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第128話 鑑定感知

「おおー、やってるねー」


 ギルドの裏に作られている訓練場へと二人と一匹でやってきた。訓練をするためじゃなく、他の冒険者たちを鑑定するためだけに来ただけだ。なのでちょっと空いている場所を確保するとその場で全体をぐるりと見回す。


「どう?」


 さっそく莉緒から声がかかるけど、ちょっと待ってくれ。そんなすぐに鑑定結果と冒険者たちの練度は結びつかない。


「うーん……、全体的に最初に会ったギルド職員以上のステータスをした人物はいなさそうだな」


「そうなんだ?」


 この場にいる全員への鑑定を済ませた後、莉緒へと向き直る。ちなみにギルドで俺たちに絡んできた少年もいたので指をさす。


「あっちで転がってる少年のステータスは100前後だな」


「へぇ。確か十二歳のFランク冒険者って言ってたっけ。なりたての新人だったら、一般人とそう変わらないのかな?」


 莉緒の言葉に同意していると、頭の奥に何かが突き刺さるようなチクリとした感触がした。

 周囲を見回してみても、特にこれといって俺たちにアクションを取ってるような人物は見当たらない。周囲から感じたわけではないからだ。

 疑問に思いつつも発生源に視線を向けると、こっちをじっと見つめる莉緒と目が合った。やっぱり莉緒からしか考えられないんだけどなぁ……。


「……どうしたの?」


 思わず首を傾げる俺に声がかかる。


「いや、ちょっと……」


 とさっきの不快感を説明すると、もう一度チクリとした感触が莉緒からした。やっぱり、莉緒が俺に何かしてるってことなのか?


「あ、もしかして鑑定されたことを感知してる?」


「えっ?」


「さっき何度か柊を鑑定してみたのよね」


「そうなのか」


「うん。だからもう一度鑑定してみるわね」


「わかった」


 身構えていると確かにチクリとした感触がある。


「きた」


「やっぱり鑑定が原因……なのかな」


 半信半疑でいるとまたもやチクチクと刺激がくる。


「ちょっ、ストップ!」


「えへ、ちょっとやりすぎちゃった?」


「あぁ、うん、大丈夫」


 連続して感じる不快感に思わず声が上がってしまう。しかしこれはこれで口元がちょっとにやけてくるのを止められない。


「鑑定感知とかそれっぽいスキルが手に入ったってことだよな!」


「あはは」


 俺の叫びに莉緒から苦笑いが漏れる。新しいスキルが手に入ったと自覚できることはあんまりないからな。鑑定でスキルを見ることができないので、実感のあるものでしか体験できない。最近だとニルと遊んでるときに、俺も空中を蹴って二段ジャンプみたいなことができるようになった時か? うん、思ったより最近だった。


「しかしステータスが高いほうが強いのは間違いなさそうだな」


 冒険者たちを見回していると、やはりそう感じてしまう。


「やっぱりそうよね。……でもそうじゃない人もこの中にいたりするかしら?」


「ああ、えーっと、あそこの槍使いの男とかそうかも。相手の方が1.5倍くらいステータスが高いけど、かなり優位に進めてる」


 前衛としての槍使いの筋力、体力、俊敏の平均値は500前後。相手の剣士は800前後といったところだが、何か強化系のスキルを持っているんだろうか。終始剣士を圧倒……とまではいかないが、危なげなく対処している。


「そろそろ行こうか」


 しばらく冒険者たちを観察したところで莉緒に声を掛ける。


「もういいの?」


「うん。面倒なことが起きそうな気がするから、さっさと退散しようと思って」


 面倒見のいい冒険者にしごかれていた少年が、訓練が終わったのかゆっくりとこちらへと歩いてきたのだ。


「それもそうね」


 莉緒も気が付いたのか、踵を返して訓練場を後にする。後ろから何か呼び止める声が聞こえた気がしたけど、気が付かなかったことにしよう。

 さっさとギルドを出てどこへともなく歩き出す。


 スキルを取得したばっかりだけど、こうして出歩いていても特に不快感は感じない。師匠が言うには、鑑定を持っている人間はそう珍しくはないらしい。ということは、常にだれかれ構わず鑑定しまくるような人間はそういないということか。

 どちらにしろ、俺は鑑定を使いまくることにしようか。早くスキルも見えるようになりたい。あ、莉緒にも鑑定しまくっておこう。そのうち鑑定感知ができるようになるかもしれないし。


「そろそろ宿でも探しましょうか」


 思ったより訓練場で時間を食ってしまった。気が付けば夕方になっている。街に来てからいくつか宿は物色していたが、ふと小ぢんまりとした宿を見つけたので入ってみる。


「いらっしゃい」


 抱っこ紐で赤ちゃんを抱えた女の子がカウンターから声をかけてきた。パッと見た感じでは莉緒と同じ年くらいに見える。


「えーと、二人なんだけどいけるかな?」


「はい、大丈夫ですよ」


 まんまるにふくらんだほっぺが可愛い赤ちゃんだ。くりくりとした大きな瞳が、俺と莉緒へと交互に行き交う。


「うわぁ……、かわいいですね」


「あはは、ありがとうございます」


「妹さんですか?」


 嬉しそうに赤ちゃんの頭を撫でる女の子に莉緒が尋ねるが。


「えっ? あ、えっと、わたしの娘です」


「「えっ?」」


 予想外の答えに思わず莉緒と二人で固まってしまった。

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[一言] 主人公たちの子供はいつかなー
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