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第155話 出撃

 船への組み分けは最終的にこうなった。

 比較的小さい船に、Sランク冒険者であるリンフォード、Aランク冒険者のアデリーとBランク冒険者の男女二人の計四人が乗り、それ以外の船に残りの人員が乗り込む。結局相性が悪いペアは、火と水の一組しかいなかったので組み分けは楽だった。


 昼食を終えた俺たちは、集合場所である港に向かっているところである。いつものようにニルの大食いに付き合っていたからか、ちょっと遅れたかもしれない。


「よーし、コソコソする必要もないから思いっきりやろうか」


 港へと向かいながら肩を回して体をほぐす。


「あはは、やりすぎたら大津波が発生するんじゃなかったっけ」


「いやあれは半分冗談だし……。ってか巨大隕石でも降らせないと発生しないと思うから、大丈夫じゃないかな」


 発生するかもと思ったこと自体がただの勘で、何の根拠もない。それにあんなに巨大な亀に街を蹂躙されるくらいなら、多少の大波や津波災害は許容範囲じゃなかろうか。街を気にして出し惜しみできる状況でもないしな。


「まぁなるようになるさ」


 なるようにしかならないとも言えるけど。

 港へと到着すると、リンフォード率いる小さい船はすでに全員が乗り込んでいるようだった。


「遅ぇぞ。早くしろよ」


 案の定レックスから舌打ちと共に文句が飛んできた。返事をする間もなく船へと乗り込んで行ってしまう。置いて行かれなかっただけでもよしとしよう。


「じゃあ全員揃ったな。こっちの船の方が足が遅いらしいんで、オレたちは先に行く」


「わかりました」


 返事と共に船へと乗り込んでいる間に、リンフォードが乗った船は徐々に加速を始める。一方で俺たちが乗る船にはまだエンジン部が駆動している様子がない。出発準備はまだ整っているわけではなかったようだ。

 しかしまぁ、遅刻ではないにしても、後から来る後輩に文句を言いたくなる気持ちは理解できなくもない。先に来たところでやることがないのも確かだが。


「やっぱり港街の冒険者だと、船の扱いもそれなりにできるんだろうなぁ」


 ボケーっと甲板から港の様子を観察していると、不機嫌がさらに増したレックスが近づいてきた。


「おいお前ら、ちょっと船の職人を呼んで来い」


「んん? どうかしたんですか?」


 いきなりの命令口調にも驚きだが、いったい何の話だ。


「ちっ、船の動力が不調なんだよ」


「ああ、そういうことですか」


 使い捨て予定の船だからして、古い船が割り当てられたんだろう。調子が悪くて動かない可能性もあるか。


「じゃあちょっと行ってきます」


「私も行くわ」


 俺だけでもよかったが、莉緒もついてくるようだ。不機嫌を振りまく連中と一緒にいるのは居心地が悪いだろうし、俺も御免こうむりたい。

 早足に船を降りるとニルも後ろからついてくる。遠距離攻撃をあんまり持ってないニルではあるが、ニルだけ留守番も可哀そうなので連れてきている。


 港で船を管理する建物へと入っていくと、人を見つけたので事情を説明する。ギルドからの依頼でもあり、街の存続にも関わるので対応はスムーズだ。しばらく待っていると職人さんがやってきたので船が停泊している港へと連れて行く。


「あれ……、いませんね……」


「……そうみたいですね」


 なのだが、戻ってきたときには港に俺たちが乗る予定の船の姿がなかったのだ。


「不調が直ったのかもしれませんね」


 ああ、なるほど。それで出発したってことですか。


「あ、ほら、沖に船が見えるわよ」


 莉緒が指さす方向を見れば、小さくなっていく船影が見える。気配察知の範囲を伸ばせば、確かにレックスたちの気配がするから間違いないだろう。


「動いたというのであれば私はこれで……」


 それだけ言うと、職人さんは会釈をして引き返していく。


「見事に置いて行かれたわね……」


 呆れと共にため息をつきながら、莉緒が両手を腰に当てて憤慨している。


「格下ランクの攻撃が加わったところで大したことないと思ってるんだろうが、このままスルーはできないなぁ」


「そうね……。きっちりと仕事はしないとね」


 莉緒と顔を見合わせると笑顔で頷き合う。


「わふっ!」


 ニルもやる気満々だ。出番があるかどうかはわからないが。


「あいつらよりも先回りするか」


「そうね。確か海皇亀の西側から東へ向かって攻撃するのよね」


「ああ。亀は南の沖からちょっとだけ東よりに北上して、レブロスに向かってるって話だ。ちょっとでも進路を東へ逸らせればいいみたいだな」


「わかったわ。じゃあニルも行こうか」


 莉緒とともにふわりと空中へ浮かび上がると、ニルも階段を駆け上がるように空中を踏みしめる。

 一応バレにくいように船を大きく迂回して上空を飛び、海皇亀の西側やや進行方向よりへと到着した。船だと時間がかかるが、空を行けばあっという間だ。陸を振り返れば、陸地全体が視界に入るようになっている。以前は岬の先端しか見えていなかったが、そこそこ近づいてはいるようだ。


 先に出発したリンフォードもまだ来ていないみたいだな。どれくらいの距離まで近づけばいいかよくわからないが、見つけてくれるまで待つとしよう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「見事に置いて行かれたわね……」 悪い様にばかり判断していますが、子供のようなCランクの者が参加したら危険だと連れて行くのに忍びないと考慮したとは、全く考えないんだね。
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