閑話 オルディス
「まさかこのような展開になるとは思いませんでしたが……。そろそろ潮時ですかね……」
アークライト王国は今、大きく二つの勢力で真っ二つに分かれている。第三王女のリリィ・アークライトと、第二王子であるジェスター・アークライトだ。この二人によって国王と王太子が殺害されたと噂も上がっているが、真偽は定かになっていない。
「しかしヴェルターの言った通りになりましたねぇ」
近々アークライト王国が潰されるとか、何かの冗談かと思いましたが……。いやホントに王城が潰されるとは思いませんでしたよ。
「ふふ、それもヴェルターの弟子というのですから面白い」
幸いにして城にいた王族以外に死者が出なかったのがすごいですね。尖塔に幽閉されていた皇太后はもはや害悪にしかなっていなかったので、ゴミ掃除ができたと思っておきましょう。
国民からしてもトップが入れ替わっただけで、生活に影響が出るような変化は起こっていない様子。
召喚した他の勇者たちも国を出て行ったようですが、アークライト王国は追手を差し向ける余裕はなさそうです。というか腫れ物にでも触れるように、話題にも上がってきていません。余程シュウとリオによる報復が堪えたようですね。
隷属の首輪で縛っておいて、今更待遇よく迎え入れることをよしとするはずもありませんしね。
「ふむ……。ということであれば少し接触してみるのもいいかもしれませんね」
確か商業国家方面へと向かいましたか。集団で移動しているようなので、それほど移動速度は速くありませんね。一人だけ別行動しているようですが……、まぁそちらはいいでしょう。
こっそりと王城を抜け出すと、街の様子を見つつ外へと向かいましょうか。
「あまり変わった様子はありませんね」
あたりを見回してみても特に変わった感じはしません。大通りを行きかう人の数はむしろ増えているように見えますし。確かに城の復旧作業という意味では、建築関係の需要は上がっているのでしょう。
それを目当てに城の周りに屋台が集まっているようですね。試しに串肉を買ってみましたが、味もそれほど悪くありません。
貴族街は勢力図が書き換わっている最中なので、多少は騒がしいようです。とはいえいつものこととも言えますし、国の景気を決める大勢を担っているのは一般市民です。その一般市民が普段と変わらない生活を送れているのであれば問題はないでしょう。
「さて、勇者たちは南ですか」
彼らの位置座標を確認すると、追いかけるべく街の南門へと向かいました。しばらくベルグシュテインに帰っていませんが、まあ大丈夫でしょう。