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第153話 海皇亀襲撃作戦

 港街レブロスへとたどり着くころにはすでに夕方になっていた。にしても街の入り口がいつもより騒がしい気がする。よく見れば統一された服装の一団が見える。


「なんだろねあれ」


 なんとく予想は付くけど、隣を歩く莉緒にも聞いてみる。


「帝国軍が出てきたのかもしれないわね」


「やっぱり? 海皇亀(かいおうき)に通用すればいいけど」


 旗も見えるが帝国の国旗なんて知らないしなぁ。


「でもまだ遠いよな。船で沖まで出て攻撃するのかな」


「港に軍の施設があるらしいし、もっとすごい船があるのかもしれないわね」


 確かにそうかもしれない。でもあんまり期待はしないでおこう。


「ギルドにでも顔を出すか」


 陸地から見てまだまだ海皇亀は小さく見える。が、近づいているのは間違いない。撃退できると信じて街に残るか、無理だと諦めて逃げるかを考える時間はまだある。

 だからこそ、街の中に入ってもそこまでいうほど人が減っている様子は見られない。


 ちなみに帝国軍と思われる集団は、街を迂回して港方面へと去っていった。街中を通ると騒ぎになりそうだし、街の外から港の軍事施設へ入る道があるのだろう。


 俺たちはその足で冒険者ギルドへと向かった。時間帯もあるのか、朝一ほど混んでる様子は見られない。


「さすがに海皇亀対策の依頼が多いわね」


 空いているので、なんとなく目についた一階の依頼ボードも確認してみる。


「だなぁ。東の森への狩猟依頼も多いな……。逆に船の護衛依頼は減ったかな」


「遠くに亀がいるし、何が起きるかわからないものね」


「よし、二階行くか」


 ある程度確認できたので次は二階の依頼ボードだ。


「あれ? ローウェルさん?」


 上へ行こうとしたところで、二階へ上がる階段からギルド職員のローウェルが下りてきた。


「ちょうどいいところに。お待ちしてました」


 どうやら俺たちに用があったようで声を掛けてくる。ふと傍にいた女冒険者がニルを見て手をワキワキさせている。もふりたいのであればどうぞご自由に。


「何かあったんですか?」


「ええ。ここじゃなんですので、三階へどうぞ」


 ローウェルに連れられて二階をスルーしていつもの三階の部屋へと通される。今回はギルドマスターも同席しているようで、椅子に腰かけてお茶を啜っていた。


「おう、よく来てくれたの」


「どうも」


 手を上げて挨拶されたので、軽く会釈を返して椅子に座る。すでに俺たちの分のお茶まで用意されていて、ローウェルが筆記用具を手に取るとすぐに話が始まった。


「単刀直入に言うとだな、お主たちにこの依頼を受けてもらいたい」


 差し出された依頼票を見ると、海皇亀へ攻撃を仕掛ける者たちを募集とある。


「受けるのはかまいませんが……」


「ええそうね。……でもいいのかしら?」


 募集している冒険者のランクが、Bランク以上の遠距離攻撃持ちだったのだ。俺たちはもちろんCランクなので資格がないんだが、そこは大丈夫なんだろうか。


「そこは問題ないわい。ワシからの指名依頼という形をとらせてもらうからの」


「はぁ、そうですか。……それはそれで目立ちそうですね」


「しょうがないじゃろ。カントがぜひお主らもと推すのでな」


「んん? どういうことですか?」


 Bランク以上の冒険者への依頼に、Cランクのカントたちが関わってくる理由がわからない。


「ああ、それはじゃな、ワシからカントに推薦者を聞きだしたんじゃ」


 話を詳しく聞けば納得だ。鑑定が使えるカントだからこそ、Bランク冒険者にも匹敵するCランク以下の冒険者がいないか確認したそうだ。


「それで俺たちの名前が挙がったんですね」


「そういうことじゃ」


「他に名前の挙がった人はいますか?」


「いや、生憎と他の名前は聞けなかったのぅ。他に有望な者がいないか期待しておったんじゃが……」


 あー、うん、それはご愁傷様です。もしかしたらちゃんといるかもしれないので、そこまで落ち込まなくてもいいと思いますよ。


「いないものはしょうがない。少しでも戦力を増やせればと思っておったが、あまり能力の低い者を加えても意味がないからの」


「まぁそうかもしれませんね」


「Bランク以上ってことは、もしかしてSランクの冒険者も参加するんでしょうか?」


 莉緒からの質問も飛ぶが、それは俺もちょっと気になっていたところだ。今まで会ったことのある高ランク冒険者っていうと、Bランクの『天狼の牙』とかかな。あとは元Aランクだったギルドマスターとかもいたっけ。


「ああ、今帝国にいるSランク冒険者は二名じゃが、一名は連絡がつかなくての。来るのは一人だけじゃ」


 ふむふむ。一人だけでもSランク冒険者に会えるというわけか。


「あとはAランク冒険者が二名と、Bランク冒険者は五名じゃ」


「そこに俺たちが混ざるんですね」


「そうなるのぅ」


 船は二隻に分乗して海皇亀の側面へと回るとのこと。もし狙いを外して亀の後ろへ逸れても、陸地がないため全力でやってほしいとのことだ。


「攻撃の威力で進路をずらせればそれでよし。万が一攻撃者のほうへ進路を変えてもそれでよしじゃ」


「いやいや、それって俺たちがまずいですよね」


 さらりと怖いことを言うギルドマスターだな。俺たちは空を飛べるけど、他の人たちは大丈夫なのか。


「何、船はそのまま放棄してもらってかまわん。Bランク以上ともなれば自力でなんとかできるじゃろ」


「まぁ、俺たちは大丈夫ですけど、他は知りませんからね」


 肩をすくめるけどギルドマスターは聞いちゃいない。俺としても他人事なのでスルーしておこう。きっと本人がなんとかするだろう。


「ところでそこの従魔も遠距離攻撃が可能かの?」


 ちらりと部屋の隅で寝転ぶニルへと話題が飛ぶ。


「どうでしょう。魔法は使えるらしいですが、使ったところは見たことがないので」


「そうですね。私も見たことないです」


 ステータスも物理寄りだし、魔法はそこまで得意じゃないんだとは思う。


「そうか、それは残念じゃが仕方がないの」


 そこまで落胆した様子は見せなかったが、気を取り直したのか姿勢を正すと。


「決行は明日の午後じゃ。顔合わせもあるので午前中にギルドに顔を出して欲しい。よろしく頼んだ」


「わかりました」


 その場で指名依頼書を発行してもらうと、明日の準備をすべく冒険者ギルドを後にした。

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