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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第三章 冒険者編
45/50

第45話 変化

 身体をしっかりと休めるのも冒険者としての努めだ。

 そして、休暇中でも身体をなまらせない、仲間との連携をしっかりと繋げることも大事だ。

 そんなわけで、森に入って魔獣相手にトレーニングを行う。

 魔獣からの素材も得られるし一石二鳥だ。


「いやー、これ本当にいいね」


 フォレストウルフの革を手に入れたばかりの短刀で行う。

 自動研磨って名前なんだけど、実際には切れ味がずーっと維持する。

 もちろん石や鉱石を傷つけて欠けたりすれば時間がかかるが、皮を剥いだりしている時は、ずーーーっとスパスパ斬れる。コレは快適だ!

 解体した後は血液や内臓を魔法で焼き尽くして、地面に埋めておく。

 巡り巡って森の栄養になっていく。

 作業中は匂いが周囲に広がらないために魔法を利用したりしている。

 野生の魔獣や動物が血の匂いで集まってくるからね。

 ミーナも返り血がついた服や武器がきれいになっていくさまをうっとりと見つめている。


「よかったねミーナ」


「ええ、本当にありがとうカイト!」


「にゃにゃ!」


 それから森を探索しているとゴブリンの小規模な集落を発見した。

 ゴブリンはとんでもないスピードで増えるし、成長すると高い知識をつけるので、出来る限り早く潰さなければいけない。

 基本的には一人も逃さないために大人数で相手をするのだが、俺が昔やったように、緊急時は潰すしかない。


「どうする?」


「ノアちゃんがいれば、私達でやれないかな?」


「にゃにゃ!」


「わかった、まずは探査からね」


 しずかーに探査魔法を展開する。

 以前の俺が出会った場所みたいに地下に大きな居住区などがないか、相手の人数を正確に把握する。感のいい魔獣などには逆に気が付かれてしまうが、対して歳を重ねていないゴブリンならうまく隠匿出来る。


「大丈夫、15体、変異体も居ないわ」


「よし、やろう。ノア、消音といざってときの拘束をお願い」


「ふふふ、あの臭いゴブリン相手も気兼ねなく行けるっていいわね」


 メイスを構えて笑顔でいうと怖いよミーナ。


「マジック、アロー……Go!」


 3本の魔力の矢がゴブリンの頭部を撃ち抜く。

 すでに消音の結界で村は包まれており、音もなく倒れていく、ミーナも近くのゴブリンをメイスの一撃で粉砕した。

 ようやく声が出せないことに気がついたゴブリンが慌て始めるが、既に遅い。

 粗末な木組みの家から出てきたゴブリンを次々に狙撃し、メイスが襲いかかる。

 逃亡する暇も与えずに、村を制圧する。


「お疲れ様、魔石も回収した」


 魔法で村の残骸を一箇所に集めて燃やす。

 ゴブリン達は不潔なので、そのままにしておくと疫病などが起こることが有る。

 周囲の森へと燃え移らないように魔法でコントロールしながら完全に炎に包む。


「報告しないとね……まだまだ居るんだろうなぁ……」


「ゴブリンはねぇ……厄介よね」


 低級冒険者の登竜門でも有るゴブリン退治、しかし、同時にもっとも冒険者を殺しているのもゴブリンだと言われている。

 時折巨大な王国まで発展してしまうと、複数の国が力を合わせて対処することになる。

 他の魔物や魔獣とは異なる、人類の敵だ。


「本当に、あの時は運が良かったんだなぁ……」


 今考えても、死んでもおかしくない、というか生きて帰れたのが奇跡だ。

 それこそノアにもう一度会いたいという確固たる決意がなければ生き残れなかった。


「んにゃ?」


 思わずノアの頭を優しく撫でる。

 この世界でも、俺の世界の中心にはノアが居てくれる。

 

「どうしたのカイト?」


「ノアとミーナがいてくれてよかったなって」


「ど、どうしたの? 熱でも有るの?」


「へ? いや、へ、平気だよ!」


 自然にミーナの名前が出て自分でも驚いてしまった……


「ほら、街道に出るよ!」


 気恥ずかしさを隠して、村まで足早に帰った。


「ゴブリンの村か……しかも近いな……」


「規模は小さいですが、街道から近いので……」


「まぁ、お前らのおかげで今この街のダンジョンは人気急上昇中だから、強制依頼を打てばいいかな」


「状態保存が出るダンジョンは……混みますね」


「仕方ねぇ、街の拡張計画もたったし、今回の報告もありがてぇ。

 いや、カイト達はこの村の救世主だな」


「ノアが幸運を運んできてくれるんだよ」


「そうかも知れねぇなぁ。何にせよ買取も終わったみたいだ。今日はゆっくり休んでくれ」


 ギルドから出ると既に日が沈んでいた。

 外灯が照らす影が幾つも重なっている。

 風が気持ちいいからと外で待っていたミーナが、まるで外套のスポットライトに照らされたように輝いて見えた。


「……」


 その美しさに、思わず見とれてしまった。


「さて、食事でもしながら分けようか」


 話しかけられて、見とれていたことを気取られないように、ふと空を見上げる。


「ミーナ、だ、ダスおじさんは大丈夫なのか?」


「今日は夫婦二人で街に行ってるからしばらくは大丈夫だよ」


「ああ、そうだった。うちも一人か……」


 ん? ……なんだか、緊張してきたぞ……なんだなんだ?


「とりあえずご飯食べに行きましょう!

 着替えてくるから、家で待っててね」


「あ、うん、そうだよね」


「にゃーん」


「はーい、ノアちゃんも後でねー」


 な、なんだ、この胸騒ぎは……不安じゃない……期待……?


「ば、馬鹿なこと考えるなよ……俺……」


「にゃ?」


「な、なんでもない……!」


 なんだか、自分が自分じゃないみたいだ……

 うかつなことをしないように、家で冷たいシャワーを浴びて自分自身に戒めた。


 




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