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第135話 冒険者ギルドで依頼を受けよう

 結局朝市では海藻の類は手に入らなかった。ワカメとか昆布とか欲しかったけど、それはまた探しに行こうと思う。港近くの海中にゆらゆら揺れる海藻っぽいものがあったし、潜って取ってきてもいいかもしれない。

 しかしそれはまた今度だな。


「じゃあそろそろギルドに行くか」


 朝ごはんを食べてすぐ、ニルを引き連れて莉緒と二人で冒険者ギルドへと向かう。海側にある宿から大通りを通って、街の中心部方向だ。大きな港街にあるギルドだからか、その規模もそれなりに大きい。魔法陣の上に剣と盾が描かれた看板は他の国でも同じだ。

 中に入るとある程度注目を集め、その後ろからニルが姿を現すと一部の人たちの顔がギョッとした表情に変わるのもいつも通りだ。


「えーっと、依頼はっと……」


 正面にはそこそこの広さをとったカウンターがあり、左手に依頼ボード、右手に軽食を提供する休憩所がある。カウンターと休憩所の間には二階へと上がる階段が見えた。

 まっすぐに左手の依頼ボードへと向かうが、人だかりになっていていまいち近づけない。


「……あれ?」


 ランクに合った依頼は列ごとに分かれているんだが、ボードの上方を端から順番に見て行ってもGからDまでの依頼しかなかった。


「あ、C以上は二階って書いてあるよ」


 莉緒に言われて気が付いたけど、隅っこに小さい字で書いてあった。


「じゃあ二階だな」


 俺たちの声が聞こえたのか、近くにいた冒険者がギョッとしてこちらを見るがスルーだ。階段を上っていき二階へと向かう。そのまま三階へと向かう階段があるが、そちらは資料室のようだ。

 そのまま二階のフロアへと足を踏み入れると、一階とはまた違った威圧感を含んだ視線が向けられる。さすがCランク以上のみがいるフロアということだろうか。


「子ども……?」


 訝しむ声は聞こえてくるけど、直接絡んでくるような人物はいない。

 ざっと辺りを見回すが造りは一階とそう変わらない。左手にある依頼ボードに向かおうとしたとき、ピリッと首筋に刺激があった。


「あら」


 しばらくして莉緒も感じたのか声を上げる。ひたすら莉緒にも鑑定を使って覚えることができた『鑑定感知』が仕事をしたのだ。

 莉緒とは時間差で感知した方向へ顔を向けると、一人の男の眉がピクリと動いた。他にも冒険者がいるので断定はできないが、鑑定をかけてきた相手かもしれない。


「どこまで見られたかわからないけど、どうしようか」


「うーん……。あんまり広められたくはないけど」


「とりあえず釘を刺しておこうか」


 少しでも拡散を防ぐのであれば早いほうがいい。依頼ボードに背を向けて、鑑定を感知した休憩所方向へと歩いて行く。向かうのは一番手前のテーブルに座る四人組の男たちだ。眉を動かした男は俺たちに注視したままだが、他の三人が顔を突き合わせて何やら小声で話をしている。


「どうだった?」


「また鑑定したんだろ?」


「おいおい……」


 聴覚を強化するとそんな声が聞こえてくるのでこれはもう確定だろう。テーブルの前まで行くと両腕を組んで、鑑定してきた男を見据える。


「あん?」


 赤毛の一人がこっちに気が付いたようで訝し気な声を上げた。鑑定してきた男は何もしゃべらないが、額に冷や汗を浮かべているように見える。


「何が見えましたか?」


「……は?」


 確信を持って声を掛けると、残りの二人からも「えっ?」と声が上がり、周囲もざわりと気配が変わる。


「俺たちを鑑定したんでしょ? だから何が見えたのか……、あ、すみません。広められたくないのでやっぱり言わなくていいです」


 自分で言葉を翻したことがおかしかったのか、莉緒が噴き出した。


「あはは、だから広めないでもらえると嬉しいな」


「グルルゥ」


 珍しくニルは低い唸り声を上げている。

 知られてしまったことを忘れさせることはできないので、広めないでとお願いすることくらいしかできることがない。


「おいおい」


 何ふざけたこと言ってんのと言わんばかりの態度で赤毛が立ち上がると、鑑定持ちの男に腕を掴んで止められる。


「……んだよ」


 振り返ると必死に首を左右に振る鑑定持ち男にギョッとしてまた俺たちに顔を向ける。


「……そんなにヤバいのかよ」


 結局俺たちには何も言わず、再度鑑定持ち男を振り返って小声で尋ねるが、必死に首を縦に振る動作が返ってくるだけだ。

 ここまでの反応されるとホントに何が見えたのか気になってくるだろ……。莉緒と顔を見合わせると肩をすくめる。


「じゃ、そういうことだから」


 今度誰もいないところで会ったときにでも聞いてみるか。

 用は済んだので、改めて依頼ボードへと足を向ける。


「チッ」


 もう一人の男からの舌打ちを背に受けつつ依頼ボードの前までくると、何人かの人たちが場所を空けてくれた。なんだかちょっと目立ってしまったが仕方がない。鑑定された時の対応ってどうするのが正解なんだろな? それもある意味、これからわかるのかもしれない。


「どれがいいかな」


 ざっと見てみるとさすが港街だけあって、海や船、海産物関連の依頼が多い。


「あ、あっち、海の悪魔の捕獲依頼があるわよ」


「うお、マジだ。でも捕獲か。生きたままってことだよな」


 昨日の朝市で仕入れたものが異空間ボックスに入ってはいるが、生きてはいない。Cランク依頼になってるのは、生け捕りが難しいのか、それともこう見えてそこそこ強い魔物なのか。朝市に並ぶくらいだからたぶん前者だと思うけど。


「うーん、これにするか」


「そうね」


 そうして決めたCランクの依頼を一枚剥がし、カウンターへと持っていった。

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