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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
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第6話 魔物の森

 村から森まではそれなりの距離がある。

 馬で来ればあっという間だ。

 ダスおじさんの背中にくっついて流れていく景色を楽しんでいる。

 ノアは俺の頭の上で気持ちよさそうにしている。


 村の馬は貴重なので、簡単に使うわけにいかない、つまり今回の薬草採取は村にとっても重要な仕事ってことだ。


「ダスおじさんは馬を見ててね」


「すまんな、ホントに子供に頼って情けない……」


「村唯一の馬を守るのは大事だし、大丈夫、ノアと一緒なら無茶なことはしないし、危なければ直ぐに逃げてくるからその時はよろしくおねがいします」


「おう、任せとけ! 今日はこいつも有るからな!」


 ダスおじさんは背中から巨大な斧を取り出す。

 斧を持ったおじさんならこの間の狼だって倒せる。


「では、行ってきます!」


「頼んだぞ、気をつけるんだぞ!」


 森に入って草を駆け分けて進むと、あっという間におじさんの姿が見えなくなる。

 村の人達が木材を得るためや、木の実などの森の恵みを底に入れるため、ある程度は道っぽくなっているけど、少し放置すると直ぐに草木でわかりにくくなる。

 鎌を借りてきているので、軽く道の整理をしながら進む。帰り道がわからなくなってしまっても困る。

 しばらく鎌で切り開いていたんだけど、どうにも6歳の子供の手で使うには得物が勝ってしまっている。もたもたしていたら……


「にゃっ!」


 ひゅお……


 コヨーテたちを叩き落とした空気の流れとは変わって、鋭い風をノアが放つと、目の前の草がバサバサと落ちていく。


「おお、凄いねノア! よーし!」


 今の感じを思い出して俺も風の刃を放ってみる。


 そよそよ……


 草が心地よさそうに揺れた……


「にゃにゃ!」


「もっと集中して……」


 早く、凝集して、鋭く……放つ!


 ヒュッ……


 いくつかの蔦が切れた。


「……鎌の方が早いね……」


 疲労感に対して効果が薄い……

 それからはノアが道を整えていってくれた。

 時折俺の頭から飛び降りて草むらに入っていくノア、戻ってくる時は癒し草や生活に役立つ木の実やキノコを咥えて戻ってくる。

 俺はソレを背中に背負った革袋に詰めていく係だ。

 順調すぎる勢いで革袋が満たされていく、気がつけば森のそれなりの奥まで来ていた。


「ニャニャ!」


「敵?」


 身を潜めて注意を払う。茂みの先に自分と同じくらいの背の(120cm)異形の生物がなにかの動物の肉を食べている。ゴブリンだ。うん、以前のカイトなら恐ろしくておしっこくらいは漏らしたろうが、戒斗ブレンドされているせいで、ファンタジーの定番モンスターの登場にワクワクしている。


「にゃー……」


 耳元でノアがタイミングを合わせて飛び込むと提案してくる。俺は静かに頷く。


(今だ!)


 俺の頭からノアが茂みを飛び越えていく、俺は一生懸命茂みをかき分けてゴブリンたちに鎌を構えて立ちふさがる……と思ったら、すでに土の槍で最期の一人が貫かれたところだった。

 一部の魔物は死ぬと灰になって消えていく。

 そして小さなきれいな石が灰の中に残っている。


「魔石を持って帰ればみんな喜ぶぞ!」


 ゴブリン3人分の魔石をゲットする。

 倒しても灰にならない魔物、魔獣もいる。

 その場合は死体を素材として利用したりも出来る。

 確か、低位な魔物や、逆に魔石が強大な魔物は灰になる傾向があるらしいと言われていた。


 ノアは魔物を狩って、満足げに俺の頭の上の定位置に戻ってくる。


「ノアは凄いなぁ……ソレに比べて俺は……」


「ナー」


「そうだね、これから頑張ればいいよね」


 ノアに頼り切っちゃいけない。自分でもノアのためになにか出来るように、頑張らないと!

 俺の育成方針は決定した!


 それから、革袋がパンパンになるまで素材を集めて、数匹の魔物を倒して、森を後にした。


「おお、遅いから心配したぞ!」


 森の近くでダスおじさんが馬を引きながら道を広げていた。

 どうやら心配ですることもなかったから木を切って丸太で整備をするという中々に凄いことをしながら待っていたみたいで、ただ丸太が並べられているだけの道が数メートル出来上がっていた。

 後でうまくやれば歩道っぽくなりそうだ。


「薬草も他のものも色々と集めてきたから帰りましょう!」


「おお、凄いな。重いだろ持つぞ、って重っ! 

 おいおい……これを背負って歩いていたのか?」


「にゃにゃ!」


「え、そうだったの? ノアが魔法で軽くしてくれていたんだって」


「す、すごいなノアは……」


「うん、俺はなんも役に立たなかったよ……」


「いーやそんなことはないぞ! ノアはカイトと契約しているんだから、二人で一つだ!

 カイトも凄い、ノアも凄い! それでいいだろ!」


「……うん、ありがとうダスおじさん!」


 確かにダスおじさんの言うとおりだけど、俺はノアに甘えて依存するんじゃダメだ。

 今回の人生ではきちんとノアの横に居ても良いように自分を鍛える。そう決めた。


「とにかく村に戻ろう。きっとベネスも首を長くして待っているだろう」


「そうだね!」


 ダスおじさんはノアの魔法で軽くなったかばんを抱えて器用に馬を走らせる。

 そういった技術もこれから勉強していかないと……


 村に戻って、森で手に入れた色んなものをベネス神父に説明するとすっごく驚かれた。

 村総出で森採取をする時と同じくらいか、それ以上の収穫があった。


「ノアは本当に凄いんだよ!」


 みんながノアを褒めてくれるのが自分のことのように嬉しい。


「そういえばノアちゃんってフォレストキャットじゃないのよね?

 フォレストキャットは魔法なんて使えないし……」


 夕食の時に母さんが言い出した。

 確かにフォレストキャットは一般的な日本にいる猫よりも大きいし、魔法は使わない。

 森で生活がしやすいように毛色もまだらな茶色が一般的だし。

 

「明日教会で視てもらったら?」


「どうするノア?」


「にゃー」


 美味しそうに母さんが作ってくれた特製のご飯にかぶりつきながら適当に答えてきた。


「どっちでもいいかぁ、でも、一応視てもらうか、今後の育成方針もあるからな」


 半日森を歩き回ったので、その日は泥のように眠りについた……

次話は1時間後20時に出します

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