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第100話 技術を提供しよう

 屈強な男たちが地竜を解体する横で、俺たちは素材の放出を再開することとする。地竜の本体を出すと倉庫がいっぱいになり、これ以上魔物は出せなくなったのだ。なので今はテーブルの上に乗るような小物の査定が行われている。今のうちにサンプルで作った瓶も出しておこう。


「まさか……、(エンシェント)赤竜(レッドドラゴン)の鱗なんてものが出てくるとは思いませんでした」


 最初に出した時はフルールさんが固まって動かなくなった。再起動して動き出したと思ったら、鱗を恐る恐る手に取って「これが伝説の……」とか呟いてたけど大丈夫だろうか。

 ちなみにサイズは長辺が一メートル、短辺が八十センチくらいだろうか。俺が持っている盾と同じくらいのサイズである。鱗一枚でこのサイズって、ドラゴン本体の全長がまったく想像つかない。


「まだ何枚かありますけど、とりあえず持ってるので一番大きいのがそれです」


「……へっ?」


 変な声を出してまたフリーズするが、今度は復帰が早かった。


「そ、そうですか。わかりました。もう今後何が出てきても驚かないようにします」


「あはは」


 莉緒も苦笑いだけど、以降はもう大丈夫だと思う。一番高く売れそうなやつから出してるので、今後出すものは徐々にレア度が落ちるはずだ。たぶん。


 =====

 種類 :道具

 名前 :(エンシェント)赤竜(レッドドラゴン)の鱗

 説明 :名前の通り(エンシェント)赤竜(レッドドラゴン)の鱗。

     その鱗は並の攻撃では一切の傷をつけることすら敵わない強度を誇る。

     火や熱に極めて高い耐性を持つ。熱を通さないことから冷気にも強い。

     魔力をよく通し、また魔力を遮断する二面性を持っている。

 =====


 にしても道具類を鑑定するとこんな感じで出てくるようだ。さすがレッドと名がつくだけあって、火や熱に強いと出た。にしても魔力を通すけど遮断するってどういうことだってばよ。


 異空間ボックスからもう一枚取り出して手に持つと、とりあえず魔力を流してみる。


「おお」


 ぼんやりと赤く光り、なんとなく熱を持った状態になる。遮断する効果はよくわからないけど、今はそんな時間はない。あとで試すことにしようか。


「そちらもそれなりの大きさですね……」


 もはや諦めの境地でフルールさんがため息をついている。


「これは……、オークションに出せば地竜と合わせて五十億は余裕で超えてきそうな気がしてきました」


 世界樹の枝とか葉っぱとかを出していると、唐突にフルールさんが呟いた。これで五十億いくのか……。


「オークションですか?」


「はい。お金になるのは少し時間がかかると思いますが、商会で買い取るよりも高額になる可能性は十分にあります。というか絶対になります。手数料は引かれますが、それを差し引いてもオークションに出す価値はあるかと」


 なるほど。オークションか……。値段が吊り上がるならそれでもいいかな? 融資というか援助ができるのであればそれでいい。大放出するつもりだったけど、出すアイテムはひとつずつにしようかな。同じものを何個も出せば単価が下がりそうだ。


「どちらにしろ当商店に五十億もの現金は在庫がありません。ですので支払いが後日になるのはどちらも同じなのです」


「わかりました。今回はオークションに出すことにします」


 しばらく考えて結論を出す。売り払うのはいったんこんなところで十分かな。むしろこれだけで五十億とか予想外なんだけど。


「では、素材はいったん置いておいて、次は俺が作った商品を見てもらってもいいですか」


「? はい、わかりました」


 一瞬疑問符を浮かべるも、すぐに続きを促してくるフルールさん。その言葉に俺は、あらかじめテーブルへと置いていた土魔法で作った一本の瓶を指し示す。瓶と言ってもガラスで作ったものではなく、細長い土製の瓶である。


「これは……? そういえば最初にテーブルに置いてましたね。普通の瓶に見えますが」


 地竜の解体が始まり、テーブルへとついて小物の査定が始まった時に事前に置いてたやつだ。証拠を見せるにはある程度時間が経っているもののほうがいい。すでに二時間以上は経過しているので十分だろう。


「えー、長時間にわたって温度を保つことのできる瓶です」


 いわゆる魔法瓶である。

 昨日寝る前に、商会へと技術を売れないかと思ってサンプルを作っておいたのだ。もともとは野営用ハウスの風呂釜に使っていたけど、それを瓶の形にするのは簡単だ。


「あぁ、それで最初にテーブルに置いたんですね。ということは……」


「はい。この中には熱湯が入っています。どれくらい熱い状態を保ったままか確認してもらいたくて」


「わかりました」


 作った魔法瓶は先端にコルク状のもので栓をする形だ。ねじ込み式のカップになる蓋も作れるけど、自分以外の人間に作れるかどうかがわからなかった。

 栓をはずすと微かに湯気が上がってくる。


「えっ?」


 そのまま飲んだりすると火傷するので、木のカップを出しておく。


「ありがとうございます。……瓶そのものは熱くないですね」


 恐る恐る魔法瓶を掴んでそう言葉を漏らしたフルールさんは、ゆっくりと木のカップへと熱湯を注いでいく。

 ふわりと湯気が立ち上り、中の液体の温度が見た目でもわかる状態だった。

 ゆっくりとカップを持ち上げて両手で包み込んでいると、やがて熱さが伝わってきたのかテーブルの上へと置く。


「あの、これって魔道具ではないんでしょうか?」


「え? 違いますよ。ただの瓶ですよ」


「そんなはずないでしょう。ミミナ商会が最近開発した保温性の高いカップもここまでじゃないですよ」


 あ、あのカップってそこそこ有名なやつだったんだ。思ったほどじゃなかったけどなぁ。


「そこまで驚いてもらえるとは嬉しいですね。これの構造というか、作り方を提供したいと思ってるんですけど、売れますかね?」


 どこかに魔石が仕込まれてるはずだと探しつつも戸惑いを見せるフルールさんに、俺はニヤリと笑いかけた。

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