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第162話 帝国軍との共闘

「失礼。キミたちがシュウとリオで間違いないかね」


 港から離れた海岸線で狙撃魔法の練習をしていたところに声を掛けられた。


「はい、そうですけど」


 どこかでみたことのある服装をした、緑色の短髪の女だ。軍服っぽいけど帝国軍かな。以前街の入り口で見たやつと似てる気がする。


「わたしはウェンディ・ヴァルダロスと言う。帝国軍で中隊長を任されている」


「はぁ」


 やっぱり帝国軍か。にしても中隊長が俺たちに何の用だ?

 というか中隊長と言われても地位がよくわからん。それなりに偉い人とでも思っておこうか。


「実はSランク冒険者のリンフォード殿の推薦でな、帝国軍の海皇亀討伐作戦に参加を要請しにきたのだ」


 海皇亀討伐作戦ね……。あんまり邪魔はされたくないんだけど、どうしたもんか。動向を知る意味では作戦に参加したほうがよさそうだけど、変な制限を掛けられるのも困る。


「はは、まぁそう警戒しないでくれ。軍としては実力者の動向を把握しておきたいというのが本音だ。お互いに協力できれば一番だがね」


 両手を広げて大仰な身振りで苦笑している。リンフォードの推薦ということもあるし、悪い話じゃないのかもしれない。


「うーん……」


「とりあえず話だけでも聞いてくれると助かる」


 渋る俺たちになんとか妥協点を探ろうとしているのか、思ったよりも下手に出ている印象を受ける。


「それならまぁ、話だけでも」


「そうか、ありがとう」


 俺の言葉に表情を明るくさせるウェンディ。なんとなく使い走りにされてるんじゃないかと想像してしまった。




 海皇亀もそこそこ街へと近づいていた。すぐそこに小島が浮かんでいるように錯覚するが、間違いなく亀である。

 ちなみに以前俺たちも参加した、ギルドからの海皇亀襲撃作戦は失敗に終わっている。進路を変えることはできなかったと、のちの調査で判明したのだ。このままだと数日以内に上陸してしまうだろうとのことだ。


 そんな海岸線をウェンディに連れられて歩いて行く。ギルドを通しての依頼ということで、途中で冒険者ギルドにも寄ってからだ。岬を超えると、立ち入り禁止となっている軍事施設の中へと入っていく。

 港には大型の船が停泊している。漁港で見た大型サイズを余裕で超える大きさだ。大きな倉庫の向こう側にも桟橋があり、そちらにも船が停泊している。どれも大砲のようなものを備えており、軍船にしか見えない。


「あの船で亀に攻撃するんですかね」


「ああ、その予定だ」


 軍船は十隻以上あるように見える。百人乗れたとしても千人規模になるのか。岬の向こうの港は思ったよりも広い。続々と人が集まっているのか、以前街の前で見た集団をはるかに超える人員がいるように思う。

 倉庫の向こう側にあるひときわ頑丈そうな建物へと入っていくが、玄関の前を守る軍人に従魔は入れないと止められてしまった。


「軍の厩舎で預かりますので」


「わかりました。ニル、大人しくしてるんだぞ」


「わふぅ……」


 耳と尻尾が垂れるが仕方がない。ニルを預けると改めて建物の中へと入っていく。そのまま階段を上がり、二階の一番奥までくるとウェンディが扉をノックした。


「ウェンディです。二人をお連れしました」


「入れ」


 促されて部屋に入ると、そこには白髭を丁寧に整えた白髪の男と、白髪交じりの赤い髪をした男がソファに座っていた。


「ご苦労」


「……若いな」


 ウェンディが姿勢を正して敬礼し、目の前の二人からはジロジロと値踏みするような視線をもらう。


「ふむ……。わしが第二師団長を務めるヴォルフラム・フォーゲルだ」


「軍団長のドゲスハ・ラグローイだ。お前たちがリンフォードの言っていた冒険者か……」


「Cランク冒険者の柊と莉緒です」


 リンフォードが何と言っていたかは知らないので、自分は名前を告げるだけにとどめる。にしてもドゲスハ・ラグローイってどこかで聞いたことあると思ったら、イヴァンとフォニアの捕縛依頼を出した依頼主の父親か。初めて名前聞いたときは思わず吹き出してしまったから記憶に残っているが、まさかこんなところで会うとは。

 さすがに息子が出した依頼を俺たちが受けているとまでは知らないらしい。特に俺たちを見て反応は示さないようだし。


「単刀直入に言おう。我々は二日後、あの海皇亀に向かって攻撃を開始する」


 不快な視線に耐えていると、ヴォルフラムがおもむろに口を開く。追従するようにドゲスハも言葉を続けるが。


「海皇亀討伐作戦は軍部で預かるので勝手な真似はしないように」


 んん? どういうことだってばよ。ウェンディにちらりと視線を向けると、若干困った表情をしている。部屋に入った瞬間から予感はあったが、共闘する雰囲気は感じられない。


「百五十年前はまったく歯が立たなかったらしいが、その間我々が何も成長していないはずがないではないか。新たに開発した兵器もたくさんあるのだ。目にもの見せてくれる」


 力強く演説するヴォルフラムに同意するようにドゲスハも頷いている。要するにリベンジするから手を出すなってことなのか。

 しかし軍で運用する兵器か。ちょっと興味はあるな。魔道銃という武器は前に見たことあるけど威力としては大したことなかったし。


 ――軍が攻撃するまではこっちも大人しくしてますよ。


 と言いかけたところで部屋の外が慌ただしくなる。ノックもなく扉が開かれると一人の男が血相を変えて駆け込んできた。


「た、大変です! か、海皇亀に、動きがありました!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 帝国の貴族もろくでもなさそうですね
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