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第142話 謎の海藻はワカメか昆布か

「と言ってもできることはないんだよなぁ」


「そうねぇ……」


 いろいろ考えたが最終結論はどうしてもそこへと行きつく。首輪を外して他国へ連れ出すくらいしか思いつかない。ただし、首輪を外したのが俺たちだとバレれば、自分たちが犯罪者になってしまう。


「金で解決できればいいかもしれないが」


「相手がどんな人物かもわからないしね」


「なるようになるしかないか」


 フォニアは確かに可愛かったけど、そこまで親しくなったわけでもない。あんまり入れ込みすぎるのもよくないし、気持ちを切り替えて行こう。


 というわけでまたもや港にやってきました。今日は海藻の収穫にきたけど、果たして食えるのか。まぁ鑑定すればわかるんだろうけど。


「問題はどうやって採るかよね」


「……素潜り?」


「魔法でなんとかできそうな気もするけど」


 このあたりの今の気候としては、海に入れないほど寒いというわけでもない。五月くらいの春の気候といったところだろうか。暑くもなく寒くもない、過ごしやすい気温である。


「水の中に入るにはやっぱり寒いかもね」


「でしょ」


 桟橋から腕を伸ばして海中に浸けるが、海水は冷たい。


「とりあえず見えてるから魔法を飛ばしてみるか」




 結論から言うと、刃物を魔法で遠隔操作して刈り取るのが一番早かった。最初は目視で魔法を飛ばしたんだが、水中に見える物体は光の屈折で、ずれた位置に見えることを忘れていたというのもある。が、問題はそこではない。水中へと斜めから魔法を撃ちこんで海底へと直撃すれば、砂などが舞い上がって視界が悪くなるのだ。


「でかいな」


「大きいね」


 刈り取って地上へと引き上げた海藻を観察しているが、根元からだと十メートルくらいあるだろうか。緑色をした一枚の細長い葉っぱのように見える。陸に近い浅い海で採れる海藻でこれだ。沖へ行けばさらにでかいやつがいるのかもしれない。


「ワカメと昆布ってどう違うんだっけ」


「さぁ……」


 ふとした疑問を口にしてみるが、莉緒もよく知らないらしい。


「とりあえず鑑定してみるか」


 =====

 種類 :植物

 名前 :アオグサ

 説明 :食用となる海藻

     乾燥させると旨味が凝縮され、いい出汁が出る

     生食可能

 =====


「ふむ……。一応食えるみたいだな」


「そうなんだ」


「乾燥させるといい出汁が出るらしい」


「へぇ。昆布みたいだね」


「じゃあこっちはどうだろうか」


 もう一種類、赤みを帯びた海藻がある。一本の太い茎からは、ムカデのように枝茎が出ていて葉を茂らせている。


 =====

 種類 :植物

 名前 :アカグサ

 説明 :食用となる海藻

     触れると葉が巻き付いてきて力強く締めてくる

     毒を持っているが加熱することで分解され無害となる

 =====


「こっちも食えるけど、生食不可だって」


「ふむふむ」


「加熱すると毒性が分解されるってさ。しかも触ると巻き付いてきて締め殺されるらしい」


「怖いね」


「だなぁ。植物にも気を付けないとな」


「そういえば岩場に生えてる海藻もあるね」


「あれか……。海苔みたいなやつかな」


 =====

 種類 :植物

 名前 :ミドリグサ

 説明 :食用となる海藻

 =====


 近づいて鑑定してみると、シンプルな結果が出てきた。


「食用としか出てこないな」


「一応削り取っておこうか」


「ちょっと面倒だけどな。美味かったら集めよう」


 というわけで莉緒と手分けして海藻を集めることにした。




「よし、実食だ!」


「一応海藻の種類ごとに分けてみたよ」


「ひとつだけ食う気の起きない色のやつがあるんだけど」


「うん。火を通したら真っ青になっちゃった」


 いやでも鑑定じゃ食えるって出てたからなぁ……。


「まぁ……、食ってみればわかるか」


「とりあえず茹でただけだから、味がしないかもだけど」


 意を決して口に入れてみるが、どれも悪くない。昆布もどきを魔法で脱水させ、からからに乾燥させてみて出汁もとってみたけどそこそこいける。


「青い奴も悪くないな……」


「見た目があれだけど、私は好きかも」


「俺としてはまぁ、食えないことはない……かな」


「昆布もどきは天日干しすればもっと旨味が凝縮される可能性もあるわよね」


「あー、確かに。魔法で急速乾燥って無理やりっぽいしなぁ。宿のベランダで干してみるか」


「干し方とかわからないけど、いろいろやってみましょう」


 なんにしろ、海藻採取にきてよかった。味付けほとんどなしでも食えるってことは、ちゃんと料理すればもっと美味いはずだ。


「今度また巨大魚解体祭りがあったら、街の連中に海藻料理出して感想聞いても面白そうだな」


「あはは! そうね。身近にあるのに食べてなさそうだったもんね」


「けっこう海底に生えてるのにもったいないよな」


「じゃあもうちょっと沖まで出て集めましょうか」


「おう」


 こうしてこの日は一日中、海藻集めに勤しんだ。たまに海底に甲殻類や貝類なども見つかるのでどんどんと集めていく。途中何かの貝あたりに刺されたような気もするが気にしない。

 ……って毒持ちじゃねぇか! え? なに、割と強力で死に至る可能性もありますだって? ……いや特になんともないけど、毒耐性ちゃんと仕事してるな。

 よし、莉緒にも知らせておこう。刺されたら大変だ。

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