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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第三章 冒険者編
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第44話 ダンジョン宝箱

「さて、お楽しみの時間だな」


「ですね」「にゃ!」


「楽しみです」


 冒険者ギルドに戻り、ダンジョン探索の醍醐味を味わっている。

 ダンジョンのボスクラスを撃破すると得られる宝箱、緊急時にはダンジョン内で開けることも有るが、基本的には未開封でギルドの監視下で開封するほうが良い。

 冒険者としての実績に加算されるために、ランクの低いうちは積極的に狙ったほうが良い。


「さて、カイト、ミーナ、それとノアちゃん。

 冒険者ギルドとして宝箱が未開封で有ることを証明し、二人の実績とすることを認定する。

 さ、開けていいよ」


 冒険者証に実績が刻まれた。

 早いとこ冒険者ランクを上げて、卒業試験で得た資産を受け取れるようにならないといけない。

 莫大だと思っていた資産だが、社会を知った上で考えると、冒険の過程でどんどん消費されていくだろうなぁ……とスレた考え方をしてしまう。

 おっと、せっかくの素晴らしいイベント前に世知辛いことを考えるのはやめよう。


「さ、開けるよ……」


 ワクワクしながら宝箱を開ける。

 同時に宝箱がキラキラと光りを発して消えていく。

 このキラキラはダンジョンに戻っていく。

 そしてその場にアイテムが残される。


「魔石と短剣とローブか、鑑定お願いします」


「はいはい、えーと……短剣が呀狼の短剣、自動研磨つきの良いものだね。

 ローブも呀狼の外套、状態保存つきで大当たりじゃないか!」


「やったじゃんミーナ! はじめての宝箱で状態保存ってすごいな!」


「え、私がもらっていいの?」


「そりゃもちろん、短剣もらっても困るでしょ? 俺はほしいし」


「結構差が有るけどいいの?」


「まぁ、俺らだけだし、お互いが良ければいいでしょ」


「ありがとう、正直本気で嬉しい、泣いちゃうくらい」


 女性にとって状態保存付きの装備はものすごくありがたがられる。

 そして、めちゃくちゃ高級品だ。

 状態保存は文字通り状態を保存する付与魔法が込められている。

 装備に付与魔法を込めるのは、非常に難しく、ごくごくごく少数の人間にしか行えない。

 普通に手に入れるにはダンジョンの宝箱産で手に入れるしかない。

 そして、状態保存は最も人気があると言っていい。

 魔石や魔力を込めれば、ある程度の損傷も回復するし、人気の理由は、清潔なことだ。

 装備して魔力を込めると、装備者も含めて清潔になる。

 そりゃーもうさっぱりする。

 付与付き装備は装備して魔力を通すとその人専用装備になってしまうので、売るときは未使用で売らなければいけない。

 今回は短剣とローブというかマントは両方ありがたく使わせてもらう。

 自動研磨もあると便利だ。

 鞘に入れておけば切れ味が戻る。

 一生モノの道具を手に入れた。


「いやー! 最高じゃないかノア!」


「駆け出しの冒険者が持ってるものじゃないわ……本当に嬉しい」


 大事なものはさっさと装備して魔力を通しちゃうに限る。

 こうすれば市場的な価値は皆無になるので奪われる心配もない。

 嬉しそうにローブを着てくるくる回っているミーナを見てると俺まで嬉しくなる。

 短剣も渋い作りで俺の趣味のストライクで気に入った。


「万が一魔法袋とか手に入ったらーとか思ったけど……まぁ無理よね」


「かなり深いダンジョンマスターの宝箱からしか出ないでしょ」


「そうよねー……」


「にゃにゃ!」


「そうだね、欲深さは禁物。とりあえず、家に帰って……せっかくだし親も誘って食事でも行こうか! たぶんうちの親父が疲弊してるから……」


「ごめんね、うちのバカオヤジのせいで……」


「なんだかんだ口実ができて楽しんでるから良いんだよ」


「それじゃあ後で家に行くね」


「わかった。道具屋によったりしてるから、ゆっくりでいいよ」


「ありがと、またね。ノアちゃんもまたあとで!」


「はーい」「にゃーん」


 それから売れるものを売ったり、次の冒険のための道具を注文したり、雑務をこなす。

 ゆっくり休んで後からやっても良いんだけど、こういうのはさっさと終わらせてスッキリした気持ちで休みたい派だ。

 ようやく巨大な荷物から開放されて家に変えることが出来た頃には既に日が傾き始めていた。


「ただいまー」


「あらーおかえりなさい! 今回もすごかったらしいわね」


「情報早いね」


「二人組ですごいことしたって話題になってるわよ!」


「おかげさまでね、3人だけどね」「にゃにゃ」


「ところで父さんは?」


「そうそう、ミーナちゃんとこと食事する場所を押さえてもらってるの、まぁ既に始めてるでしょうけど……貴方も汗流して合流してね。私も先に行くわ」


「はーい」


 今回の冒険前に注文していた家具も揃って家の中の雰囲気が変わっている。

 浴室も立派になっていたので、ノアと二人で身体をさっぱりさせる。

 

「やっぱり俺は湯船が好きだなぁ……」


 こちらでは珍しい湯船を特注で用意した。

 全てはこの瞬間のためだ……


「にゃ!」


「うおっと、眠りかけた。ありがと」


 素早くお風呂をいただき新品の服に着替える。

 

「いやー、普通の生活最高!」


 ゆったりと流れる村の時間。緊張からようやく開放された気がする。

 同時にコンコンとドアが叩かれる。


「はーい」


「ちょうどよかったみたいね、行きましょう」


 少し着飾ったミーナの姿に、ドキッとしてしまった。

 冒険者として頼れる相棒であるミーナも、年頃の女性なんだと嫌でも気付かされる。


「にゃ!」


「あ、ああ、素敵な服だね、よく似合っってるよ……その、綺麗だと、思うよ……」


「ふふっ、ノアちゃんに注意される前に言ってほしかったけど。

 嬉しいわよ!」


 照れ隠しの笑みも、かわいい。

 そう、忘れがちだが、ミーナは非常に見目麗しい女性なのだよ……

 困ったなぁ、意識しちゃうと冒険の時に戸惑いそうだからなぁ……


「ま、いいか。さ、お互いの父親が潰れる前に行こうか!」


「ええ」


 一つの冒険が終わり、少しだけのんびりした時間が訪れる。


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