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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第三章 冒険者編
43/50

第43話 中ボス

 ノアが先行して罠の発見、敵の発見を行っていく。

 少し離れて俺が上方の索敵とそれをサポートして、背後をミーナが警戒する。

 比較的安全にダンジョンを探索する最小単位と言える。

 二人いれば前後を見れる。ソロだと壁などを利用してできる限り背後を作らないようにする。

 本当はマッピング担当は独立して一人いると随分と楽になるんだけど、ミーナが兼任している。

 行き止まりや部屋に入るごとにノアと俺の記憶と齟齬がないか確かめながら正確なマップを作成していく。

 ダンジョンが変化して一番最初に索敵特化パーティで探索をしていち早くマップを作り販売するパーティも存在する。

 深い階層の地図はとても高いので、俺達は自作して進んでいく。

 よほど実力差がなければ、必ずもれなく地図を作ってから次の階層へ進んでいく。

 地道だが、大切な作業だ。

 こうして次々と階層を超えていく。

 数日のキャンプを過ごし、俺たちのパーティにとって未踏破階層へと入っていく。


「OK、これで漏れないね」


「やっぱり広いわね」


「にゃー」


「そうだね、階段まで行って休憩しよう」


 休憩はセーフエリアである階段、ボスを倒して一定時間以内のボスの部屋で取るのが鉄則だ。

 緊急時は小部屋に罠などを張って休憩する。

 大人気なダンジョンだと階段が満員電車のようになることも有る。

 よほどなことがなければ、冒険者同士で協力して休憩を取る。

 魔物を倒しながら慎重に階段まで進んでいく。

 

「ふー。ようやく一心地つける……」


「にゃにゃ」


 木材を組んで火の準備をしようとするとノアが魔法でぽんっと火をつけてくれた。


「ありがとうノア」


 代わり映えしないがスープの準備とパンを水蒸気に当てて柔らかくする。

 スパイスを調整して風味を変えるのがダンジョン探索中では最大限の工夫だ。

 今日はもう一品、朝の干し肉を残ったスープにつけて戻してある。

 これを油を固めたブロックから薄く切り出したもので炒める。

 パンに切り目を入れて挟む。それだけだが、コレがなかなかいける。


「はいミーナ」


「ありがとうカイト、豪華な食事ね」


「次は18階層、うわさによるとボスが居るからね」


「徘徊型だから、運が良ければおりた瞬間に遭遇もあり得るもんね」


「にゃにゃにゃ!」


 ノアは肉にむしゃぶりつきながら任せとけって感じでしっぽをピンと立てている。

 食事を済ませて、ほんの少しだけ仮眠を取る。

 起床後軽く身体を解したら第18階層に向かう。

 そっととびらを開けて周囲を開けて周囲を確認する。

 目の前に狼の群れがいる。

 その中央に巨大な狼がのっしのしと歩いている。

 頭ではその現実を確認しているが、脳の処理が追いつかない。


(もどれ!!)


 ミーナに手信号で危険を伝え飛び退こうとした瞬間。


 パタン。


 同じく現状に一瞬混乱してしまったミーナが洞窟内へ入ってきてしまい、扉が閉まり、音を立ててしまう。


「やるぞ!! アーススパイク!!」


「にゃーーー!!」


 大地から槍が狼の群れを突き上げる。

 数匹を貫き、多くの狼は身を翻し飛び退く、同時にノアが強烈な風を叩きつけて空中に飛んでいた数匹の狼を壁際に叩きつける。


「身体強化!!」


 幸せか不幸か大部屋に登り階段がつながっている状態、退路は扉を開けなければいけないが、敵は一方からしか攻撃できない。

 巨大な狼は軽い手傷は追わせたが風にも影響を受けずに堂々とその場に立っている。

 多くの狼を従えたグレートウルフ、第8階層の徘徊型中ボスだ。

 

 敵も混乱していたが、一瞬で統率を取り戻す。

 こちらも壁を背にして体勢を整えた。


「ごめん」「こっちも」「にゃ」


 短く謝罪する。それ以上は必要ない。

 戦うと決めたらやるしかない。

 魔法は無詠唱派なんだけど、緊急事態で自分の意図を早く伝えるため、それと、動揺を吹き飛ばすために名前だけは叫んで見る。


「ウォーターショット!!」


 多数の水玉を敵に打ち込む、俊敏性の高い獣には超速度の攻撃か、数による面の攻撃が有効だ。

 俺の魔法に合わせてノアが凍える冷気の風を叩きつける。

 水玉は速度を増し、凍りついて獣達を撃ち抜いていく。

 魔法を回避しながら飛び込んできた奴らはミーナの鉄槌に撃ち抜かれて絶命していく。


「来る!」


「任せて!!」


 ノアが敵の行動を縛る闇の影を伸ばし無数の影がグレートウルフに巻き付く、簡単に引き裂かれていくがうっとおしそうに回避をする。

 何頭かの狼は捕らえられ俺の刃で絶命していく。

 敵の狼を減らしてもグレートウルフの雄叫びでどんどん補充されてしまう。

 あくまでグレートウルフを倒さなければいけない。

 強化魔法で光り輝くミーナはグレートウルフの爪や牙の一撃をくぐり抜けて強烈な攻撃を重ねていく。

 俺とノアは周囲の狼の牽制と排除、グレートウルフへの妨害、ミーナへの補助を絶やさぬように戦闘をコントロールする。

 ミーナの重厚な一撃を何度も受けた爪は砕け、腕を挫き、足場を変化させ足を取られたグレートウルフは強力な一撃を頭部に直撃、壁に叩きつけられ、二度と動くことはなかった……

 周囲の掃討を行って部屋の安全を取り戻す。


「ぷはーーーーー……びっくりした! びっくりしたよ!」


「にゃー!」


「なんとか、なったわね……はぁ……ちょっと怖かった……」


「いやいや、お見事でした」


「みんなのおかげよ、ノアちゃんもありがとうね」「にゃー……」


「目標達成だね」


「そうね、とりあえず報酬を回収して、今回は帰りましょう」


「2人パーティで18階層のボス撃破は初めてだろうね!」


「先生ならソロでできちゃうでしょうけどね」


「ま、まぁ特殊な例は……」「にゃ」


「そうね、とにかくお疲れ様」


 それからグレートウルフが灰となって場所から宝箱を回収して、撤退準備に入る。

 俺たちのダンジョン探索は少しアクシデントもあったが、上々の結果を得ることが出来た。



 

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[一言] いつの間にやら読み終わっちゃってましたがとても楽しかったので今後も期待して待ってます!
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