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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第三章 冒険者編
46/50

第46話 迫りくる、危機

 冷水で少し頭が冷えた。

 なんか今日はおかしい……

 気を抜くとすぐにミーナのことを考えている。

 一人で頭を抱えている俺を、ノアも不思議なものを見るような目で見つめている。


 コンコン


「ふぁぁい!!」


「にゃ!?」


「ご、ごめん」


 ノックの音にコレでもかというぐらいびっくりしてしまった。

 扉を開ければ、当然ミーナが居る。

 なんか、いつもと……雰囲気が違う……気がする……


「すごい声出してたけど大丈夫?」


「ぜ、全然大丈夫だよ!」


「にゃー」


「んー? 変なの? どうしたのかしらね?」


 クスクスとノアと笑い合ってるミーナの美しい姿に目を奪われている。

 ……凄く、いい香りがする……ん? 香り?


「なぁミーナ、もしかして今日、香水とかつけてる?」


「あ……わかっちゃった? 状態保護あるから、ちょっとだけ、うすーくだよ?

 魔物に気が付かれない程度に、ね。

 今はもういいかなーって。

 でも気がついてくれたんだ……嬉しいな」


「……そうだったんだ……」


 え、つまり俺、汗と血の臭が常の冒険の場に、ほんの少しいい香りがあるだけで、意識しまくってたってこと……?


「ぷっ……はーーーっははっはっは!!」


「ど、どうしたの?」


「いや、自分があまりに、アレでおかしくなっちゃった」


「???」


「にゃー……」


「カイト、ほんとにおかしくなっちゃったの?」


「いや、原因がわかってスッキリしたとこだよ」


「そう、ならいいけど……あんまり無理しないでね?」


「大丈夫、もう大丈夫だよミーナ」


 よし、いつものミーナに見える。もう大丈夫だ。

 ようやく胸につかえていたものが取れたような気がする。

 まさに〇〇丸出しの男の子のような心の動きをするのだなと、変に感心した。

 そういえば、たしかに考え方とか感じ方は、すでに随分と身体の年齢に引っ張られている気がする。同い年の男からすれば少し落ち着いていると言われるが、結構中身は無茶をしがちだ。

 そもそも思考や記憶は脳が行い、海馬などを使うはずだ。

 異世界に転生した俺が以前の知識や記憶を持つということは魂には海馬の情報が……

 いや、この話はやめよう……魔法がある世界で何を真面目に……


「……イト? カイト!?」


「あ、ああ、どうした?」


「どうしたじゃないわよ、急にボーッとして、お店に入るわよ?」


「あ、うん」


 魔道具によって風を遮り心地よい空間になっているテラス席に通される。

 最近はこの店がお気に入りだ。

 

「おお! カイトにミーナ、それにノアちゃん! いらっしゃい!」


 わざわざ店長さんが挨拶に来てくれる。


「今日もいいとこいい感じで持ってくるよ!」


「ありがとう」


「森豚を納品してくれたのは君たちだろ? 一番いいところを出すよ!」


「ニャッ! ニャ!!」


「ノアちゃんの分も作るよ-!」


 ノアも店長の料理に惚れ込んでいる。

 そして俺たちも大好きだ。

 すぐに乾杯用のエールがテーブルに置かれる。

 ノアには特製のミルクだ。


「それでは、お疲れさまでした。乾杯!」


「かんぱーい」


「にゃんにゃー!」


 周りの人もノアの愛らしい仕草にニコニコとしている。

 ぐっと飲み込んだエールはよく冷やされている。

 冒険をしていると、冷たい飲み物は好ましくないので、店での冷えた一杯は貯まらない。

 心地よい苦味と、喉を通るシュワシュワとした爽快感……

 後味は麦のいい香りが鼻孔をくすぐってくる。


「くはーーーーっ、この一杯のために生きてるなぁ……」


「私もすっかり好きになっちゃった。最初は苦くて苦手だったのに……」


 タイミングよくテーブルに前菜から並べられていく。

 緑のものから木の実チーズなど、次のひとくちが美味しくなる上手い品が出てくる。


「はーーー、ここに来るといつも飲みすぎるからなぁ……」


「今日は父さんたちいないから飲みすぎても迎えに来てもらえないんだから、気をつけてね」


「にゃにゃ」


「わかったよ、ちゃんと歩いて帰れるぐらいに抑えるよ」


「おばさまもおじさまもいないんだから、ほんとにちゃんと出来るの?

 なんなら寂しくないように泊まりに行ってあげよっか?」


「ぶふぉっ!!」


 飲みかけてたエールを盛大に吹き出しそうになったのを必死に我慢した。


「ちょ、ちょっと大丈夫?

 いつもそんな反応しないじゃない……?」


「ち、ちが……エールが気管に、な?

 ははは、何言ってるんだ、ダスおじさんに殺されちゃうよははは」


「……??? ……!! 

 (まさか、いや、なんか今日は変だった……、もしかして、ついにカイトがそっちに興味を持ち始めたのか? いやいや落ち着け。落ち着くのよミーナ、慎重に、でも、チャンスがアレば大胆によ、頑張れミーナ! 目指せ既成事実!!)

 スーーーーー……はーーーーーーー……。


 うちの両親も……


 いないから……

 

 寂しいなぁ……

 

 だったらうちに来てくれないの? (必殺:寄せて上目遣いで少し寂しそうな表情!!)」



「ななななんあなななんあななん、なに、何を言っているんだははは、き、今日のミーナはなんか、変だぞ……はははははは」


 とりあえず、エールを飲み干して冷静さを取り戻そうとする。

 そう、人間がお酒で失敗する時は、こういうときだ……


 



肉食獣が・・・牙を研ぐ・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] ダスー!早くしろぉ!間に合わなくなっても知らんぞー!!
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