね……。それでホントに五階層まで行けるか判明するだろうし」
「おう、がんばってくれ。俺はフォニアと森の浅瀬をうろついとく」
「わかった」
肩をすくめるイヴァンにはそう返しておく。
このあとタブレットの魔物メニューも試してみたところ、魔物一覧が全部表示された。ロボット系しかいなかったので、もしかするとあのダンジョンにいる魔物一覧が表示されるのだろうか。ステータスまではわからないので強さはわからないが、相変わらずTYPEなんちゃらって名前のやつしかいない。
「念のために朝一は冒険者ギルドに顔出すか」
「それがいいかも。今日警戒レベル2になったばっかりだし、何か決まったことがあるかもしれないわね」
こうして明日の予定が決まったところで莉緒のスマホが鳴る。そういえば俺のは異空間ボックスに仕舞ったままだったな……。出しておかないと着信しない。
「十四郎さんだ。なんだろう」
莉緒と顔を見合わせるが首をかしげる。もしかしてCM撮影の準備でも整ったんだろうか。警戒レベル2になっちゃったからちょっと難しいかもしれない。
「はいもしもし」
そんなことを考えていると、莉緒がスマホを耳に当てて応答していた。




