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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
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第9話 先生と師匠

 セタスさんとマルアさん……すごい人達だった。


「さて、それじゃあ実力を見せてもらおう」


 セタスさんが持つと小さく見える木剣も、俺が持つとロングソードだ。

 普段の狩りは農具やナイフを使っているので、きちんとした武器を持つのは初めてだ。

 中学、高校の授業で剣道はあったけども……

 古い記憶を思い出して剣を構える。


「変わった構えだが、理には適っているな」


 左手一本で木剣を構えるセタスさん、ただ立っているだけなのに、全く隙がない……ように見える。


「好きなように攻めてきていいぞ」


「はい!」


 俺は勢いよく飛び込んで剣を持つ手に小手を放つ。


「ほう……」


「いっ!」


 多分、すごく軽く剣を合わされただけだと思う、それでも、まるで鉄の塊に打ち込んだようで、思わず剣を離してしまった。


「すまんすまん、まだ8歳だもんな。

 変わった攻め方だったが、なかなか鋭くて力加減を誤った」


 それからこちらの力に合わせてくれて、剣を落とすことは無くなったけど、全く一切これっぽっちも何も出来ずにこてんぱんにされた。


「確かに8歳でこれだけ動けるのは逸材だな。

 これからが楽しみだ……」


「あ、ありがとう、ございます……」


 俺は地面に突っ伏して立てないほど消耗したが、セタスさんは汗一つかいていない。

 これが……冒険者……

 想像よりも遥かに高い山を見せられて、俺は……


「いつか、一本取りたいです」


 燃えた。


「ほう、いいな。その心意気は大事だぞカイト!」


「それじゃあ、休憩したら私の番ね」


 休憩と昼食をとった後はマルアさんの授業だ。

 ふたりとも村の食事が豪華なことに驚いていた。


「家の中の設備も凄いな、水が使えるって……町でも少ないぞ……」


「まさか室内にお風呂が有るなんて……嬉しい……」


 この世界の一般的な体の洗浄はお湯と布を使って拭くだけだからなぁ。

 俺のこだわりで薪だけど湯船を広めた。

 木製だけど、森に生えるある種の樹液を塗ると素晴らしい撥水と防腐効果があることをノアが教えてくれた。

 そのおかげで水回りの機材は町にだってそうそう無いくらいに充実している。

 体を清潔に保つことは、公衆衛生的にも大事だからね。


 食後に2時間ほど仮眠。泥のように眠ってしまった。

 そして、午後の鍛錬が始まる。


「まずは、適正を見つけましょう」


 外に用意された大きな机に、何やら砂の入った箱。

 村の人達も興味があるみたいで遠目に俺たちを視ている。

 さっきのコテンパンも視られていた、恥ずかしいけど、これから成長すれば良いんだ!


「この中の砂は全て使い終わった魔石を砕いたもの。

 ここに魔力を通すと、あなたの魔力に適した色に変わるの」


 赤は火、青は水、黄は風、茶が土、これが4大属性。

 輝くと陽、黒ずむと陰、こっちが2極属性と呼ばれている。

 この2つの組み合わせの8つの得意分野があるとされている。


「ちなみに最初に見せておくわね」


 そう言いながらマルアさんが魔力を箱に通すと、色彩の変化がなく、薄っすらと色が暗くなる。

 灰色っぽい。


「私は全属性で少し陰に偏っているわ」


「灰色の魔女……マルアか」


「そうね豪腕のセタス」


 何その二つ名、かっこいい!


「全属性って凄いんじゃないんですか!?」


「……便利ではあるわ、ただ、器用貧乏になるわね」


「なるほど……」


「まぁ、とりあえずやってみて。魔力の扱い方はわかるわよね?

 たまに天才型だとよくわからなくて使っていることもあるから一応聞いたけど」


「大丈夫です」(たぶん)


 俺も箱に手を添えて魔力を流し込む……流し込む……流し込む……


「あれ?」


「これは……!」


「変わってないのか?」


「違うわ……『透明』になっている……」


「ど、どういうことでしょう?」


「あなたも全属性……それと、両極性なのよ……凄いわ……そんな人間がいるのね」


「えーっと、すみませんよくわからないのですが……」


「すべての属性が扱えて、さらに陰陽両方とも扱える。

 理論的には全ての魔法を完璧に使用できる……」


「おお、さすがノア!」


「? なんでそこでノアちゃんが出てくるの?」


「僕の魔法能力はノアと繋がりがあるから使えるんで……」


「なんですって!? そんな話聞いたことがないわ!」


「ノアと出会って、繋がりを感じてから魔法を使えるようになったからそうなのかなと思ったんですけど……」


「なるほど、ただそれだと、自覚したのがそのタイミングだったって場合もあるわね」


「僕自身の力ってことですか?」


「従魔が魔法を使えるからって、使役者が魔法を使うっていうのは聞いたことがないわ」


「じゃあ、僕の力でノアの助けが出来るんですね!?」


「ええ、そうね」


「やったー!」


 俺自身の力で、少しはノアの助けが出来る。それがとても嬉しかった。


「……この砂は魔法を学ぶためにすごく役に立つわ。

 今日はその使い方を学んでいきましょう」


「はいマルア先生!」


「……いいわねそれ……」


「カイト君、マルア氏が先生だと、某は……?」


「うーん、師匠……?」


「おっ! いいねいいね、師匠。うんうん」


「ちょっとセタスさん今は私の授業中なので」


「ああ、失敬失敬」


 それから、砂を利用した魔法の鍛錬を習う。

 色彩の変化、形態の変化、明暗の変化、それぞれが魔力操作の練習になる。

 ちょっとお遊び感覚もあって、俺はのめり込んでいくことになる。


 授業終了後、ノアも砂をいじってみた。

 マルアさんも驚いていたが、凄まじい精度の魔力操作が出来るらしい。


「凄いわ……威力以外は私を超えている……

 すこし貧乏くじを引いたと思ってたけど、ここで得るものは多そうね……」


 マルア先生の目が輝いた。


 この日から、スパルタ教育の日々が幕を開けた。

 

次は明日の17時に投稿します

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