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第136話 大型船の護衛をしてみよう

 二日後。やってきたのは港に停泊している大型船だ。

 依頼を受けてからは情報収集に勤しんでいたが、ようやく船を護衛する日がやってきた。護衛する船は三十メートル級。Cランク冒険者八人での仕事となる。朝から出発して沖へ出て昼頃に到着、そこから漁を開始だ。船上で一夜を明かすと少し場所を変えて昼まで漁をして、夕方ごろに港街へ帰還となる。


「おはようございます」


 日の出を迎えた頃、俺たちは港へとやってきた。すでに目的の船では荷物の積み込みが行われており、出航の準備が進められている。


「おっと、あんたらが今回の護衛を引き受けてくれた冒険者かな」


 船の前で作業をせずに立っていた漁師に声を掛けてみたが、間違っていなかったようだ。


「はい。柊と言います。こっちが莉緒で、従魔のニルです」


「わふぅ」


 自己紹介すると莉緒が軽くお辞儀をし、ニルが声を上げる。


「オレはゴルドフってんだ。よろしくな。ちなみに護衛の冒険者はあんたらが一番乗りだ。まぁ出発まですることもないし、他の連中が集まるまでここでしばらく待っててくれ」


「わかりました」


「……ちょっと早く来すぎちゃったかな?」


「かもしれないけど、まぁ遅刻するよりはいいんでない」


「そうかもね」


 益体もないことを話していると、漁師には見えない冒険者風の男女が合流したので軽く挨拶をする。


「僕はクリストフ。よろしく」


 全体的に細身の、弓を装備した男性だ。グレーの短髪に同じ色をした瞳をしており、口調も相まって優男といった風体だろうか。


「おれはアリナーだ」


 一方で一人称が『おれ』と言ったのは女性だった。杖を持ち魔法職に見えるが、腰には投擲用なのか短剣がたくさん装着されている。蒼い髪と黄色い瞳の活発な印象を受ける人物だ。


 最後に合流したのは男四人組であるが。


「げっ」


 どうやらギルドで鑑定を仕掛けてくれたパーティだったようで、開口一番に聞こえてきた言葉がこれだった。


「あの時はどうも」


 当時多少はイラっとしたものの、今となっては別に何とも思ってはいない。これからともに仕事をすることになるのだ。ギスギスした雰囲気はよろしくない。


「銀の盃のメンバーは君たちと面識があるのかい?」


 クリストフが意外といった表情をしている。


「銀の盃? ええと、初めてギルドに顔を出した時にちょっと」


「なるほど?」


「あははは! あんたら子どもっぽく見えるしなー!」


 疑問形で返してきたクリストフだったが、アリナーには大受けしたのか背中をバシバシと叩かれた。勘違いしてそうだけど別に指摘したりはしない。


「はは……」


 四人組も同じなのか、苦笑いを浮かべるだけだ。


「全員揃ったみたいだな。船長のところまで案内するからついてきてくれ」


 全員との自己紹介はまだだったが、声を上げたゴルドフがさっさと船へと乗り込んでしまう。


「じゃあ行こうか」


 それを見てクリストフが後に続き、俺たちも船へと乗り込んだ。

 ちなみに銀の盃とはこの男四人組のパーティ名だ。クリストフとアリナーのパーティ名はハンタークロスというらしい。




「船長! 護衛の冒険者が揃いました」


「おう、来たな」


 甲板へと上がると、船の後方で設備の点検をしていた人物へとゴルドフが声を掛ける。どうやらこの人が船長らしい。

 胸板の厚いごつい体つきをした人物かと思いきや、中肉中背の割と平均的な体格の人物だった。茶色い短髪で、茶色い瞳は強い意志を感じる眼光を備えている。傷だらけの腕を見れば、なるほど船長というのも頷ける。


「今日もいつも通りよろしく頼む。……ん?」


 俺たちに気が付いた船長が首を傾げている。いつも通りで済ませたかったんだろうけど、それはそれで困るんだけどな。


「どうも。Cランク冒険者の柊です」


「莉緒です」


「で、こっちが従魔のニルです」


「ほうほう、初めて見る顔だな……。船長のガーグスだ。よろしく頼む」


 俺の頭のてっぺんからつま先までじっくりと観察したあと、鼻を鳴らしてクリストフへと向き直る。


「分担はいつも通りクリストフたちに任せる。出航は一時間後だから遅れないようにな」


「わかりました」


 苦笑しながら返すクリストフが俺たちに向き直ると、今後の船の護衛について話をしてくれた。

 二人ずつペアになって船の前後左右を警戒するのが基本的な仕事とのことだ。たまに海の魔物が襲ってくるが、漁で獲物を釣り上げているときが一番多いらしい。なので移動中は船内に引きこもっていなければ割と自由だ。夜になれば夕方から日の出まで、ペアで二時間半ずつほど寝ずの番をするとのこと。


「ふむふむ。群れに襲われたりすれば近場の人が応援に駆け付ける感じですか」


「そこは臨機応変に当たればいい」


「なるほど」


 行き当たりばったりということですね。そこまで広くない船だし、敵を感知してから駆けつけても十分間に合うだろう。


「初対面の人間同士、そううまく連携など取れないからね」


 言葉の後半を飲み込んでいたがそこは同感だ。だからといって何もしないわけでもなく、お互いに得意なことをある程度話し合っているうちに出航の時間となっていた。


「よーし、てめぇら出航だー!」


「「「「「おー!!!」」」」」


 船長の声に周囲からも叫び声が上がる。

 何とも威勢のいい男くさい連中ではあるが、こういう雰囲気も嫌いではない。護衛の八人を含めて三十人ばかりの人間を積んだ船は港街を出発して沖へと向かった。

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― 新着の感想 ―
自分は好き勝手鑑定してるくせに、いざ自分が鑑定されるとイラつくのは流石に幼稚すぎんか…
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