表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/454

第154話 顔合わせ

 結局準備らしい準備をすることなく翌日を迎えることとなった。

 基本的に物資は異空間ボックスに入っているし、改めて揃えるものはない。しかしまぁ、考えることはあったわけで。


「あの亀に効果がありそうな遠距離魔法……ね」


 亀の背中でいろいろ試してきたが、派手な魔法は控えていた。ただ同じ量の魔力を込めた攻撃で、どれが一番効果があったかと言えば。


「やっぱり物理で攻めるしかないんじゃないかしら」


「だよなぁ」


 どうもあの亀の甲羅は、分厚くて非常に硬いだけのものに感じた。それだけに魔法全般はあんまり効果が望めない。一番効果が出たのは衝撃浸透系の物理攻撃だけど、今回の依頼では使えない。


「魔法に衝撃浸透効果を乗せられればいいんだけどなぁ」


「難しそうよね」


 そうなのだ。拳で放つのはできるが、魔法となると勝手が違う。衝撃を浸透させるのだからして、衝撃を放つ魔法が対象になるんだろうか。そうなると無属性系の衝撃波を発生させる魔法なんだけど、遠距離で使う魔法じゃないんだよな。無難にいくなら、土魔法で生成した塊をぶつけるのがいいのか。


「うーん」


 他にいい方法はないかと考えつつ歩いていると、いつの間にか冒険者ギルドへ着いてしまったようだ。いつものように扉をくぐると二階へと上がっていく。

 カウンター前へのフロアへと入ると、いつもと雰囲気が異なっていた。なんとも緊張感をはらんだ静かな空間になっている。

 唯一空気を読まなかったのはニルだった。周囲をぐるっと睥睨すると、クワッと大きく欠伸をする。いや他にも空気を読まなかった冒険者がいた。ニルに抱き着いてモフモフしている。うむ。存分にモフるがよい。気持ちよさを分けて進ぜよう。


「へぇ……、アンタらがシュウとリオかい」


 カウンターの前で腕を組んでいた細身の男が声を掛けてくる。白髪の混じったグレーの髪で、なかなかにカッコいいおじさんといったところか。


「そうですけどあなたは」


「おっと失礼。Sランク冒険者のリンフォード・バデリールだ。よろしく頼む」


「あ、はい。Cランク冒険者の柊です。よろしくお願いします」


「同じく莉緒です。よろしくお願いしますね」


「で、こっちが従魔のニルです」


「わふぅ」


 ニルもしっかりとあいさつができたようだ。

 にしてもこのタイミングで声を掛けてくるSランクの冒険者ってことは、ギルドマスターが言っていたメンバーの一人か。


「ははっ、にしてもおっかない従魔を連れてんだな。推薦されるのも納得だ」


「ふん――」


 が、全員が友好的というわけではないらしい。鼻を鳴らして睨みつけてくる男もいるが、リンフォードは肩をすくめるだけだ。

 しばらく沈黙が支配する中、カウンターの奥からギルドマスターが顔を出して周囲をぐるりと見回す。


「全員……、は揃ってないようじゃの。まぁまだ時間には早いが、関係者は三階の会議室に集まってもらおうかの」


 こうして海皇亀へと襲撃を加えるメンバーが冒険者ギルドの会議室へと集められた。




 いつもの三階の部屋よりも広い部屋へと通される。Sランクの冒険者のリンフォード以外に男が三人、女が三人だ。遠距離攻撃が可能な人物という条件だからか、魔法使いっぽい見た目の人物ばかりだ。

 ちなみにニルは部屋の隅で惰眠を貪っている。

 ほどなくして最後のメンバーが来たようで扉がノックされる。ローウェルに連れられて入ってきたのは、耳の尖ったエルフらしき女だ。


「遅いですわよ、サスキア」


「そうかしら。時間通りだとは思うけど」


 派手な見た目をした金髪の女が、ライトブルーの髪のエルフに文句を言っている。


「ふむ。これで全員揃ったようじゃの。自己紹介といきたいところじゃが、初対面なのはシュウとリオだけかの?」


 ぐるっとメンバーを見回すギルドマスターが言葉を発すると、ちらほらと頷きが返ってくるが否定する人物はいない。


「えーっと、Cランク冒険者の柊です。こっちが莉緒で、あっちで寝てる従魔がニルです。よろしく」


「よろしくお願いします」


 俺の自己紹介に合わせて莉緒も会釈をすると、自己紹介が始まった。Bランク冒険者の男が三人で、ギルドのカウンター前で不満そうに鼻を鳴らした男もこのランクだったようで、レックスと名乗った。自己紹介はそのままBランク冒険者の女性陣二人に続く。それが終わればAランク冒険者へと移る。


「Aランク冒険者のアデリーですわ。以後お見知りおきを」


 輝く金髪を靡かせ、優雅にカーテシーを披露する。立ち居振る舞いすべてが様になっている。なんだろうこの人。どこかのお嬢様か何かだったりするんだろうか。


「同じくAランク冒険者をやってるサスキアよ」


「オレはさっき自己紹介したから省いていいぞ」


「うむ。では軽く打ち合わせといこうかの」


 最後のリンフォードの言葉を受けて、ギルドマスターが話を進める。

 が、なんとなくBランク冒険者たちの雰囲気がよろしくない。レックスはあからさまだったが、他のメンバーも俺たちに不満がありそうな感じだ。


 なるほど、そういうことですか。同じ船から炎と氷が発射されても、亀に到達する頃には対消滅するかもしれないし。

 俺たちは特に苦手な属性はないが、あの亀相手には土か氷の高硬度物質をぶつけるのがいい気がする。海上で使うなら氷のほうが消費魔力は抑えられそうだけど、硬さは土かな。


 いい機会だし、鑑定もさせてもらっておこう。


 =====

 名前 :リンフォード・バデリール

 種族名:人族

 職業 :大賢者

 状態 :通常

 ステータス:HP  6427

       MP  12087

       筋力  4533

       体力  3589

       俊敏  2433

       器用  10089

       精神力 6809

       魔力  8675

       運   120

 =====


 リンフォードはさすがのSランクといったところか。魔法職という割には器用値が高いな。器用に魔法を使いこなすんだろうか。

 金髪のアデリーは……、名前が「アデリー・シルフォンス」と出た。家名持ちってことはやっぱり貴族のお嬢様なんだろうか。Aランクの魔法職ともなれば魔力が3000を超えてくるようである。

 サスキアはさすがのエルフといったところで、魔力が5000を超えていた。他はいまいちだったけど。

 Bランクの皆様になると、魔力が3000を超えているのが一人いて、それ以外は2000に達していなかった。


 結局、打ち合わせの中で俺が鑑定をしたことに気付いた者はいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ